ビジネスパーソンの国内出張において、欠かせないのが新幹線での移動。コロナ禍でその機会は以前より減ったとはいえ、大切な移動手段であることには変わりません。聞くところによると、多くの人が居合わせる公共の空間である一方で、多少のプライベート感もあるために、かなりの人がストレスを感じた経験があるのだそう。あなたの隣に座った誰かが不快な思いをしないためにも、知っておきたいマナーの基礎とは——。
プラットフォームでスマートフォンを操作する男性
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あなたにとっては大切な仕事でも、他人にとってはただの騒音

新幹線で移動中の車中でビジネスパーソンがいちばん気をつけたいのが「音」。

とくに最近多く遭遇するのは、大きな音を立ててパソコンのキーボードをパチパチと強く打ち込む音です。目的地に着くまでの数時間は確かに貴重な時間だし、急な仕事が舞い込む場合も多々あるでしょう。もちろん、車内で仕事をしてはいけないなどというルールもありません。けれど、キーボードから出る音は、仕事に関係のない他人からしたら騒音そのもの。それが数時間ずっと続いたとしたら? たまたま座った席がそんな音を出す人の隣だったら? ……それは嬉しくない偶然ですよね。そのうえ振動がイスに伝わったりなどしたら、前の席の人だってげんなりです。

また驚くべきことに最近は、座席からリモートミーティングを始めてしまうツワモノまでいるのだとか。「通話は車外かデッキで」というのはマナーとして定着しているものの、リモートミーティングとなると別の認識なのでしょうか。しかしながら(言うまでもありませんが)これは明らかなマナー違反。スマホでの通話と同様、自分にとってどんなに大切で急ぎの用事でも避けるべき行動です。

自分では静かにしているつもりが……ついやってしまうマナー違反

また、自分では気づかないうちに周囲を不快にさせてしまうのが、目の前の好きなことに夢中になってしまっているとき。

昨今は大人も子どももゲームをしますが、あまりに熱中してゲーム機をガシャガシャ操作したり、ときには大股開きでひじかけを独占しているスーツ姿の大人を見かけることがあります。何度も言うように、移動中にどう過ごすかはあくまで個人の自由です。けれど、迷惑に気づかないぐらい我を忘れてしまっては、なんとも残念ですよね。

一見静かに読書していても、いつのまにか靴を脱いでいて、前の座席に足をかける……なんて、ぎょっとするほどリラックスしている場合も、周囲が見えなくなって迷惑になっているパターン。マナーうんぬんを越えて、実際にトラブルになる場合も少なくないそうです。

ほかにもイヤホンからの音もれにも気づかないほど大音量で音楽を聴いたり、コンセントを独占し続けたりするのもマナー違反。何かに夢中になっても、冷静な目を同時に持つのが大人です。誰にでもうっかりはありますが、そうでないときにはお互いが心地よく過ごせるよう、気配りを忘れずにいたいものです。

電車内でスマートフォンを操作する男性
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見えない迷惑になる「香り」と「ニオイ」問題

見えない気配りとして大切なのが香りやニオイに関すること。

公共交通機関で長時間移動することが前もってわかっていれば、いつもつけている香水をその日はやめておいたり、より柔らかな香りにシフトするのもいいでしょうし、車内に充満するようなニオイの強い食べ物を持ち込まないのもマナーです。目に見えないからこそとくに気をつけたいところでもあります。いちからメイクを施したり、ネイルを塗り直したりするなんてもってのほかでしょう。

これまでいくつかの例を挙げてみましたが、ドキッとすることはありませんでしたか?

先にも述べたように、新幹線の車内はれっきとした公共の場です。迷惑行為にならないよう気をつけなければいけないのは当然のことです。ただし、すべての人が無音状態でいるべき、飲食はすべて禁止すべきだという極端な考えもふさわしくはありません。移動時間を有効利用して仕事を片付けるのもかまいませんし、おしゃべりも周囲に不快にならない音量であればいいわけです。「周りの人に気配りしながら」というのがポイントなのです。

一人ひとり迷惑に感じる度合いは異なりますが、そこで、常識的な行動をするためにも基準となるのがマナーの存在。マナーとは、自分も相手も心地よくいられるように気を配ることでもあります。大きな音を立てたり、不快なニオイを撒き散らしたりしないのは当然のことですが、マナーを便利な基準として、お互いが監視し合うような窮屈な空間にならないよう、やさしさをベースとした振る舞いをしたいものです。