自宅では仕事に集中できないという人も多いのではないでしょうか。デスクワークを合理化することで多くの謎解きイベントを生み出してきた岡田充弘さんは、「集中できない原因の一つは紙の資料」と指摘。だからといって、片っ端からデジタル化をすればよいというわけではありません。岡田さんは、今ある紙資料を潔くバッサリ捨てることを勧めます——。
女性の指のボタンを押したコピー
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自宅で集中できない理由は「紙」

コロナ禍が世の中に大きな影響を与え始めてから1年が過ぎました。当初は急激な在宅勤務の導入にとまどった会社も多かったと思いますが、今では運用面含めて一定の落ち着きを取り戻してきているようです。

働き手から見ると在宅勤務を実施した当初は良い面ばかりが目についたかもしれませんが、そろそろ一定の不便さや気になるところも出てきているのではないでしょうか。

実際、自宅の環境と向き合う人も増えていると思います。自宅は基本的に生活の環境であるため、働くための環境とは色々な面で異なります。「集中力を保つのが難しい」といった声もあがってきているようです。

その原因の一つが紙資料の保有です。会社ではフリーアドレスやペーパーレスが進んでいても、自宅ではつい紙を無秩序に保有してしまっている人も多いようです。そこで今回は、少しでもストレスフリーで生産性高く仕事をしてもらうために、古くて新しいテーマである「ペーパーレス推進」について、その実効性に注目しながら、ご紹介していきたいと思います。

今ある紙資料を潔くバッサリ捨てるべし

紙資料が増えてくると、欲しい資料がすぐに見つからなかったり、どれが最新版かが分からなくなったりするなど、混乱が生じやすくなります。それなら紙資料を全てデジタル化すれば問題解決かと思うかもしれませんが、量が多すぎると混乱が生まれるのは、紙もデジタルも同じです。

そもそも不要な情報であれば、デジタル化する時間すら無駄ですし、デジタル化した後の参照時間や廃棄時間など、余計な間接時間が増えるだけです。なので、身近な情報を適量に保つには、安易なデジタル化はせず、まずは紙の状態で思い切って捨てることを検討した方がいいでしょう。

過密くずかごに代わるものとしてペーパーレス オフィス
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ただここで、「捨てる基準」がないと、紙はどんどん溜まっていくことになります。

「いつか必要になるかも」が実現することは滅多にありません。捨てる基準は、「再利用性」、「再入手性」、「入手価値」、この3つです。つまり、再び使う可能性が低く、再入手が可能で、安価に入手できるものであれば、あれこれ考えずにバッサリ捨ててしまっていいのです。最初は抵抗感があるかもしれませんが、繰り返すうちに次第と慣れていくはずです。

はがきやDMは「即廃棄」の習慣を

電子メールがこれだけ普及しても、いまだ年賀状や事務所移転の挨拶はがき、宣伝DMといった紙の郵便物が届くことがあると思います。これらは放っておくと、いつのまにかデスク上を侵食していき、集中力や時間を奪う原因になってしまいます。

仕事に必要でないはがきやDMは、住所や連絡先が変更していないかだけチェックして、即廃棄する癖をつけましょう。

ちなみにうちの会社では年賀状の当選チェックはしません。それによって確実に失う時間と不確実な当選で得られる価値とを比較して、即廃棄するのが妥当だと考えています。DMに付属しているクーポンなども、管理工数が増えることから、即捨ててしまいます。目先の小さな利益に惑わされることなく、身辺をシンプルに保つことで、自然と時間の余裕を持てるようになります。

ペーパーレスを推進する上でありがちな過ちは、なんでもデジタル化してしまおうとすることです。「不要な情報はそもそも持たない」という姿勢を貫き通すことが大切です。

必要な資料は「間髪入れずにデジタル化」の習慣を

積み重なった紙資料から、目的の情報を必死に探そうとしてイライラした経験はありませんか? 紙資料はデジタル情報と比べてどうしでも“検索性”に限界があります。

小説家やイラストレーターなど、個人で完結するような仕事であればいいのですが、チームで進める仕事であれば、紙資料のまま保存されていると、情報共有の面でハンディキャップを背負うことになります。

物理的な制約を超えて、必要な情報に誰もが自由にアクセスできるようにすることに、デジタル化の意味があるのです。

かつてと比べると、企業のペーパーレス化はそれなりに進みましたが、それでもいまだ打ち合わせの場で紙資料が配布される機会は少なくありません。中にはせっかく進めたデジタル化がリバウンドして、またペーパーフルな環境に逆戻りしてしまっている企業もあります。

そういった状況にならないようにするには、残しておくべき紙資料は入手後速やかにデジタル化してしまうことです。ここで間髪を入れてしまうと、瞬く間に紙が溜まっていってしまいます。

出先ではスマホで撮影してデジタル化

デジタル化には通常スキャナを使います。もし出先などでスキャナが無ければ、スマートフォンで撮影して、その写真を自分宛にメールで送っておくといいでしょう。Googleドライブのようなクラウド型のストレージサービスで同期させる方法もあります。

スキャンしたファイルはPDF形式で保存し、OCR機能(光学文字認識機能)でテキスト検索が可能な状態に変換しておくと、活用範囲が広がり便利です。ちなみにOCR機能は、PDFの編集・加工ソフトのAdobe Acrobatに標準機能として備わっていますし、専用ソフトでも多数販売されています。

入手した紙資料をデジタル化する前に、まずはネットや社内サーバーから同じ情報を入手できないかを調べ、もし入手できそうであれば紙資料の方は捨てて、そちらから入手するようにしましょう。これが管理すべきデジタル情報の重複を防ぐコツです。

Faxは紙出力せず、パソコン上でデジタルのまま受信

ビジネスシーンの主役はすでにメールに移り変わっていますが、それでもオフィスからFaxが完全に姿を消すのはまだ先になりそうです。というのも、取引先の事情によっては、どうしてもFaxを受けざるを得ない状況が存在しているからです。

Fax出力された用紙は、次第にデスクを占有するようになります。また、Fax機まで出力用紙を取りに行く時間もかかります。これらが仕事に関係する資料であればまだしも、単なる広告などの情報であれば、紙代もかかって迷惑な話です。

そういった場合におすすめなのが、Fax受信時に紙出力せずに、そのままパソコン上でデータ受信する方法です。具体的には、複合機の付属機能を使うか、Fax受信ソフトを使うか、通信会社の専用サービスに申し込むか、いずれかの方法で実現することになるでしょう。これらの方法を用いれば、外出先でもFax受信した内容を確認することができるので何かと便利です。

今回はペーパーレスとの向き合い方やリバウンドしない定着法について、幾つかの実践的なコツをご紹介させていただきました。地道ではありますが、ペーパーレスを会社や個人の働き方に定着化させていくには、こういった小さな習慣や工夫を積み重ねていく必要があります。ぜひうまく取り入れて、長時間の在宅ワークにおいても、ストレスフリーで生産性の高い働き方を手に入れて頂きたいと思います。