出産後、いつ職場復帰する? 長期間の育休や時短勤務を制度化する企業が増えているなか、悩む人も増加中。今回は、出産後の働き方が生涯賃金にどのような影響を及ぼすのかに焦点を絞って分析しました。
母親と赤ちゃん自宅勤務
写真=iStock.com/courtneyk
※写真はイメージです

育休・時短の取り方でこんなに変わる生涯賃金額

正社員の女性で、第1子出産後も働き続ける人の割合は、69.1%(※)と約7割まで上がっています。国は女性の活躍を促進するために「育児・介護休業法」を充実させ、大企業を中心に、育休3年、時短勤務は小学校卒業頃まで認める動きも広がっています。そのため、どの程度育休を取るのか、復帰後の働き方をどうするのかの選択肢が増えて、迷ってしまう人もいるようです。

今回は、育休や時短の取り方で生涯賃金がどう変わるのかをシミュレートしました。比較のために、出産せず働き続けたケース1(生涯賃金がいちばん多くなる)と、出産時に退職するケース5(ケース1より生涯賃金が約1億8800万円減)を出しましたが、見ていただきたいのは、子どもを2人産んで働き続けるケース2~4です。

ケース2は、出産後育休6カ月で仕事に復帰し、時短を取らずに勤務するため、ケース1と比較して生涯賃金は約1600万円しか減りません。一般的な働き方と考えられるケース3では、ケース1との差は約2900万円。公務員や大企業で制度が充実している場合に可能な働き方のケース4は、約6200万円も生涯賃金が減るという結果でした。

※国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」の2010~2014年のデータ。

育児・介護休業法では、「育児休業を取得したことで人事考課において不利益な評価を行う」ことは禁止されています。しかし実際の職場では、育休・時短を取りすぎないほうが、プロジェクトを任されたり、責任ある仕事をする機会に恵まれたりする可能性は高いでしょう。

もちろん、家庭の事情や子どもの個性などですぐに仕事に戻ることが難しい場合もありますし、生涯賃金を最大化することだけが人生の目標ではありません。しかし、出産後の休み方や働き方でこのような差がつく場合があるということを認識しておきましょう。今回のシミュレーションの結果からわかったのは、生涯賃金の減少を抑えるには、まず、正社員をやめないこと、次に育休・時短勤務を最低限にすることが大事だということでした。

今回行ったシミュレーションの設定と結果

今回行ったシミュレーションの設定と結果

育休や時短期間の長さで変わる、生涯賃金シミュレーションを分析しよう!

ずっとフルタイムで働き、生涯賃金が最大になるケース1とほかのケースとの比較で見ていきます。ケースごとにどんな原因で賃金が減っているのかを詳しく分析してみましょう。

【CASE1】38年間フルタイム勤務
【CASE2】2人出産後、育休6カ月で復帰
【CASE3】2人出産後、育休1年と復帰後3歳までの時短勤務
【CASE4】2人出産後、育休3年と復帰後6歳までの時短勤務
【CASE5】出産時に退職し、専業主婦を経てパート勤務

出産&育休前後で、知っておきたい制度やお金

産休・育休の時期には、かかるお金ともらえるお金がいろいろあります。給付金、手当金、社会保険や税金など、制度のポイントを押さえておきましょう。

働き続けるためにかかるお金
男性が育休を取りやすくなる
子どもができてもらえるお金
産休・育休中の社会保険と税金
厚生年金の加入期間で変わる将来の年金額