仕事の実力でリードしつつ部下の強みを伸ばす目配りを
エン・ジャパン取締役 ブランド企画室室長 河合 恩さん
仕事で結果を出せる上司に、部下は納得してついてくる
初めて営業で管理職になったときは立候補制でした。プレイヤーとしてはやり尽くした感があり、仕事の幅を広げたくて手を挙げました。経験してわかったのは、管理職として信頼されるかどうかは仕事の成果で決まるということ。営業なら誰よりも高い売上を上げる。「あの人にはかなわない」と思われなければ部下はついてきません。業務外でいくら関係構築ができていても、業務で認められなければ意味はないですね。
役職が上がり管理する部下の数が50人を超えると、自分1人では見きれなくなるので、管理職候補の育成が大事になってきます。仕事の成果はもちろんのこと、周囲を巻き込める彼ら彼女らの存在は、ほかの社員にも好影響を及ぼし組織を前進させる力になります。管理職はそうした優秀な部下たちから仕事で認められていることが大切。そういった点でも圧倒的な結果を出すことがマネジメントには重要だと考えています。
それから部下をよく見て、一人一人の能力や向き不向きを把握することも大切。強みを伸ばして、弱みを補強するサポート力は必要です。そういう細かな目配りは女性のほうが得意かもしれませんね。
女性はライフイベント前に管理職に挑戦を
リーダー力を育てるには、若いうちにプロジェクトを丸抱えする経験を持つことが早道です。1人でプロジェクト全体を見ることで、どういった役割が存在し、どういう部署がどんなタイミングで動くかを把握したり、トラブルが生じたときの対処術などを知ることができます。この経験があると組織が拡大し、人に業務を任せることになっても大体のことは見当がつくようになります。
特に女性はライフイベントがあるので若いときに管理職を経験したほうがいい。出産などのライフイベントを迎えてから管理職に挑戦するのは難易度が高いです。時間と体力があるうちにチャレンジしておくと復帰後の選択肢も広がります。
仕事の力は美容と同じ。努力しないとダメになる
女性は100パーセントできる自信がないと手を挙げない傾向があります。だから管理職の席は男性で埋まりがち。ただポジションには限りがあるので、恐れず手を挙げて積極的に取りにいくべきですね。上司に時期尚早と言われたら、足りない部分のフィードバックを受けて成長すればいいのですから。今の自分には無理という人もいるかもしれませんが、世の中は変化し、自分も年を取る。会社の要望は当然上がっていくのに、会社員として組織にいて成長を拒んでいると、現状維持さえ危うくなります。
これは美容と同じ。20代は何にもしなくてもキレイだけど、30代や40代で努力を怠っていたら、一気に老けてしまうでしょう。管理職に昇進するチャンスがあったらつかんだほうがいい。ぜひ勇気を出して挑戦してください。
チームのパフォーマンスを引き出し共に乗り越える力
ダイキン工業 化学事業部 企画部 担当課長 鷲野恵子さん
チャレンジは失敗しても、すべて自分の糧になる
入社してまだ日が浅い頃は会社から指示された仕事に不安や疑問を感じていましたが、次第に仕事で得た知見やスキルは無駄にならないと気づき、与えられた仕事は前向きに引き受け、最後まであきらめずに取り組むことを自分に約束しました。このときに管理職に必要な遂行力、目標を定め、現状の課題を見いだし、解決する力が鍛えられたと思います。失敗したとしても、前向きな失敗は糧になります。自分にできることを精いっぱいやって失敗したとしたら今の実力が足りなかったということ、素直に認めて反省したらいい。実際に過去に失敗したことは多々ありましたが、気持ちと折り合いをつけて次に向かっていました。
「伝わる」ように伝えること、受け取ろうとすること
2017年2月から20年の3月までフランスの子会社に出向していましたが、会社では当然お互いの母国語での意思疎通はできず、細かなニュアンスをつかむことが難しくなります。そこで、部下が話を持ってきたときは自分の仕事を止め、十分に理解できるまで話し合うようにしました。部下の人柄や考え、悩みを知る努力をした中で、仕事が進み、成果につながりました。
コミュニケーションがうまくいかないときは、一方が自分の主観を「伝える」よりも「伝わる」ように相手の立場や考え方を考慮し、相手が伝えようとしていることを受け取ろうとする努力が大切です。管理職になると特に、コミュニケーション力の必要性を感じます。文化や社会習慣、価値観が違ったとしても、相手の考えを理解する力、相手と同じ立場に立ち、対応する力が求められます。組織は人で成り立っています。お互いの知見やスキルを共有化することが、物事を進めるうえで納得性も高め、最終的には会社の利益に貢献できるのだと思います。
私は、課題に対して一緒に働くメンバーと突破していく調整型のリーダーです。上司や部下の意見や提案を聞きながら、物事を判断し進めていきたいし、メンバーの感情やメンバー間の関係性を重視し、信頼関係を築きながら、目標を達成したいと考えています。結果はもちろん大事ですが、メンバーが意欲的に仕事に取り組むことなどプロセスも重視したいですね。女性リーダーには比較的フラットなコミュニケーションが得意な人が多いのではないでしょうか。組織の中で、さまざまな立場の人に自分の率直な意見を伝えることができると思いますし、共感力が高い傾向にあると思います。
ロールモデル不在を逆手に、独自の管理職をめざして
もちろんリーダーの形は1つではないし、女性管理職はこうあるべきということもありません。日本ではロールモデルがいないともいわれていますが、いないことを逆手に取って、自分らしさを失わずに、独自の管理職をめざしてほしいですね。
※本誌掲載記事の一部を抜粋しているため、オンライン読者のみなさまに誤解を与える内容となりました。本図表は「プレジデント ウーマン プレミア」2020年夏号のスポット特集「明るい社内政治」に関連するものです。男性優位な今の日本社会で働く女性1000人から寄せられた「あなたの会社で女性がリーダーになるために必要ことは」の問いへの回答、上位6項目であり、女性が管理職になるために求められるスキルとは一部異なります。
1:タイトルと内容に乖離があったため、タイトルを修正しました。
2:図表の見出しが説明不足で誤解を与えたため、見出しを修正しました。
3:図表に注釈を加えました。
(いずれも、2020年12月10日8時30分修正)。