國武/立教大学3年生
森/青山学院大学4年生
鈴木/慶應義塾大学4年生
土井/立教大学2年生
矢追/早稲田大学3年生
山崎/慶應義塾大学2年生
池上/日本大学1年生
青野/専修大学2年生
岡田/高校2年生
赤峰/高校3年生
ゴタゴタ続きの開会式にがっかり
【原田】今回の五輪では日本の政治や利権、隠蔽体質、ジェンダー意識の低さなどさまざまな問題が明るみに出ました。その中で、皆さんが特に衝撃的だったニュースは何でしょうか? 何を感じたか、どう受け止めたかも教えてください。
【青野】僕は開会式がいちばんひどかったと思っています。取り仕切っていた会社の利権問題もニュースでたくさん見たし、統括責任者や演出家、音楽担当者にも辞任や解任が続出したりしてゴタゴタ続きでしたよね。開会式そのものも見ましたけど、ショボいなと思いました。
【森】僕は小山田圭吾さんのいじめ問題ですね。いろんな記事を見ましたけど、人として本当にダメだなと思いました。どうしてあの人が開会式の楽曲担当に選ばれたのか、不思議でしょうがないです。
【國武】私は、五輪の開催費用が結局3兆円以上になるってことがいちばんムカつきます。招致のときには、低コストで世界一コンパクトな大会にするって言っていたのに。大会運営も問題続きだし、開会式もひどくて「あれだけお金を使って出てきたのがコレ?」ってがっかりしました。
女性からのセクハラも絶対ダメ
【岡田】私は小林賢太郎さんのホロコーストネタ問題が印象に残りました。かなり昔のネタですが、ちゃんと調べないまま選んだ人が悪いと思います。以前、韓国のアイドルグループのBTSが、原爆みたいな模様が入ったTシャツを着たり、ライブでナチスみたいなマークが入った旗を振ったりしたとき、ネット上でものすごく批判されたんですよ。前にも同じようなことが起こっているのに、そういうニュースを知らないのかな。
【山崎】私は橋本聖子さんが組織委員会の会長に就いているのが信じられません。以前、フィギュアスケートの高橋大輔選手へのセクハラは、写真もあって証拠があがっているのに、今も会長のままだなんて。森喜朗会長の女性蔑視発言は、そういう時代に生きてきた人だからしょうがないなって思う部分もあるんですけど、セクハラは絶対ダメ。橋本会長がもし女性だからという理由で許されているんだとしたら、逆に女性が軽く見られている証拠かなと思います。同じ女性としてもっと頑張っていかなきゃと思いました。
努力されるべきところがされていない
【鈴木】僕は、日本が招致のときに気候のことで嘘をついていたっていうのが衝撃でした。東京の夏は温暖で、アスリートがパフォーマンスを発揮できる理想的な気候だって。もちろんそんなわけなくて、始まってみたら猛暑続きで最終的に選手にしわ寄せが行ってしまった。選手がかわいそうすぎて憤りを感じます。
【土井】僕もやっぱりアスリートをいちばん大事にしたいので、試合環境が悪いのはよくないと思います。その点では、トライアスロンやオープンウォータースイミングの選手が泳ぐ東京湾の水質や悪臭問題が心配でした。その辺を改善するってことで招致が決まったはずなのに、直前まで懸念するニュースが流れていましたよね。招致決定から開催まで時間は十分あったのに根本的な改善はできなかったみたいで、努力されるべきところがされていないという印象を受けました。
【原田】今の若者は比較的倫理観が高くて、嘘や差別、いじめ、環境問題などに対しては厳しい目を持っていますよね。五輪自体は見るし選手も応援するけれど、それとは別に問題を感じた点もたくさんあったと。その辺りは今後、若者も含めて国民全体で追求していく必要がありますね。
感染者数激増の原因は五輪にも
【原田】次に、今回はコロナ禍での五輪ということで、この点に関して意見を聞いてみたいと思います。結果的に五輪開催のタイミングで感染者数が激増して、しかも今回は若者の間でも拡大が進みました。これに関しては皆さんはどう思いますか?
【國武】ワクチンが確保できていないのが原因かなって気もしますが、五輪ができるぐらいなんだから大丈夫っていう気の緩みもあるはず。その意味では五輪のせいでもあると思います。
【土井】以前、山梨県の教育委員会の人が10人以上で昼食付きのゴルフをして問題になりましたよね。五輪でゴルフをやっているから行ってもいいと思ったって。これはやっぱり五輪をやったせいですよね。
【矢追】周りを見ても、五輪で気が緩んでいる印象はあります。誰かの家に集まって飲みながら観戦したっていう友達もいるし、そういう場面で感染者が増えているのかなという気がします。
【鈴木】確かに、五輪で気が緩んでいる人は一定数います。僕も開会式のときは「誰かの家で一緒に見よう」って誘われました。一部の若者にとっては、五輪が人と会ういい口実になったのかもしれません。
なぜ若者ばかりが責められるのか
【山崎】私の周りは逆で、今も気をつけている子が多いです。でも小池都知事は繰り返し「若者の行動パターンが」って言っていますよね。外出を我慢している子も多いのに、何でこんなに若者が責められるんだろうって不満を感じます。大体、若いって何歳ぐらいを指しているのか……。大ざっぱにくくって何度も「若い世代が」って言うのはやめてほしいです。
【赤峰】高校生では、五輪で生活が変わった人はあまりいないと思います。緊急事態宣言に慣れて気が緩んできたっていうのはあるけど、そもそも高校生は宅飲みしないから、五輪だからって集まることもなかったです。
【岡田】同じです。緊急事態宣言の意味が薄れちゃっているんだと思います。私自身は割と気をつけているほうで、外出も家族でドライブに行くぐらいです。
【原田】なるほど。気をつけている人もいるけれど、宣言慣れしているところへ五輪開催があって、それで気が緩んだ人も出てしまったようですね。
政治不信はあるが投票行動は変わらない
【原田】皆さんの話を聞くと、若者も五輪やコロナ対応には問題を感じているわけですが、それは次の衆議院選挙に影響するんでしょうか。感染者数が今以上に増えたら、若者の投票行動は変わると思いますか?
【山崎】政治に関心がある若者は少ないので、感染者数が増えても「じゃあ投票に行ってみよう」とはならないと思います。五輪は「メダルたくさんとれてよかったね」、感染拡大は「また宣言が出るんだろうな」ぐらいの感想で、大半の子は傍観者のままなんじゃないかな。でも、若者に影響力がある人が選挙に関する発言をして共感を集めたら、行動を起こす人が増えるかもしれません。
【池上】若者には変化は起こらないと思います。若者の間では緊急事態宣言の3回目が明けた頃から気が緩み始めていて、今はもう「普通に遊ぼう」っていう子が多い。遊んでいる様子をインスタに上げるのも、前は控えていた子が多かったのに今は気にせず上げている感じです。
【矢追】僕の周りではすでにワクチンを打った人も増えています。これからは、接種を免罪符にして「打ったからもういいでしょ」って遊び始める若者がどんどん出るはず。五輪や感染者数の問題はあっても、ワクチンが進めば投票じゃなくて遊びに行く人が増えるだけだと思います。
【森】僕の周りでも、海外に行きたいからワクチンパスポートがほしいとか、政治よりワクチンに興味ある人のほうが多いですね。感染者数が増えても、投票も含めて若者の行動はあまり変わらないと思います。
今回生まれた不信感は今後も続く
【鈴木】投票する若者が増えることはないと思いますが、政治への不信感は高まっているんじゃないかな。個人的にも「何なんだ政府は」っていう思いはあります。緊急事態宣言の効果もよくわからないし、ワクチンが遅れているのもおかしい。五輪で日本の選手が活躍したのはうれしかったけど、それとこれとは別。今回生まれた不信感は、パラリンピックが終わっても続くと思います。
【土井】今回のことで、政治に問題が多いと気づいた若者はたくさんいます。でも、どこに投票したらいいのかがわからない。今の政府に不満はあっても「どうせ自民党なんでしょ」って思っていて、投票行動にはつながらない気がします。
【原田】コロナ禍や五輪を通して問題意識を持った若者は多いけれど、それでも投票行動は変わらないだろうと。僕としてはその問題意識をぜひ政治にも反映してほしいんですが、現状では政治にはやはり距離を感じているようですね。でも、皆さんの世代は人数的には少ないとはいえ、一斉に行動を起こせば日本社会にかなりのインパクトを与えられるはず。Z世代は実際の人口は少ないものの、SNS人口は最大なので、影響力が強いはずです。コロナ禍や五輪をきっかけに抱いた問題意識を、何かしらの行動につなげてくれたらと願っています。