このところ米国株投資が人気だが、すでにバブルの状態で「これから投資しても儲からないのではないか」との心配もある。専業投資家のまつのすけさんは「米国株はすでにバブルに足を踏み入れているが、まだ2、3年は崩壊することはないだろう」という――。

※本稿は、まつのすけ『33歳で1億円達成した僕が実践する一生モノの億超え投資法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

星条旗とウォール街の標識
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分散投資は万能ではない

堅実な資産形成のためには「長期・分散・積立」が基本だといわれます。たしかにその通りかもしれません。ほったらかしでタイミング・リスクを抑えながら資産を増やすには、この3つが大事です。

しかし、「長期・分散・積立」を守れば、必ず資産を増やせるわけではありません。金融市場の影響を受けるからです。

積立投資で最大の効果が発揮されるのは、積立をしている初期~中期は相場が下がり、元本が積み上がった最後の数年で急上昇した場合です。逆に積立をしている間は順調に相場が上昇し、最後の数年で大きく下落した場合には、株価は上昇しているのに元本割れすることすらあります。

20~30年といった長期投資でも、「いつ始めていつ終わるか」が生涯のパフォーマンスに決定的な影響を及ぼすほど重要なので、運に大きく左右されます。

金融庁も認めた積立投資のデメリットとは

金融庁の「資産・地域を分散して積立投資を行った場合の運用成果の実績」においては、保有期間20年という長期投資でも年率2%から8%まで大きなばらつきが生じています。

日本経済新聞の「荒波越える長期積み立て」という記事でも、「時期によって投資リターンは異なる」というデータが解析されました。

「資産額の累計投資額に対する倍率(1990年~2018年)」では、30年間積立(先進国株投信)の場合、約1.7~5.8倍と大きな格差が生じています。

・5年間積立:約▲50%~+100%
・20年間積立:約±0%~+300%
・30年間積立:約+70%~+480%

まったく同じ投資手法で20~30年という遠大な時間の長期積立投資を行った場合でも、時期によってパフォーマンスに圧倒的な差が生じています。

投資の名著と知られているチャールズ・エリス著『敗者のゲーム(新版)なぜ資産運用に勝てないのか』(日本経済新聞社)にも、以下の記述があります。「投資終了時期の設定こそが運用成果に決定的影響力を持つ。ほとんどの場合、投資家の運用成果を決定する最も重要な要素は、その技術ではなく、開始時期と終了時期の選択である」

分散投資も有効ですが、万能ではありません。リーマン・ショックやコロナ・ショックなどの危機の際には、どんな資産を持っていても価格は下がってしまいます。長期投資は、途中で相場が下がることがあっても挽回を待つことができるので有効ですが、やはりいつ投資をやめるかが問題です。やめる直前に相場が下がってしまえば資産が大きく目減りしてしまいます。

米国株はバブルに足を踏み入れている

「長期・分散・積立」でも、金融相場の影響をゼロにすることはできません。ほったらかし投資を実践する場合も大きな相場の流れを把握しておく必要があります。

そして、近い将来の相場の流れを見通すと、資産を大きく増やすチャンスが待っている可能性が高いと考えています。米国株式がバブルになる兆候があるからです。

株式投資でリターンを狙うなら、経済成長の期待できる国や地域を投資対象とするのがセオリーです。日本や欧州は法的、政治的面で安定しているのはメリットですが、成長力が高いとは言えません。先進国で高い経済成長ができるのは米国くらいではないでしょうか。

一方で新興国は高い経済成長が期待できます。とくに中国やインドは有望だと考えています。ただ、中国は突然の規制導入がショックとなり投資家が安心して投資できる状態ではなくなりました。

また、今後、米国が金利を引き上げると、ドル高になる可能性が高くなります。過去の数十年の歴史からすると、ドル高の局面では新興国の株価はパフォーマンスが悪くなります。

そう考えると、投資家にとって魅力的な市場は米国のみの状況になりつつあるのです。すでにS&P500のPERは過去平均よりも高い水準となり、バブルに一歩、足を踏み入れた状況になっています。

フィンテックの概念
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これから投資しても資産を大きく増やせる可能性がある

2021年6月末の米国株の予想PER(株価収益率)は21.3倍でした。1988年以降で予想PERが21倍を超えたときに投資をすると、そこから5年後のトータルリターンは芳しくありません。

ただ、すぐにバブルがはじける状況とは思っていません。もうしばらくは株価の上昇が続き、その間に投資をしていれば資産を大きく増やすチャンスがあるでしょう。

1970年代のニフティ・フィフティ相場のときは対象銘柄のPERが40倍程度まで上がりましたし、2000年のITバブルの際には、S&P500のPERが45倍程度まで上がりました。それを基準にすると、まだ上昇余地があります。また、テーパリングが始まっても、金融緩和が続いている間は株価が上がり続けると考えます。

バブルのピークは2023年ころやってくる

それは過去のテーパリングを見てもわかります。米国はリーマン・ショック後の経済回復を後押しするため、QE1(第一弾)からQE3(第三弾)までの金融緩和を実施しました。

その後のテーパリングは、2014年1月から10月まで実施されています。そのときのS&P500の動きを見ると、上昇が続いています。

もし、テーパリングによって世界経済が崩れ始めたら、FRBはテーパリングをやめて金融緩和に逆戻りするでしょう。

以上を総合すると、これから2、3年はバブルの崩壊はないと考えています。逆に僕は1989年の日本株バブルのようなバブルが米国株にやってくるのではないかと思っています。

テーパリングが終了し金利の引き上げが始まるとどうでしょうか。2014年のテーパリングの際も1年ほどが経過した15年末から金利の引き上げを実施しています。この金利はFFレートと呼ばれるもので米国の金利の基準となるものです。

金利の引き上げは段階的に行われていますが、その間もS&P500の上昇は続いています。

また、著名なヘッジファンドマネジャーであるレイ・ダリオ氏によると、米国の覇権はピークアウトしつつあるといいます。日本のバブルの際にも日本経済がピークアウトする前に一度バブルがきています。米国もそうなるのではないでしょうか。

以上を総合的に考えて、これから2、3年は米国株が基本的に堅調な状態が続き、2023年くらいにバブルのピークがやってくると考えています。長ければ2027年くらいまで続くかもしれません。

PERが40を超えたら逃げる用意をしよう

バブルは資産を増やす絶好のチャンスではありますが、撤退する時期が重要になるのです。その判断は、S&P500のPERを参考にするといいでしょう。

まつのすけ『33歳で1億円達成した僕が実践する一生モノの億超え投資法』(KADOKAWA)
まつのすけ『33歳で1億円達成した僕が実践する一生モノの億超え投資法』(KADOKAWA)

ITバブルは45倍弱まで上がりましたし、ニフティ・フィフティ相場も対象銘柄の平均は40倍でピークアウトしました。

一方でNASDAQ100のPERは、ITバブルのときに60倍程度まで上昇しましたし、日本株のバブルでも日経平均株価のPERは60倍までいきましたから、PERは40倍から60倍で想定しておくといいでしょう。

そして、PERが40を超えたら逃げる準備をしておきましょう。といっても、株価が上昇している間は売る必要はありません。バブルはどこまで伸びるかわからないからです。

バブルの終盤で一気に1.5倍程度に上がることもあります。「PERが40倍を超えたら売り」と決めてしまうと、大きな利益を逃がしてしまう可能性があります。相場が崩れ始めてから売却するのがお勧めです。