3月は別れの季節。異動、転勤、転職の挨拶メールにどのようなことを書けば、その後も縁をつなぐことができるでしょうか。話し方コンサルタントの阿隅和美さんは「最後の一文を『今後ともよろしくお願いします』に代えてアレンジをすることをおすすめします」といいます――。
桜の見える景色のなかで開いているノートパソコン
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コロナ禍でメールでのお別れは増加

3月は異動や退職など、所属する部署や会社を去り、新天地に向かう仕事の転機となる時期になります。

最近は新型コロナウイルスの影響でリモートワークになったり、大人数での歓送迎会が自粛になったりと、直接会ってお別れを言えないまま部署や会社を去るケースも出てきました。

しかし、ビジネスシーンでは別れ際こそ肝心です。実際、人付き合いが上手な人ほど、お別れの挨拶は決して手を抜かず、気持ちのいい印象を残します。

そこで、今回は、お世話になった方々へ、立つ鳥跡を濁さず、されど去ってからも連絡してもらえる異動・退職の挨拶メールについて考えてみましょう。

異動・退職の挨拶メールで伝えるべきこと

異動・退職の挨拶メールでのメッセージは、相手との関係性や親密さなどを考慮して作成する必要があります。人数が多い場合、部下や同僚には一斉メールでも良いですが、上司やお世話になった方、社外取引先には個別に送りましょう。

その際、テンプレートを作成して、相手によってアレンジをして書くと効率的です。基本となる主な項目は、①異動や退職の事実と日付、②日頃の感謝、③今後の抱負、④業務の引き継ぎ、⑤相手方の健闘を祈る言葉、⑥結びの言葉の6つとなります。

まずは、異動の際、社内で同僚や部下に送る基本文から見ていきましょう。

<異動メール 社内で同僚や部下に送る文例>
「皆様ご存じのように、人事の発令により◯月◯日づけで◯支社へ/○部に異動になりました。
これまで皆様には大変お世話になり、ありがとうございました。
この部署での○年間、皆様のサポートがあったからこそと本当に感謝しております。
今後は、新たな分野で/新天地で会社に貢献したいと思っております。
なお、現在の案件等の引き継ぎにつきましては、○○が担当します。
後任○○連絡先×××
後任の○○さんへの引き継ぎには万全を期したいと思います。
今後の皆様のご健闘をお祈り申し上げます。
今後ともどうぞよろしくお願い致します」

これが基本のメールになります。ここから、送り先に合わせた心に残るメールにするようなアレンジ方法をお教えします。

親しい上司やお世話になった方へはエピソードを添える

特に親しい上司やお世話になった方には、仕事を通じて学んだことやその時のエピソードなどを具体的に伝えると、より感慨深いものになります。また、その時の自分の感情といった人間的な部分を加えるとさらに印象的です。

<アレンジ文例>
・○○さんの下で過ごした○年間、たくさんのことを学ばせていただきました。
いただいたアドバイスを忘れずに、今後も精進していく所存です

・特に◯◯さんと大きなプロジェクトチームを組むことができたことは私の最大の誇りです。おかげさまで大きな自信となりました

・あの時の◯◯さんの○○という一言が今でも強く残っています。◯◯さんから仕事を通じて学んだことはかけがえのない財産となっています

・箸にも棒にもかからなかった私のような新人を親身に指導してくださったこと、大変感謝しています。私の○○といったミスに対し、時に丁寧なアドバイスやフォローをしていただいたこと、忘れません

スマホでメールを送る女性の手元
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直接接点がなかった相手にも、お近づきになるチャンス

直接、仕事で接点がなくても今後積極的に関わりを持ちたい相手には、この機会に個別メールを送ってみましょう。面と向かって言いにくいことも、メールであれば伝えやすいものです。先輩の仕事ぶりで日頃すごいと思っていたところ、尊敬しているところを具体的に伝えるといいでしょう。

<アレンジ例>
・○○先輩とはゆっくりお話する機会がなかったのが残念です。
先輩のプレゼンはいつも説得力がありぜひコツをうかがいたいと思っていました。
もしまた会議などでご一緒する機会がありましたら、そのときはぜひもっとお話させてください

・○○先輩のチームをまとめ上げる姿には感銘を受けておりました。
私も○○先輩に近づけるよう、もっと精進していくつもりです

去ってから連絡がもらえる再会を約束するメッセージ

異動の場合には、会議など別の形で会うことがありますので、「会議や、本社などで会いましょう」など一言付け加えると自然です。

他にも、具体的に再会の場面を提案して、「また会いたい」という気持ちを伝えるのもよいでしょう。

<アレンジ文例>
・○○支店にお越しの際は、ぜひご連絡ください。一緒に飲みに行きましょう!
今度は私にごちそうさせてください

・○○さんのお好きなパンケーキの美味しいお店を探しておきます。また、グルメ談義で盛り上がりましょう

・写真がご趣味の○○さんをご案内したい風光明媚な景勝地がたくさんあります。ぜひ、新緑の季節にお越しください

異動の挨拶メールを社外や取引先の人へ送る場合

社外や取引先に送る異動メールでは、特に、引き継ぎについて業務が滞らないよう万全を期すための内容を中心にします。その上で、異動後もお付き合いをいただきたいというメッセージを伝えます。

また直接お会いして挨拶ができない場合「本来であれば直接ご挨拶をさせていただくところ、コロナ禍の状況を見て控えさせていただきます」などと一言加えると、印象が良くなります。

<異動メール 社外・取引先に送る例文>
いつもお世話になっております。○○社の(氏名)です。
私事ですが、この度、人事発令により、○月より○○支社へ転勤することになりました。
今回はご挨拶のためメールをさせていただきました。
貴社とのお取引を開始させていただいてから、○○様には本当にお世話になりました。
今後は私の後任として○○が貴社との取引を担当させていただきます。
引き継ぎには万全を期したと思いますので、今後とも変わらぬお付き合いをどうぞよろしくお願い申し上げます。

退職挨拶メールで印象を残す方法とは

退職の挨拶は、これまでお世話になった気持ちを伝えるだけでなく、去り際の印象をよくすることも重要です。今後、元同僚や元上司たちと一緒に働く機会がゼロとは言い切れません。もしかすると、取引先として接する可能性もあります。

最近は、歓送迎会を開かず、メールでのご挨拶だけになってしまうことも多いため、なおさらメールの印象は重要です。

ビジネスメールの印象で大切なのは、第一に信頼感です。定年や自己都合による退職では、引き継ぎなどの業務的な要素をしっかり入れることで最後まで信頼できる人物像を印象付けることができます。

次に、シンプルで簡潔なメール文体だと、スッキリと整った印象を与えます。多数に送る社内メールでは、退職理由は「一身上の都合」とし、お世話になった感謝の言葉にとどめ、退職後の予定など詳しく書かなくてもOKです。

退職挨拶メールの例文

<退職 社内一斉送信する際の例文>
私事ですが、このたび、一身上の都合により、○月○日付で退社することとなりました。
本来であれば直接ご挨拶を申し上げるべきところですが、メールでのご挨拶にて失礼いたします。
これまで至らぬ点もあったかと思いますが、多くの方々にサポートしていただきながら、業務を通してさまざまなことを学ばせていただきました。
この会社での経験や学びを活かし、今後もより一層精進してまいります。
なお、現在の案件等の引き継ぎにつきましては、○○さんが担当します。
最後になりましたが、皆様のさらなるご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。
今まで、本当にありがとうございました
<定年退職 社内一斉送信の例文>
このたび、3月末日を持ちまして定年退職の運びとなりました。
入社して○○年、こうして今日を迎えられたのは、ひとえに皆様のおかげです。
いろいろとご協力くださいましたこと心より御礼申し上げます。
なお、現在の案件等の引き継ぎにつきましては、○○さんが担当します。
皆様におきましては、健康に気をつけて益々のご活躍をお祈りいたします。
○○会社のさらなる発展を心より祈っております。
今まで本当にありがとうございました

去った後も連絡をもらいたい上司やお世話になった方に個別に送る場合

上司やお世話になった方への退職の挨拶メールは、一人ずつに宛名入りで送るといいでしょう。感謝の言葉はもちろん、エピソードや思い出などを入れるとメッセージが心に残ります。

可能であれば、今後の予定を書き、連絡先を添えておくのもいいでしょう。連絡先があることで、「会社は辞めるけど、会社の人とは今後もお付き合いしたい」という気持ち伝わります。

転職の場合は、前職の不平不満とならず、メールを受け取った相手が、新天地でがんばっている自分を応援したくなるようなポジティブな内容にしましょう。定年退職の場合、今後の仕事や趣味について添えると、興味がある人が連絡をしてくれるかもしれません。

メールは相手が消去しない限り相手の元に残ります。「立つ鳥跡を濁さず」爽やかな印象でお別れを伝えましょう。

縁が切れないとっておきの一文で締めくくる

さらに最後の一文を「今後ともよろしくお願いします」に代えてアレンジをするのもいいでしょう。例えば、「またアドバイスをください」「相談に乗ってください」と結べば、職場は変わってもメンターでいてほしいという気持ちが伝わります。

また、「定期的に情報交換をしましょう」と結べば、相手を認め互いに切磋琢磨していきたいという気持ちが伝わります。このように「また会いたい」という意志を最後の一文で伝えることで、去った後も連絡を取り合う間柄になりやすいでしょう。

<アレンジ文例>
・初めてプロジェクトリーダーとなり、成果が上がらず焦っていたとき、『もっとチームのメンバーを信じて任せてみたら』とアドバイスしてくださったことを、昨日のことのように覚えています。あの時のアドバイスがきっかけで、肩の力が抜けてリーダーの役割の担い方が分かってきました。今後も、これまでの経験を活かし、精進して参りたいと思います

・○○様にいただいたたくさんの励ましの言葉が自分を社会人として成長させる糧となりました。これまでの経験を今後も存分に活用し、人生の次のステップに踏み出したいと思っております。今後は、別の道を選びますが、引き続き相談をさせていただくこともあるかと思います。その際には、ぜひアドバイスを頂ければ幸いです

・以前から取り組んでみたかった分野で自分の力を試してみたいという希望を叶えるべく転職する運びとなりました。これまで○○さんをはじめ皆様に育てていただいた経験を糧に次のステージでも邁進したいと思っております。また、いろいろとご相談することもあるかと思います。その際はどうぞご指導の程よろしくお願いいたします

社外・取引先への退職メールを送る場合

社内へ送る退職メールと社外へ送る退職メールは意味合いが違います。社外には会社の信用を損ねないことであなたへの信頼も守ります。

社外向けメールで押さえたい点は2つです。1つ目は、退職日と引き継ぎや後任者についての情報をしっかり伝えることです。2つ目は、私用連絡先は不記載にすることです。会社を通しての関係だったことを頭に置き、一線を引いておきましょう。

<社外向け退職基本文例>
いつもお世話になっております。○○の○○でございます。
私事ですが、一身上の都合により○月末をもって退職をいたします。
○○様には何かとお力添えをいただき心より感謝申し上げます。
最終出社日は○月○日の予定です。

後任は、○○が務めます。
後任の連絡先:××

引き継ぎには万全に準備を整えて参りますので、今後もどうぞ変わらぬお付き合いをよろしくお願い致します。
末筆ながら、貴社のご発展と○○様の益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます

特に親しい相手とは社用メール以外でコミュニケーション

相手との関係性や転職先にもよりますが、特に親しい方とは電話やSNSで個人的につながるなどして、社用メール以外でコミュニケーションをとるといいでしょう。

また職場環境が変わっても、これまで培ってきたキャリアの人脈が意外なビジネスチャンスにつながることも珍しくはありません。これからも仕事の関係が続くようなら、新たな職場から改めてご挨拶のメールをお送りして、転職先での仕事内容や任されているポジションなどをメールでご報告し、「またぜひ一緒にお仕事をしたい」という意向を伝えるのもいいでしょう。

私ごとで恐縮ですが、新卒で入社した会社の先輩や上司、社外の仕事関係の方と20年以上たった今でもSNSを通じてつながっています。今なお仕事でお世話になることもありますし、時には温かい応援の言葉を贈っていただき、節目でポンと背中を押してもらっています。

きっと同じ現場で苦楽を共にした人のご縁はあなたのビジネスや人生の大きな財産となるはずです。転職、退職の挨拶メールで日頃の感謝とこれからも良いお付き合いをしたいという気持ちを伝え、丁寧にご縁を紡いで次の人生のステップに気持ちよく踏み出しましょう。