かつて外資系コンサルティング会社で働いていた岡田充弘さんは、「仕事ができる人ほどメールが淡泊だった」と言います。「お世話になっております」と「よろしくお願いします」を省略しても“感じのよさ”を出せるキラーフレーズとは――。
パソコンで複数のメールを送っているイメージ
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1日に数百件のメールを処理していた

私が会社員をしていた頃は毎日大量のメールを受け取っていました。

なかでも外資系コンサルティング会社に勤務していた時には、日に数百件のメールを受け取ることもありました。ショートカットキーを駆使して人よりは少しだけ速く処理できるとはいえ、さすがにそれだけの量になってくると、毎日メールに目を通すだけでも一仕事です。

起業してからは、会社や私の役割が変わったこともあって、そこまでの量のメールが来ることは無くなりましたが、ときどき長文のメールを送ってくる人はいます。

長文のメールを送ってくる人には申し訳ないのですが、私はどうしてもそのメールを読むのは後回しにしてしまいます。文章を正確に読むのに時間や神経が奪われるからです。

ただ文字量が多いだけのメールは時間泥棒

文章が整っていればまだマシなのですが、大抵はそうではありません。ただ文字量が多いだけなのです。おそらく一般の人がメールの書き方を会社で習うことはほとんどないでしょう。ましてや学校で習うなんて話は聞いたことがありません。そのため、多くの人は、メールの書き方が自分目線の自己流になってしまっているのです。

長文のメールは、作成に自分の時間がとられるだけでなく、相手にも読む時間をとらせてしまいます。メールの目的はそもそも相手と意思疎通を行うためのはずです。相手に伝わらなければ、どれだけ時間をかけてメールを作成しても意味がありません。

できる人ほどメールが淡泊

情報過多な今の時代は、ビジネスメールはできるだけ短く簡潔であることが望まれます。

私は「お世話になっております」や「よろしくお願いします」のような、メールの前後に付与される「導入文」や「締め文」のようなものは一定の条件下で不要だと思っています。

実際外資系コンサルの世界では、仕事ができる人ほどメールが淡白です。

これについては、日本の慣習を踏まえると多少の議論があるかもしれませんが、そろそろわれわれの世代から変えていかねばとも思っています。

メールの後にチャットのような簡易コミュニケーションツールが生まれ、普及してきていることを考えると、潜在的な簡素化のニーズはあるといえるでしょう。

ただ、そこで実際にすべてチャットに切り替えられるかといえば、コミュニケーション先の事情によって、そうもいかないのが現実でしょう。であれば、私は、メールを限りなくチャットのように使うというのも一つの手だと考えるようになりました。コミュニケーションが複数のツールにまたがってしまうと、情報が分断され、検索の網羅性が失われてしまうという理由からです。

メールの受信トレイにアラート表示
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メール簡素化のポイント3つ

メールを簡素化してチャットのように使う方法は、私が日系企業から外資系企業に移った時に初めて目にしました。極端に言えば、日系企業では送り先名称に続いて「お世話になっております」から始まりますが、外資系企業はいきなり本題から入ります。長く前者のお作法でしつけられてきた自分としては、少々面食らったのを覚えています。

メール簡素化のポイントは以下の3つです。

①導入文・締め文を省略する(2回目以降のやりとりからでもOK)
②構造化する(できるだけ箇条書きや行頭文字を用いる)
③要件を明確にする(共有なのか、依頼なのか)

まず、①について見ていきましょう。

どんなに「できる人ほど淡泊」と言っても、慣れ親しんできた導入文や締め文を省略するとなると、冷たくてぶっきらぼうな印象を与えるのではないかと心配する人がいるかもしれません。

私は自分のメールの署名の上に

「※メール簡素化推進中、導入文・締め文は省略頂いて結構です。」

という定型文を入れるようにしています。

相手への配慮ではありますが、この一文だけで、自分のスタイルを柔らかく伝えることもできます。

「淡泊なメール」の文例

3つのポイントを実際どのように運用するか、どこまで簡素化するかは、「相手との関係性」や「内容の複雑性(≒情報量)」で変わってきます。

例えば、初めてコミュニケーションする人と、やや複雑な内容のメールのやりとりをする場合には、②の構造化と③の要件の明確化が重要になってきます。

図表1は、取引先と電話で話したことをまとめ、次のアクションを確認するためのメールです。「お世話になっております」は省き、冒頭では要件を明確に伝えています。内容は箇条書きでまとめ、「よろしくお願いします」の締め文の代わりに「メール簡素化推進中~」の一文を入れます。

やや複雑な内容のメール例
図表作成=筆者

たった5文字でメールを返す

逆に、ある程度関係性ができている人と、簡単な確認・質疑などのメールのやりとりを行う場合には、余計な言葉で飾らず、できるだけシンプルな一言で返すことを意識するといいでしょう。図表2のように、相手のメールを引用する形で返すと、短くても伝わりやすくなります。

簡単な確認・質疑などのメール
図版作成=筆者

メールは口頭と比べて記録性や非同期性に優れるため、形は変われど今後も残っていく可能性が高いと私は見ています。であれば、やたらに多くのツールに手を出すよりも、最も世の中で普及しているメールの運用方法を工夫することで、より効率的・効果的なコミュニケーションができるようになるでしょう。