他人は意外と気にしている! あなたのマナー違反
最近“マナー”というと、拒否反応を示す人が多く出てきた。その原因のひとつに、これまでの基本的な事柄に加え、コロナ禍で新常識となりつつある距離感ありきでのコミュニケーションや、リモート打ち合わせでの「話を被さない」「発言者以外はマイクをオフ」など細かい振る舞いについて指摘されるようになったり……。「えっ、そんなことまで⁉」と思ってしまうような新しいマナーが次々と出てきたことも考えられるだろう。
しかし、「プレジデント」と「プレジデント ウーマン」の各オンライン読者約3000人へのアンケートでは、「仕事の場面において、マナーは必要だ」と回答した人は99.5%(図表1)。昨今SNSなどでやり玉に挙げられやすいマナーだが、実際はほとんどの人が必要としていることがうかがえる。
さらに「あなたは他人のマナー違反が気になることはありますか?」と質問したところ、「気になることがある」と答えた人は81.9%(図表2)。これは多くの人がマナーを気遣っている一方で、かなりの高い確率でマナー違反をしている、もしくは違反行為が気になると感じているということになる。
他人の目に「マナー違反だ」と映る行為には、どんなものがあるのだろうか? 同アンケートの結果から詳しくひもといてみる。
イラッとさせる行為は、日常の“当たり前”に潜んでいた
「他人のマナー違反が気になることがある」と回答した人に、どんなことが気になったのかを聞いてみると、ダントツで目立っていたのが“挨拶をしない”こと。
「距離が少しあったとはいえ、明らかに目が合っているのに気づかないふり……こちらも気まずい(金融・41歳)」「すれ違いざまにこちらの挨拶を無視されたのがつらかった(メーカー・35歳)」「気づかなかっただけかもしれないけれど……完全スルーはちょっぴりショック(商社・30歳)」などの声が。もしかすると相手の視力が悪く、本当に気づかなかったことも考えられるが、やはり目が合っているのに、軽い会釈もしないのは、「無視された」と相手に思われても仕方がないことだろう。
次点で多かったのは“敬語の使い方”。たとえば、こんな指摘があった。
「ある程度の間違いは誰にでもあるので仕方がないが、あまりにひどい二重敬語などはどうしても気になってしまう(IT・54歳)」
よくやりがちな二重敬語としては「拝見させていただく」「ご覧になられましたでしょうか?」「伺わせていただきます」など。知らず知らずのうちにあなたもこんな間違い敬語を使ってはいないだろうか。ちなみに、それぞれ正しくは「拝見します」「ご覧になりましたか?」「伺います」だ。
ほかには「クライアントが電話口で、自分の上司に敬称をつけていたり、“部長が○○してくださったので”などと発言したりすると、注意するわけにもいかないけれどなんだかモヤモヤ(44歳・出版)」という人も。
さらに回答を見ていくと、マナー違反をしているのはなにも新入社員や若い世代などに限らないようだ。年齢やキャリアを重ねた管理職の中にも、挨拶や敬語などが正しくできない人がいることがわかった。しかしながら立場が立場なだけに、注意してくれる人はほとんどいないことが、敬語がうまく使えず周りをイラっとさせる管理職が蔓延する原因にもなっているのかもしれない。
ほかの回答としては「仕事や会話中にスマホをいじる」「個人的な内容に踏み込みすぎた会話」「身だしなみ」なども挙がった。
他人を不快にさせるマナー違反の共通点とは
皆さんも他人の言動や行動を見て「マナー違反だ」と思うことはあるだろうか。
今回のアンケートでは、ビジネスパーソンならではの特別な回答が集まるかと思いきや、「挨拶の無視」や「敬語の使い方」に集中した。これらを“マナー”と名付けていいのか迷うほど、大人として自然に身に付けておきたい基本中の基本の事柄。
だからこそ、他人がマナー違反と感じることは、総じて“相手にリスペクトがないことが露呈する瞬間”と言い換えることもできる。
挨拶をしない、敬語を使えない、といった“たかが○○”と思うようなことは、周囲の人からすれば“マナー違反”であり、ビジネスパーソンとしてだけではなく、人としてのあり方を見極められる重要なポイントでもあるのだ。
冒頭でも挙げたように、マナーに関する記事やSNSでの発言は「そんな細かいこと!」「なくなればいい!」と批判されることも少なくない。けれど実際アンケートを取ってみると、マナーに厳しい人でも特別なことを求めているのではなく、周りの皆が心地よくいられることを身に付けよう・身に付けたい、と感じていることがわかった。
たしかにマナーはめんどくさい。違反すると常識がないと思われ、下品だと言われることもある。けれどその感覚をひもといていけば、マナーは相手への思いやりとリスペクトを簡易的な形にしたもの。必要以上に恐れることはないけれど、客観的な目線を知って、自分も他人も気持ちよくいられるような配慮を心がけることなのだとわかるだろう。