改めて考えたい、キャリア女性の靴問題
キャリア女性の装いは、ときにマナーとともに語られることがあります。それは、男女ともに仕事服はT.P.Oの大切さに加え、好感度や相手への敬意が表れるものだと考えられているから。例を挙げるときちんと感を重視したスーツスタイルだったり、椅子に座ったときのことまで考えられたスカート丈が良しとされていたりします。
また、議論のひとつに靴がよく挙げられます。仕事のときの足元は基本、ビジネスシーンでの正装ともいえますから、女性であれば5~6cmのシンプルな中寸ヒールが理想とされてきました。高すぎるヒールも、あるいはペタンコのフラットシューズもNG。そんな考え方がこれまで重用されてきましたし、マナーとして守るべきものでした。
けれど、職場でのハイヒールおよびパンプスの着用を義務付けられたことに抗議する「Kutoo(クツー)運動」を境に、この考え方は少しずつ変わってきています。皆さんもご存じのとおり、これは世界中で巻き起こった「MeToo」をもじって“靴”と“苦痛”を合わせた造語。昨今のジェンダーによる差別をなくすという意識の変化に伴って、女性だけが強いられている暗黙のルールに疑問を持とうという動きです。
もちろんこの「KuToo運動」には賛否あることを前提として、確かに「きちんと感」や「好感度」のために、いつ何時もヒールのある靴を強制されるのは女性にとって少し窮屈なもの。今回は印象をよく見せつつ私たち大人の女性が履いていて心地のよい、フラットシューズについて考えてみようと思います。
素敵な人の足元・残念な人の足元
フラットシューズが正式な場においてNGとされてきた理由として、「カジュアルすぎて見える」ということがあるでしょう。現にヒールのない靴はその多くがラフで、きちんと感のあるスーツやジャケットといった着こなしにマッチするものが少なかったりします。
男性の革靴は総じてヒールがなくてもきちんと見えるのですが、それを女性がそのまま履いてしまってはやはりミスマッチ。デザインをはじめとして、キャリア女性が気にかけるべきポイントはいくつかあります。
まず大切なのは上質感。タフでしなやかなレザーなどの素材を選ぶことで、履きこんだときによりいっそう存在感を増す靴であること。1、2シーズン使い込んで捨て、また新しいものを買うという人もいるかもしれませんが、そういう人は総じてお手入れが行き届いていない場合が多い。自分としては“長く履かないから適当に履いている”靴でも、他人から見るとただの残念な人。立場のある大人なら、上質なものをきちんとお手入れして長く履くのが得策です。
次に、甘すぎるデザインは避けること。決してそれがよくないという単純なことではなく、甘さが際立つデザインはカジュアルに見えてしまうことが多いうえに、キャリア女性の装いから浮いてしまうことが多々。慎重に選ばないと、どことなく信頼感にかけてしまうことがあります。オススメはほんのり辛めでシンプルなもの。ヒールがなくとも端正な雰囲気が手に入ります。
キャリア女性にベストなフラットシューズとは?
PWがキャリア女性にオススメするのはズバリ、上質なスリッポン、もしくはローファー。
ほんのりマニッシュで正統派な雰囲気が漂うこれらのシューズは、トレンドに関係なく長く履き続けられるトラディショナルな逸品。スーツスタイルにはもちろん、合わせるボトムも選ばない万能靴です。同じフラットシューズでいうと定番のバレエシューズも悪くはありませんが、今どきの着こなしをリードしてくれるという点では、甲部分が深く、クールな雰囲気のローファーのほうがオススメです。
また、ヒールパンプスでは強くなりすぎてしまうクロコの型押しレザーや、色ならばクリーンなピュアホワイトなども取り入れやすいのがこのタイプ。足元を軽やかに見せながらカジュアルになりすぎるのを防いでくれます。もちろんノーヒールなので長時間歩いても疲れにくく、外回りなどにも最適です。
「職場にはヒールのある靴じゃないと」「フラットシューズはマナー違反」と決めつけず、ビジネスマナーと同じように時と場合に合わせてより良い変化をめざし、センスよく取り入れていきたいものです。
※価格はすべて税込みです。