自分に合った投資手法を見つける
投資センスを磨くツールとしてポイント投資が有効であることは、前回の記事で紹介しました。今回は投資デビューした初心者が投資で成果を出すために一歩進むには、どんな手法があるかを紹介します。
そもそも投資の手法は数え切れないほどあります。徹底して企業分析をする人もいれば、チャートしか見ない人もいます。自分に合っている手法は人によって違うので、正解はありません。初心者は自分にどの手法が合うかを見極めるために、まずは多くの情報に触れてみるといいでしょう。
最初から特定の手法に絞ってしまうと、自分に合わないものを選んでしまい、うまく成果が出せずにやめてしまうことになります。それは、投資に向いていないのではなく、手法が合わなかっただけです。別の手法ならうまくいくかもしれません。
おススメの投資の名著3冊
私がお勧めするのは、投資の名著とされている書籍をいくつか読んでみることです。たとえば、ベンジャミン・グレアムの『新・賢明なる投資家』、ウィリアム・オニールの『オニールの成長株発掘法』、あるいは世界のトップトレーダーをインタビューした『マーケットの魔術師』などもいいでしょう。さまざまなタイプの人の本を一通り読んで、どれが自分に合っているかを見極めてください。
実際に投資をする際には、いきなり大金をつぎ込まないことが大切です。初心者は当初、恐る恐る少額でチャレンジするのですが、ビギナーズラックでうまくいくと、「これはいける」と大金をつぎ込んで大損してしまいます。そうならないために、少額でさまざまな手法を試してみるといいでしょう。
過去10年分のデータから儲かる手法を導き出す
私自身は過去のデータを統計的に分析して銘柄を選ぶ手法をメインにしています。決算がよかった、業績の上方修正があったなど株価が上昇するパターンを見つけ出し、同じ条件がそろったときに再現性があるかを過去のデータをチェックします。過去10年間ほどのデータを検証し、プラスになっていれば投資手法として取り入れます。
統計的な分析で銘柄を探す手法にたどり着くまでには、私自身も試行錯誤しました。当初はウォーレン・バフェットのように企業価値に比べて株価が過小評価されている銘柄を買って株価が上昇するのを待つ手法も試しました。しかし、うまくいきませんでした。どんなにすばらしい手法でも自分に合わなければ成果を出すことはできないのです。
次に試したのが、株主優待銘柄の買いと売りを組み合わせて優待だけをもらう方法です。これはクロス取引と呼ばれるもので、ある銘柄を「買う」と同時に「カラ売り」するのです。「買い」と「売り」を同時に持っているので、株価が変動しても利益と損失が相殺されます。そのまま権利確定日まで維持すれば、株主優待だけが受け取れるのです。権利確定日の翌日に「買い」と「売り」を精算して取引を終了します。
人気の株主優待銘柄なら8勝2敗で値上がり益を確保
この方法を続けているうちに、権利確定日の翌日に清算する際、「売り」に損失が発生しているケースが多いことに気づきました。その分、「買い」に利益が出ているので、相殺すれば損失は発生しないのですが、「買い」に利益が発生する確率が高ければ、投資手法として使える可能性があります。
そこで過去のデータを分析してみると、人気の株主優待銘柄は、権利確定日に向けて株価が上がりやすいことがわかりました。これが統計的分析に興味を持つきっかけとなりました。
人気の株主優待銘柄が権利確定日に向けて株価が上がっていく現象はいまでも変わっていません。株主優待に人気のある銘柄には小型株が多く売買が少ないため、流動性が高くない傾向があります。投資しようとしても、売買できるのはリスク管理の観点では百数十万円~数百万円程度なので、機関投資家はもちろん、個人投資家でもある程度の資産を保有している人は手を出さないのです。
実際に権利確定日の3カ月前に買って前日に売ると、8勝2敗くらいの確率で利益が得られます。人気の株主優待銘柄は数多くありますので、毎月でも実践できます。ただ、過去のデータを最低でも5年、できれば10年間はチェックして、再現性があるかを確認してください。私自身は10年分をチェックしています。
リートの新規上場直後を狙う23勝1敗の手法とは
株主優待以外にも過去5年ほどのデータを分析し、利益が得られるパターンを探すようになりました。感覚的には「いける」と思っても、過去のデータで検証すると意外にマイナスだったり、あるいは利益が安定していなかったりすることがあります。データを検証することで、損失を被る確率を抑えることができます。
データ検証を繰り返しながら見つけた投資手法を紹介しましょう。
たとえば、リート(上場不動産投資信託)のIPO(新規上場)で最初についた株価(初値)が公募価格よりも低かった場合、その日の終値で買って翌月の末に売るととても高い確率で利益が得られます。
2日目も下がったら終値で買い増しします。3日目も同様です。下がり続けている間は買っていき、翌月の末に売ると勝てる可能性が高いのです。私の過去の成績では23勝1敗くらいです。
2020年はコロナ禍の影響があってIPOはありませんでしたが、たとえば、2019年3月に「サンケイリアルエステート投資法人」が上場しました。公募価格は10万円でしたが上場日の初値は9万7000円でマイナス3%のスタートでした。
そして、初日の終値は10万7000円でした。翌日は上がりましたので終値で買うのは初日のみです。そして翌月(4月末)の株価は11万1500円でしたので、売却すれば4500円の利益が得られた計算です。1カ月で4.2%のリターンです。
年に1~2回はチャンスがある
これにはさまざまな理由が考えられます。リートは多くの物件に分散投資しているので、上場した途端に大きな悪材料が出ていきなり大きく下落するリスクは僅少です。また、上場すると年金基金や生命保険会社などの機関投資家が自社のファンドに組み入れるために購入するので株価が上がりやすい性質をもっています。ですから、公募割れした場合は、その後に上がりやすい傾向にあるのでしょう。
ただリートは頻繁に上場されるわけではありませんので、チャンスは多くありません。1年に一度か二度程度でしょう。最近はリートに似た仕組みを持つ「インフラファンド」がありますが、これは対象外です。あくまでも通常のリートのみです。
割安株を狙うなら適時開示情報をチェック
もう一つPBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)が低いバリュー株(割安株)がいい決算を発表したり、増配を発表したりすると、翌日の株価が上昇することが多いのですが、その後しばらくは株価が強い傾向があります。翌日上がってしまったからといってあきらめるのではなく、そこで飛び乗ると利益を得られる確率が高くなります。
このように私は、出来事と株価の関連性を見つけ出し、過去で検証した上で再現性が高いものを投資手法として確立していくわけですが、日々の決算情報チェックや最初のひらめきを得るために、上場している企業が公表する適時開示情報を毎日、チェックしています。
東京証券取引所が運営しているTDnetでチェックできます。発表によって株価がどう反応するかを検証しながら、材料を探しています。