給与明細は3つのパートから構成されている
毎月、会社からもらう給与明細。みなさんは、どう扱っているでしょうか? 最後の「差引支給額」(振込額)だけ確認して、ポイっとしていないでしょうか。しかし、給与明細の中身が間違っていることもあります。しっかりチェックをしなければ、損をしてしまう可能性があるのです。
4月から新社会人になった人はもちろん、これまで給与明細をしっかり見ていなかった人も、損をしないためにどこをチェックすればいいかを覚えてください。
まず、給与明細は、「勤怠」「支給」「控除」の3つのパートから構成されています。
「勤怠」には有給休暇を取得した日数や残業(時間外労働)の時間数などが記載されています。まずは、休暇を取得した日数や残業の時間数に間違いがないかを確認しましょう。ICカードなどで勤怠を自動管理している会社はミスが起こりにくいのですが、タイムカードの記録を人手でパソコンに入力しているような場合は、入力の際にミスが発生する可能性があります。
残業代の計算ミスは少なくない
また、残業時間数は残業代に直結しますが、22時までと22時以降では単価が異なります。労働基準法では「労働時間を原則、1日8時間、週40時間以下とすること」との規定があり、これを超えて働いた場合は「割増賃金」が発生するのです。
割増賃金は基本給の1.25倍以上と決められています。時給1000円なら1250円×時間数が残業代になります。さらに22時以降は深夜労働となり、会社は基本給の1.5倍以上を支払わなければなりません。給与明細をチェックする際には、普通残業と深夜残業の時間数に間違いがないか、残業代の計算に間違いがないかを確認しましょう。
資格手当を見れば昇進、昇給のヒントに
「支給」は、会社から支払われるお金です。「基本給」のほか、「役職手当」「家族手当」「住宅手当」「通勤手当」などがあります。自分の該当する手当がしっかり支払われているかをチェックすることが大事ですし、「資格手当」の項目が給与明細にある場合には、収入アップにつながる可能性があります。
資格手当には、合格したときに一時金としてもらえる場合と、取得後は毎月もらえる場合があります。どんな資格を取得した場合にもらえるかは、会社によって異なりますので、就業規則や会社の人事担当などに確認してください。
会社が資格手当を支給しているということは、その資格が業務にプラスになると考えられているからです。資格を取得することで手当てが受け取れるだけでなく、プロジェクトを任されたり、業務の幅が広がるなど、出世のきっかけになる可能性があります。
私自身、会社員時代はシステムエンジニアとして勤めていましたが、カラーコーディネーターの資格を取得すると、手当を受け取れました。意外な資格が手当の対象になっていることもありますので、会社がどんな資格手当を設定しているか、一度、調べてみるといいでしょう。
給与から差し引かれるのは主に「税金」と「社会保険料」
「控除」は給与から差し引かれるものを意味します。大きく「税金」と「社会保険料」に分かれます。税金には所得税、住民税、社会保険料には厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料があります。40歳以降の人は介護保険料も差し引かれます。
会社員の場合、会社が給与から所得税を差し引き、本人の代わりに税務署に納税しています。ただし、毎月の給与から差し引く金額は概算のものです。会社は税務署が発行している「給与所得の源泉徴収税額表」を基におおよその金額を算出し源泉徴収を行うのです。
最終的には12月の時点で1年間の収入を集計して、税金を再計算して年末調整をして過不足を精算します。12月の手取りが多いと感じるのは、所得税の概算が多めだったケースにあたるからです。
4~6月は残業代を減らした方がいい?
住民税は前年の所得を基に税額を計算し6月の給与から差し引かれます。新社会人の場合は、通常前年の所得はありませんから住民税は2年目の6月から徴収されます。その分、手取り額は減ることになります。
社会保険料は毎年4~6月の支給額を基準にして計算されます。支給額には残業代なども含まれるため、「4~6月はあまり残業をしないほうがいい」ともいわれます。手取り額を減らさないためには正しいともいえますが、将来の年金額が減ってしまう点ではマイナスです。
現役時代に支払う年金保険料の水準によって、将来受け取る年金額も変わります。また、会社員の社会保険料の半分以上は会社が負担してくれています。自分で支払う保険料と保障のバランスは自営業者に比べて有利です。ですから、4~6月の残業代を抑えて、社会保険料を低くすることがトータルで有利とは言い切れない面があるのです。
雇用保険は失業時の生活を安定させるための保険です。保険料は会社と本人が負担していますが年金や健康保険のように半々ではなく、会社のほうが多く支払っています。
ちなみに通勤手当は税金の額に反映されませんが、社会保険には反映されます。通勤手当が多い人は、少ない人に比べて社会保険料が高くなることもあります。
税金や社会保険料は少ない方がいいと考えてしまいがちですが、なぜ支払っているのか、支払うことでどういうシーンでどんなメリットを得られるかを把握しておくことが大切です。老齢年金について把握している人は多いですが、障害年金や遺族年金については見落としている人が多い印象です。また、大企業の中には高額療養費の上限が2万円という企業もあります。これらの情報を確認することで、公的年金や健康保険以外に準備すべきお金について考えるときの参考になります。
給与明細はデジタル化して保管を
会社から受け取り、チェックの終わった給与明細はどうすればいいでしょうか。私自身は、会社員時代の給与明細をいまでも保管しています。しばらく前までは紙の状態で保管していましたが、いまはスキャナーでデジタル化して保管しています。
過去の給与明細は年金記録の確認などで必要になるケースがあります。年金の加入履歴は日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」で確認できますが、転職経験のある人などは、年金の切り替えの時期が合っているかを確認するときに給与明細が役に立ちます。デジタル化すれば、邪魔になることもありませんので、ぜひ保管することをお薦めします。