社内や部署ごとで共有している資料を見つけるのに、もたもたすることはないでしょうか。会社経営の傍ら、仕事術のプロとして企業の業務改善を指導する岡田充弘さんは、ペーパーレスを徹底し、社内情報が10秒以内に見つからない場合には、改善策を考え実践していると言います――。
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大企業でも“紙の城壁”があるオフィスは珍しくない

私は謎解きゲームの企画会社を経営するのと同時に、仕事術の専門家として様々な企業に効率的な仕事の進め方について指導を行っています。

そのため、いろいろなオフィスにお邪魔する機会があるのですが、中には世間によく知られた大企業であっても、表向きのイメージとは異なり、デスクに紙資料が積み上がって、ちょっとした城壁を築いているような光景を目にすることもあります。

実際のところ、IT関連のような一部の業界を除いて、紙資料を中心に仕事がまわっている会社は意外とたくさんあります。

紙資料がなぜ問題なのか?

もちろん、一時的に忘れないよう書き記したり、何かを考えたりするために利用(その紙を「シンキングペーパー」と呼称)する分には問題ありません。

しかし、紙(アナログ)の情報だと、その他の仕事で活用したいと思った時に、流通性や保存性の面でどうしても物理的な制約が生じます。郵送とメール送信、キャビネ保管とサーバー保管、を思い浮かべてもらうと分かりやすいかもしれません。

アナログとデジタルが存在すると混乱する

また、社内で共有する情報が、アナログとデジタルの2つの形式で存在していると、肝心な時に「あれ、どっちだっけ?」という混乱が生じやすくなります。であれば、デジタルの形式に割り切った方が、情報共有の面では、格段に整理・管理しやすくなります。

逆に言うと、物書きのような、個人完結するような仕事や、物理的に一定の場所で作業を行う仕事であればアナログ情報でもいいかもしれませんが、様々な人と関わりながら、たくさんの情報を組み合わせて進める仕事だと、前述のようなデメリットのせいで困るわけです。私が、企業組織においてペーパーレスを推奨する理由はここにあります。

リバウンドしない会社は「目的」が違う

せっかく社を上げて取り組んだペーパーレスも、数カ月後にはリバウンドしてしまっている会社も少なくありませんでした。

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では、ペーパーレスが続く会社と、そうではない会社との間には、一体どのような違いがあるのでしょうか? 私はたくさんの会社の相談に乗っているうちに、各社の「ペーパーレス」の捉え方には、けっこうな差があることに気づいてきました。

私が各社の差を感じることのうちの1つが、ペーパーレス化の目的、狙いです。

ペーパーレスを「コスト削減」として捉えている会社もあるようですが、真の狙いはデジタル化による「情報共有のための環境作り」と思ったほうがいいでしょう。例えば情報をデジタル化しておけば、外出先で急に資料が必要になった場合でも、オンラインを通じて速やかに資料を入手・送付することができ、大切なビジネスチャンスを逃しません。また、最近の在宅勤務や、急な出先での仕事でも、慌てることなく、全て同じ環境で仕事に取り組むことができます。これだけでも精神的な負担はとても軽くなるはずです。

20年前に上司から「紙出力しちゃダメよ」

各社いろいろな社内事情があるとは思いますが、私が経営する会社では、ペーパーレスが社内で持続定着するよう後述の5つのルールを設けて運用するようにしています。

この5つのルールは、私の仕事術に大きな影響を与えたPwCコンサルティングでの勤務経験と、独立後に企業再生の際に用いた経験に基づいています。

なかでもIT界の大物、倉重英樹氏率いる2001年当時のPwCコンサルティングは、外資コンサルの世界でも類を見ないレベルで、ITと人事の両面から次世代のワークスタイルやワークプレイスの導入に取り組んでいる、超先進的な企業でもありました。

前職NTTから転職して初めての上司面談時に、気を利かせたつもりで自分のレジメを紙出力して持っていくと、「紙出力しちゃダメよ」と注意を促されたのには内心面食らいました。その他にも色々驚いた事はあったのですが、デジタルな働き方にそれまで多少の自信があった私も、この徹底した環境や仕組みには、言葉にならないほどの衝撃を受けたことを今でも鮮明に覚えています。

ペーパーレスが必ず定着する5つのルール

デジタルな働き方とペーパーレスは密接な関係にあるわけですが、ペーパーレスはやめようと思えば簡単にやめてしまえるだけに、習慣化・定着化のためのちょっとした仕掛けが必要になってきます。以下に私が紆余曲折の末に行き着いた、チームで設けるべき「ペーパーレス5つの運用ルール」について一つずつ解説していきたいと思います。

①必要資料はほぼ全てデジタル化

基本的に会社の情報資産として残すべき資料は取説をのぞき、ほぼ全てをスキャンしてデジタル化するようにしています。

②保存形式は一目で分かるように

デジタル化したファイルには、紙とデジタルどちらで保存しているか、あるいは両方なのかを、他の人が一目で分かるように、そのファイル名に「※紙・デジタル保存済」と挿入しておくか、同フォルダ内にその旨をファイル名としたメモファイルを保存しておくようにします。

③証拠はメールを共有して残す

意思決定や合意の記録など、紙に印刷するほどでも無いが、念の為証拠として残しておきたいやりとりは、相手に確認メールを送るようにして、メーラー上でいつでも検索できるようにしておきます。

④社内情報は10秒以内に検索する

私の会社では社内情報が10秒以内に見つからない場合には、「ルール」か「インフラ」か「リテラシー」のいずれかを見直し、情報管理の品質を高めていこうと努力しています。ちなみに10秒はあくまで目安ですが、検索ツールを使えば瞬時に見つかるので、概ねそれ以下の時間でアクセスできています。

⑤作業・検討中は紙の利用もOK

デジタル化を強固に進めすぎると、仕事や人によっては弊害も起こりえます。とくに発想する仕事などは、紙の自由度がプラスに働く側面も確かにあります。そこで、作業・検討中は紙の利用を認め、最終的な保存はあくまでデジタルで、ということにすれば、たいていは折り合いがつくようになります。

以上、何らか特別なシステムやITインフラを用いるわけでもなく、いずれも小さな工夫ではありますが、逆に言うと、こういったルールが定義・遵守されていないために、多くの企業が途中でペーパーレスを断念してしまっているのではないかと思います。

ペーパーレスを定着化させるまでには、多少の時間と努力は必要かもしれませんが、定着した後は、それがオフィスであっても、在宅勤務の自宅であっても、はかりしれないメリットや快適さを享受できるようになります。ぜひ地道に諦めず取り組んでみてくださいね。