「マナーはあったほうがいい」と考える人が多数
「マナーの話題は炎上しやすい」といわれる。なぜかと考えてみると、それは私たちがマナーのあり方に個人的な見解をそれぞれ持っており、なおかつ生活に密接している事柄だからではないだろうか。また一方で、人によって価値観の違いがあらわれやすいことが、マナー自体を難しくしているのも事実。
そこで、PW編集部で「マナーに関するアンケート」を実施(※)したところ、一般社員から役員クラスに至るまでの幅広いポジションの約3000人の男女から回答が得られた。“ビジネスマナー”に対する関心の高さがうかがい知れる。
※「プレジデント」「プレジデント ウーマン」のメルマガに登録する働く男女へオンラインアンケートを実施(2021年5月:有効回答数2844)
アンケートで「仕事の場面においてマナーは必要ですか?」という質問をしたところ、99.5%が「はい」と回答しており、マナーの存在自体を否定している人は少ないことがわかった(図表1)。マナーが必要な理由を尋ねると、「仕事や人間関係の潤滑油」(マーケティング・40歳)、「自分も周囲も気持ちよく働ける職場であるために絶対不可欠なもの」(企画・51歳)という声が多数だった。
誰もが必要不可欠と考えているマナー。しかし、そんな人たちでもビジネスシーンで疑問に思うマナーがあるのだろうか。
まず「ビジネスにおいて疑問に思うマナーはある?」の問いに対し、「大いにある」「まあまあある」と答えた人は全体の66.6%にも上った(図表2)。
では、ビジネスパーソンたちはいったいどんなマナーを疑問に感じているのだろうか? 実際の回答に上がった具体的な例を見てみよう。
みんなの職場の「疑問に感じるマナー」
実際に体験した疑問に思うマナーには「どんなときでもネクタイを必ず着用しなければならないこと」(商社・49歳)というものから、「オンラインミーティングで、画面上の上座・下座を気にする」(IT・37歳)といった、このご時世だからこそ目立つ意見も。また「メールの際の丁寧すぎる冒頭文」(営業・41歳)などが挙がった。
なかでもダントツで多かったのは「下位者のハンコは上位者のハンコに対し、お辞儀をするように左に傾けて押す」(金融・35歳)というもの。このマナーはどうやら主に金融系の企業内で、書類に押印するときに一部で行われているようで、これについてさらにアンケートを取ってみると、反対が64.9%で、「正直やりすぎだと思う」(メーカー・52歳)、「事務作業になってしまっているマナーには意味がない」(出版・44歳)という意見が見られた。賛成派はいたものの、わずか2%にとどまった(図表3)。
実際に自身の職場で行われているマナーだとしても疑問を持っている人はいるらしく「皆がやっているので合わせているけれど……はっきり言って意味不明」(金融・29歳)、「習慣として続いてしまったが、なくてもいいと思う。管理職である自分自身も、ハンコの角度はとくに気にしないし、マナーとは違うと感じる」(金融・47歳)という当事者の意見も印象的だ。
疑問に思うマナーが職場にあるとしたら……あなたならどうする?
コロナ禍においてよりDX化が進み、現在では“脱・印鑑”が議論されていることもあり、このマナーについては「今までそんなマナーがあるとは知らなかったが、バカげている」(事務・29歳)、「時代錯誤に感じる。なくなってもいいと思う」(映像・55歳)という辛辣な意見が目立った。
視点を変えてみると「ハンコにお辞儀」をさせるのは、隅々にまで礼儀正しくあろうとする結果自然とできたのかもしれないが、「ただ丁寧であればいいわけではない」というのもマナーの特徴。みんなが心地よく仕事をするための心配り、という点からはかけ離れてしまっているようにも見える。
あなたは「ハンコにお辞儀」のマナーをどう感じただろうか? もし反対派だったとして、実際の職場で皆がそのマナーを守っていたとしたら……あなたはどう対処するだろうか。
マナーはあくまで仕事や人間関係を円滑にするツールであり、なにより自然と心配りができるコミュニケーションのひとつ。時代が急速に変化している今、生活様式も新しく変わっているように、疑問を感じるマナーについても改めて考えてみるタイミングなのかもしれない。