テレワークが進み、個人が時間の裁量権が持てるようになったものの、かえってオーバーワークぎみになったという悩みも。そんな悩みに対して「時間割をつくったほうがいい」と提案するのは『在宅HACKS!』の著者の小山龍介さん。なぜ時間割をつくることは大切なのでしょうか。時間割をつくるときのコツとは。
若い女性が台所の流しに立っていると皿洗いしながら板を取り戻します
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Courtney Hale)

在宅勤務のほうがオーバーワークになりがち

ある調査によると、在宅勤務になると、かえってオーバーワークになりやすいという結果も出ています。従来なら出社と退社、と時間の区切りがついていたのが、在宅勤務により、いつ始めてもいつ終わってもいいという状況になって、仕事の時間が長くなっているのです。

もともと仕事には、与えられた時間(締め切りまでの時間)をすべて満たすまで膨張してしまいがち、という特徴があります。これは歴史学者のパーキンソンが提唱した「パーキンソンの法則」といわれるもの。イギリスの官僚制を観察する中で発見された法則で、膨張し続ける官僚の仕事量を批判するためのものでした。ある仕事を終わらせるのに3時間あるとすると、実際は30分で終わらせられる仕事でも、人は与えられた3時間を使い切る仕事の仕方をしてしまうのです。

そうならないためには、在宅であっても始業と終業の時間を決めて、その時間内で効率よく仕事をこなすことが大切。そのために必要なのが一日の「時間割」です。

では、どうやって時間割をつくればよいのでしょうか。脳の働きなどを考えると、3つのフェーズに分けて組むのがおすすめです。

フェーズ1:午前はアウトプットの時間に

在宅勤務の時間割例

※『在宅HACKS!』(東洋経済新報社)をもとに作成

午前中は頭がすっきりしているので、最も負荷のかかるアウトプット向きの時間帯。文章を書く、アイデアを出すといった作業は、午前中に行うのが理想的です。

反対に、これを夕方や夜にとりかかると、午前中なら30分で終わるところが、1時間も2時間もかかるなんてことが起こりうるのです。

アウトプットするときは「鉛筆削りから始める」など、ハードルの低いルーチン作業からスタートすると、その作業がエンジンとなって、どんどんはかどります。自分なりのルーチンを見つけておくといいですね。

作業を進める際は、「25分集中して5分休む」を繰り返す「ポモドーロ・テクニック」を使うのがおすすめです。25分の中に、あれやこれや詰め込まず、文章を書くなら文章を書く、資料をつくるなら資料をつくる、メールを返信するならメールを返信する、と作業を一つだけに絞り込んで集中することで、余計なことに気を散らせず、よいアウトプットをつくっていくことができます。時間割の1コマに2ポモロードずつ入れていくのがちょうどよいのではないでしょうか。

フェーズ2:午後は打ち合わせを入れる

お昼を食べると眠くなるので、一人で作業をしていると、なかなかはかどりません。ですから、午後はオンラインで打ち合わせや会議などを入れて、なるべく人と顔を合わせましょう。

ただしオンラインだと、これまで休憩にあてていた移動時間がないため、休憩もせずに仕事を詰め込みがち。生産性を上げるためにも、3時ごろに長めの休憩を取るようにしましょう。

できれば体を動かして近くのコンビニに行ったり、散歩をしたりするとよいでしょう。

フェーズ3:3時以降はインプットに

3時に長めの休憩をとったあとは、ネットで情報を集めたり、調べものをしたり、インプットする時間にあてましょう。インプットするときは、わざわざデスクにつかず、ソファでリラックスしながらでもOKです。

ちなみに夕方、詰め込んだ情報は、夜寝ているときに脳で整理されるので、翌日はスッキリとした頭でアウトプットできます。心配性な人ほど、夜になっても頑張ってアウトプットしがちですが、よい循環を促すためにも、夜はさっさと寝たほうがよいですね。

ニューノーマルなおやつタイムの過ごし方

3時の長めの休憩には、ぜひ「昼寝」をしてはどうでしょうか。ヨーロッパにもシエスタという昼寝の習慣がありますが、私はアフターコロナの新しい生活様式のひとつに、昼寝を入れるといいと思っています。

私自身、3時になると、ホットアイマスクを装着して、20分ほど仮眠をとっています。疲れた目がスッキリし、そこからまたシャキッと集中して仕事ができます。

また仮眠前にコーヒーを飲むのもおすすめ。カフェインの吸収に20分ぐらいかかるので、ちょうどいい時間帯に目が覚めるといわれているからです。

昼寝といっても、無理やり眠る必要はありません。現代は目から入る情報が多すぎて脳が疲れているので、眠らなくても目をつぶるだけで、十分に疲れがとれます。

ビル・ゲイツもジェフ・べゾスも皿洗いが大好き

また3時の長い休憩には、家事を組み込むのもいいですね。実はビル・ゲイツもジェフ・ベゾスも皿洗いが大好き。ビル・ゲイツは夕食後は毎回自分で皿洗いをしていると言っています。

皿洗いというのは、いたって単純作業。手を動かして、水しぶきや陶器の感触を感じること自体が、脳の刺激にいい。指先に意識を向けることで、頭を空っぽにして作業できるところがヨガみたいなものなのです。

家事と思ってやると辛い皿洗いも、リラックスのためにやると思えば、勤務時間中の有意義な休憩になります。食器洗浄機を使わず、ぜひ手で洗ってみてください。そのあとの能率が驚くほどアップしますよ。