急ぎの案件があるとき。今すぐでなくてもいいけれど確認事項が発生したとき。あなたはどのような基準で連絡ツールを選んでいますか? その正解は時・場所・相手によって変わるもの。では、どのようにしたら“相手を不快にさせず的確に伝える”ことができるのでしょうか。もう誰も叱ってくれない大人のためのマナーレッスン、今月は的確な連絡手段について考えます。
ストレスのたまった女性
※写真はイメージです(写真=iStock.com/PeopleImages)

ビジネスセンスが問われる、連絡手段の選び方

入社したときにいちばん初めに教えられるビジネスマナーのうち、電話のかけ方やメールの書き方などは、ほとんどの企業研修において触れられることのひとつ。たとえば電話ならかけたとき・受けたときのそれぞれの挨拶のしかたや、メールなら書き出しの文言・言い回しなどは一からしっかりと学びますよね。

しかしながら、さまざまなシーンにおいて「どんなツールを使って連絡すべきか」は、意外と各個人のセンスや常識に任せられています。電話なのか、メールなのか、LINEなどのSNSメッセンジャーなのか、はたまた手紙なのか……。お詫びなどの緊迫した局面でない限りあまり深く考えることはなく、「まあこれが普通だろう」というようなそれぞれの判断で選ぶことがほとんどです。

話す内容・書く内容が重要なのはもちろんなのですが、連絡手段になにをチョイスするかによって、実はビジネスのセンスを見られていることが多々あります。その証拠に、いくら内容が素晴らしくてもLINEで長文が送られてきたり、早朝や深夜などに電話で伝えられたりしたら……せっかくの良い仕事も台無し。人格までもが疑われることがあるのです。

では、どんなときにどんなツールを使って連絡をとるのが正しいのでしょうか? それにはやはり、マナーを基準に考えてみることが、ひとつの正解を導く大きなカギになるのです。

“人それぞれ”の正解をどう見抜く?

皆さんはこのような経験をしたことがありませんか? 打ち合わせや外回りなどで忙しくしている合間に、ふと会社のアドレスに届いているメールをチェックしてみると「今日の夕方までに」「至急の案件で」などといった、急ぎの連絡が入っていてギョッとしたこと。あるいは、「時間のあるときにお願いします」と書いてはいるものの、非常識な時間に届いたLINEのメッセージ――。

これらは連絡を受ける側がタイミングよく目にすることができればなんの問題にもなりませんが、受け取った時間やタイミングによっては不快感につながったり、時には大きなトラブルに発展することも。やはり、内容に見合った連絡方法をきちんと判断する必要があります。

たとえば前者のような急ぎの案件であれば、やはり一刻も早く電話で伝えることが重要。「急ぎです」といっておきながら相手のタイミングにすべてがゆだねられているメールなどに連絡をしたことで、自分の役目が終わった気になるのはあまりにも無責任。ビジネスパーソンとしてのマナーに欠ける行為です。また相手が忙しいことを知っている場合、そこに急遽電話を入れるのははばかられるかもしれませんが、緊急事態を放置しておくほうが最終的には多くの人の迷惑になるのは目に見えています。

メールやSNSが主流となっている若い世代の間では「いきなり電話をするのは失礼だ」というのが一部の常識になっているようですが、それも事と成り行き次第です。まずはなにをどのようなタイミングで伝えたいかによって、連絡手段を正確に判断することがビジネスにとっては重要だといえるでしょう。

スマートフォンの隣で眠る女性
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Geber86)

時代によって変化してきたLINEなどのSNSメッセンジャー

後者に挙げたLINEなどの連絡手段は、人によってはメールと同じように「いつ読んでもらってもいいもの」「相手の都合のいいタイミングで確認してもらえばいい」と、早朝や深夜に送ることをOKとしている場合があります。けれど、いまやスマホは公私を問わず必要不可欠なものであり、肌身離さず持っている人も少なくないというもの。仕事の連絡で、しかも急いでいないというならなおさら、会社のアドレスなどのオフィシャルな連絡方法を選びましょう。プライベートな時間に無駄に介入せず、仕事ときっちりと線を引くのも大切なマナーのひとつです。

一方で、いつもLINEで連絡を取るのが通例となっているにもかかわらず、急にパターンを変えてしまうのもこれはまた、行き違いが生じる原因にも。マナーはお互いの関係性によって「なにが正しいか」が決まる場合も多くあります。日頃のコミュニケーションによって確立しているものがあれば、それに越したことはありません。

このように都度ごとにツールを選ぶのは、その人・その場面によって常識が異なるものですが、そんなときこそ「これを受け取った相手はその後どう行動できるか」「迷惑なタイミングではないか」というような相手を思いやる気持ち=マナーをベースに考えてみましょう。正解はその時々に違っていいのです。いちいち誰も教えてはくれませんが、そのたびに自身で考えて判断すること、そしていつも接している相手ならコミュニケーションを深めてパターンを築くこともまた、ビジネスを良好に進めるための大切なポイントともいえるのです。

たったひとつの連絡事項をとっても、それは“自分が相手に伝えた”という事実だけではなく、“相手に心地よく伝わる”までがひとつの行為。常に受け手側の立場になって考えることが、大人が守るべきマナーです。