不倫にまつわる言説は、どこまで本当か
不倫に対して高い関心を持つ人が多いことは否めません。それが嫌悪であろうと、好奇心であろうと、多くの人が他人の不倫に興味を持ち、また、自身の身近にある不倫に悩んでいます。
近年、不倫に対する風当たりが強くなっているにも関わらず、未だに、男性は沢山の子孫を残すという本能があるから、などの文言も多くみます。また、
これらは一体どこまで真実なのでしょう。今回は、研究から明らかにされている「不倫をする人の特徴」について紹介します。
1.収入が高い男性は不倫する率が22倍高い
いくつかの研究から、既婚男性の20~40%、既婚女性の20~25%は不貞行為の経験があると報告されています。女性の不貞行為率が高いという印象を受ける人も多いでしょう。良くも悪くも、「生物学的(たくさんの子孫を残したいという)男性の本能」だけが不貞行為の原因になっているわけではなさそうです。
男性では、収入が高い人ほど不貞行為の割合が高くなる一方、女性では収入と不貞行為に関連はありません。年収が100万未満の男性に比べて、1000万以上の人では、22.5倍不倫率が上がるという結果もあります。これは、男性の場合、不倫にかかる費用の捻出が必要になってくることに加えて、高収入は権力とも結びつき、男性自身の魅力度をあげるため機会も増える、と解釈されています。
さらに、近年インターネットサイトを利用した不貞行為が増えており、収入が高い人の方がより課金していることがわかりました。面白いことに、この研究では、男性は機会の数だけ不倫をする、というように「質より量」を選ぶのに対し、女性の場合には機会に対して必ずしも乗るわけではないため、このような収入による男女差が生まれたとされています。
2.妻より低収入な夫ほど不倫率が高まる
世界的な傾向として、女性(妻)の収入が男性(夫)より多い、あるいは同等の場合、男性の不倫率が高くなるという報告が多数されています。人は、自分はこうあるべき、というアイデンティティに沿った環境に身を置き、それに沿った行動を望む、という傾向があります。そのため、「一家の稼ぎ手であるべき」という男性のアイデンティティに対し、女性の収入が多いとそのアイデンティティが崩れる危機を感じます。結果、自らの男性性を回復させようと不倫に走ると説明されています。つまり、家庭内での女性への劣等感、のようなものが、家庭外で劣等感を感じなくて良い関係性を求めることになると言いたいのでしょう。このメカニズムは、収入に限らず、社会的立場などが大きく違う、いわゆる格差婚と言われるような場合に生じると考えられます。
3.不倫をする人は不安傾向とナルシスト度合いが高い
アメリカ・テキサス大学オースティン校の研究チームは、1万人以上のデータをもとに、不貞行為を行なっている人は、社会における何らかの不正行為をしている割合が、不貞行為を行なっていない人の2倍に上ることを、米国科学アカデミー誌に報告しています。個人の性的な行動は職業上の不正行為と相関していることを示したのです。つまり、男女関係で誠実でない人は、何事においても誠実ではない可能性が高いということです。
また、国や文化を問わず、不倫をしがちな性格特性として、①神経症傾向が強い ②ポジティブさが低い ③精神的に不安定である ④ナルシスト度合いが高い、ことも挙げられています。親の不貞行為を知っていた子どもは将来不貞をしがちであるという衝撃の研究報告もあります。
夫婦間セックスの回数や子どもの有無は関係ない
では、不倫に走らせない抑制因子には何があるのでしょうか? 真っ先に思いつくのは、夫婦間のコミュニケーション問題でしょう。ところが、日本の研究からは、夫婦関係のなかでもセックスの回数、子どもの有無や子どもの人数は、いずれも、不貞行為と関連がないことが示されています。つまり、幼い子どもがいようといまいと、夫婦間での性的コミュニケーションがあろうがなかろうが、不倫をする人はするし、しない人はしないのです。
興味深いデータとしては、男女ともに、日本では学歴が高くなると不貞行為の率が減ることが示されています。実は、アメリカのデータでは学歴が上がると不倫が増えるという結果のほうが多く、これは文化差を反映した結果だと考えられます。
また、性格特性(開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向)の程度が夫婦間で似ていると、お互いに誠実になる、ということもわかっています。
さらに、妻への依存心が強い人ほど、不貞行為は働かないことも明らかにされています。男性は年齢が上がるにつれ、妻への依存心が増え(体力的な衰えとは別に)、不倫をする機会が減ることも報告されています。
浮気衝動を抑えられる脳
近年、MRIを用いて、浮気衝動を抑えられる人は、前頭前野領域の活動が高くなっていることがわかりました。前頭前野領域は、欲求を抑えたりするときに働く領域で、この領域の活動が高いほど、浮気衝動を抑えられていたのです。パートナーを裏切らない人は、不貞行為をしたい、という衝動を脳が抑えている結果、誠実でいられるのかもしれません。
また、この衝動抑制のための前頭前野領域の活動は、「疲弊する」ことがわかっており、例えば、仕事やその他のことでこの領域の高い活動を要するようなことをすると、その後、活動が一時的に弱まることも知られています。筋トレをした後に筋肉が疲れてしまうようなイメージでしょうか。自分を抑えるような緊張状態などが続いた後、ふと気の緩みで浮気をしてしまうのは、この前頭前野の活動が弱まっている可能性も考えられます。
研究で明らかになっている不倫にまつわる因子を紹介しましたが、これらはいずれも関連(相関)があったに過ぎず、因果関係ではありません。つまり、不貞行為を働いた後に、上記に挙げたような夫婦間の問題や自分の性格、状況、脳の働きなどを理由・原因として挙げたところで、何の意味も持たない言い訳(戯言)でしかありません。それゆえ、裏切られたほうがこれらの原因を思いうかべ悩む必要も全くないのです。
ただ、これらの結果は、パートナーを選択するときには有用な情報となるかもしれません。
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