もはやオンライン会議がデフォルトとなった今、会議で提示する資料もオンラインに最適化し、最大の効果を目指したい。オンライン会議ではとくに注意したいNG資料とはどんな資料? また、その改善法は? 外資系企業に勤めた後、独立して活躍中の清水久三子さんに詳しくレクチャーしてもらいました。
ビデオ会議の画面で、グラフについて話すアジアのビジネスウーマン
※写真はイメージです(写真=iStock.com/SetsukoN)

何はさておき、「情報量を減らす」

オンライン会議では、リアルな会議に比べてどうしても参加者の集中力が低くなります。そのため、リモート版の資料はまず何よりも「情報量を減らす」ことが重要。オンライン会議では、PCではなくタブレットやスマートフォンで参加している人もいるので、小さな画面でも無理なく見られる資料にアレンジしましょう。

(1)テキストメインの資料はNG

オンライン会議の間、ずっとモニターの字を追うのは疲れるものです。テキスト量を減らし、直感的に理解してもらえるよう、できるだけグラフやチャートで提示すること。例えばNG資料例①のテキスト量はトータル500字ほどあり、ぎっしり詰まっています。

では、ここからどうやって情報量を減らしていけばよいでしょうか。

いったん書き上げたテキストには、同じ言葉、同じ意味の文章が重複していることが多いので、なるべく同じ言葉は繰り返さないように削っていきます。そうしてメッセージを簡潔にした上で、OK資料例①のように図表化すれば、格段に伝わりやすくなります。

左:NG資料例①、右:OK資料例①(© 2020 AND CREATE)
左:NG資料例①、右:OK資料例①(© 2020 AND CREATE)

(2)図表にテキストをぎっしり詰めない

Excelなど表計算ソフトで作った資料にありがちなのが、セルに文字がたくさん入った図表。これでは、オンライン会議中に口頭で説明していても、参加者はテキストを読み込もうとして話が入ってこないという事態になってしまいます。

その図表を要素分解して数値などでわかりやすくする工夫が求められます。例えば複数のデータサイトを比較検討する場合、NG資料例②のようにサイトの機能性をテキストで説明するのではなく、OK資料例②のように、カテゴリ検索、イメージ検索などの機能があるかどうかを、1項目ずつ色で示し、更新頻度などのデータは数字で表現。結論として自分がどこのサイトが良いと思ったか、総合評価を可視化するとさらにわかりやすくなります。

左:NG資料例②、右:OK資料例②
左:NG資料例②、右:OK資料例②(© 2020 AND CREATE)

(3)細かな数値より「傾向」が直感的にわかる表現を

Excelで単純に数値を入力しただけの表も、リモート版の資料としては情報量が多く、見づらいのでNGです。例えば、NG資料例③のように、あるサイトへの時間帯別のアップロード数を調べたとき、リアルな会議では大きなプロジェクタに投影して「こちらの数値をご参照ください。この時間帯に最も多くアップロードされています」と口頭で説明できますが、オンライン会議ではとっさに数値を比較しづらいので、「数字ではなくトレンド(傾向)」を見せるようにしましょう。Excelであれば、OK資料③のように、データを集計した上で「条件付き書式設定」から各数値の色を指定し、色のグラデーションで傾向をわかりやすく見せることができます。

左:NG資料例③、右:OK資料例③(© 2020 AND CREATE)
左:NG資料例③、右:OK資料例③(© 2020 AND CREATE)

(4)グラフや図を2つ以上入れない

最後に注意すべきことは、完成させたグラフや図が複数入ったスライドにはしないこと。オンラインでは特に「1スライドに1メッセージ」を心がけましょう。

例えばNG資料例④のように「イベント報告」をするならば、「来場者数」「人気テナントランキング」「満足度調査」などのグラフは、OK資料例④のように図1つにつき1スライドにします。データをひとつずつ見せ、プレゼンをわかりやすく進めていきましょう。

NG資料例④→ OK資料例④→(© 2020 AND CREATE)
© 2020 AND CREATE

オンライン会議のスライドは20pt以上で

以上、情報量が多すぎる4パターンの資料を見てきましたが、資料全体のレイアウトも大事です。文字や見出しをいろんなデザインで囲ったり、青、赤、黄といろんな色を使ったりして凝りすぎると、見る人はそれに目が行ってしまって、かえって大事なポイントが頭に入りづらいもの。各要素をまとめるスライドも、できるだけすっきりしたデザインにするようにしましょう。

また、使用する文字が小さすぎるのもよくありません。リアル会議のスライドでは「16ptより大きく」をお奨めしてきましたが、オンライン会議では「20pt以上」が最適です。

ビジネスシーンではマイクロソフトのOfficeを使っている人が多いですが、最近はGoogleのスプレッドシートやGoogleスライドを使う人も増えています。相手にファイルを送ったときに使用ソフトが違うと、グラフなどが崩れてしまうこともあるので、事前に相手の使用ソフトを確認しつつ、資料のファイルはすべてPDF化しておくと安心です。プレゼンの際は万全を期しておきましょう。