テレワークが浸透する中、“リモート営業”をスムーズに始められた会社とそうでない会社が分かれてきているといいます。リモート営業で成果を上げているチームの特徴、デキる営業マネジャーがこっそりやっていることとは――。
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※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

リモート営業が難しい分野でも、手はある

2020年4月に、政府による緊急事態宣言が公表され、対面営業ができなくなってから、オンライン商談などのリモート営業にスムーズに移行できた会社と、そうでない会社があります。

「営業部女子課」で行ったアンケートによると、リモート営業に「とても困っている」と回答した人たちの中で「とても困っている」人に多かったのは、そもそも自社のテレワークの環境が整っていないということでした。紙の契約書がないと話を進められない、商談ツールがデジタル化されていないなどで、リモートでは事が進まないのです。さらにお客様側でもテレワーク環境が進んでいないと、「打ち合わせは自粛が解除されてからにしましょう」とならざるを得ませんでした。

リモート営業への移行を難しくするもうひとつの要因は、扱う商材の特徴です。比較的安価なものや、顧客がすでによく知っているものであれば、リモートだけで取引を完結することも容易です。

でも、住宅のように非常に高価なものや、サンプルを目で見たり手で触ったりして素材感を確かめたいと思われるような商材は、リモートでのやり取りだけで契約を決めていただくのは困難ですし、クレームの原因にもなります。

それでも、営業活動の一部をオンラインに置き換えることは可能です。例えば、それまでは顧客1社1社を個別に訪問して行っていた新商品の説明を、オンラインで複数のお客様に対して一度に行うということを試みている会社があります。そうすると、お客様は自席にいながら情報を得られ、営業担当者はあちこち移動するコストや時間をかけずにたくさんの顧客にアプローチできるなど、お互いに効率が上がってWin‐Winなのです。さらに、お客様同士もつながることで、情報交換ができるようになり、お客様満足も高くなるのです。

デキる上司が実践している「オンラインOJT」

営業部門を率いるマネージャーにも、新しい営業スタイルに積極的な人とそうでない人がいます。デキる上司は、この変化をチャンスにすべく、リモートならではのマネジメント方法を開拓しています。

例えば、移動の不要なオンライン商談が増えたことで、上司が部下の商談に同席できる機会が増えました。

通常の対面営業であれば、同行した上司は顧客に直接話をすることでクロージングの後押しをしたり、担当者のトークや振る舞いなどについて商談後にフィードバックをしてくれたりするでしょう。

オンライン商談でも同じことができます。デキる上司は、お客様から見えないところで、リアルタイムで指示やアドバイスもできるのです。私が実際に、教えてもらった「オンラインOJT」を紹介します。

「太田さん、今の投げかけいいよ!」とか、「これ、お客様に聞きそびれているから確認して!」といったメッセージを、上司と部下との間のチャットでバンバン飛ばすわけです。そうすると、担当者にとっても、「あの投げかけ褒めてもらえた」と嬉しくなります。さらに「上司のおかげで、お客様にあの質問ができた」と、クロージングの勝率も跳ね上がります。

チームの一体感を出せる上司はテレワークで何をしているか

商談の場以外でも、リモートでのマネジメントをうまくできている上司とそうでない上司の差が出てきています。

テレワークになったことで、多くの上司は、「あそこの商談どうなってる?」といったちょっとした立ち話から部下の状況を把握できずに困っています。メンバー同士も、オフィスにいれば自然に始まっていた雑談の機会がなくなり、つながりが希薄になりがちです。そのままにしておくとチームや会社への所属意識が低下し、業績にも影響が出てくるでしょう。

このような事態を回避するには、リモートでも常に話がしやすい環境を作ることが有効です。例えばビデオ会議をつなぎっぱなしにし、「ちょっといいですか」といった声掛けがしやすい状態にする上司がいます(監視しているようにならないよう、普段はビデオや音声をオフにしておくと良いでしょう)。雑談専用のチャットルームを作っておき、オフィスにいるときのようにチーム内で他愛のない話ができるようにしている、という話もよく聞きます。

さらにできる上司は、オンライン商談のノウハウを集めた事例集を作成し、チームで共有、ロールプレーしています。慣れないオンライン商談そのものになれない部員は多いので、これも現場でとても助かる秘策です。

チームとしての一体感や「一緒にがんばろう!」という熱意を共有していくためには、メンバー同士の相互理解も重要です。リモートではお互いの人となりを知ることが難しく感じますが、在宅勤務をしているからこそ、画面越しにプライベートな側面が垣間見えることもあります。

これまでは上司や同僚が仕事以外のことをつっこんで聞くのはあまり推奨されませんでしたが、コロナ禍で働き方も生き方も大きな転換点を迎えているこのタイミングです。あえてプライベートのことや生き方について開示し合うのも、互いの距離を縮め、チームの一体感を強める良い方法だと思います。

昭和な上司が進んでリモート営業をしたくなる秘策

一方、「営業はお客様に会わなきゃ始まらない」「緊急事態が終わればコロナ前の働き方に戻りたい」と考えている昭和的な上司もまだまだ多くいます。

そんな上司にリモート営業に前向きになってもらうひとつの方法は、小さくても良いので成功事例を作ることです。

古いタイプの上司が二の足を踏んでいるのは、「Zoomってどうやるの?」「ミュートってなに?」といった、新しいテクノロジーやツールへの戸惑いや恐怖が原因だったりします。部下やお客様の前で恥をかきたくないわけです。

これは慣れの問題ですから、「部長、一度でもいいからやってみましょう」「お客様の反応を見てみましょう」と言って、まずはやってみてもらうことです。

その際に、デジタルに慣れていないお客様と引き合わせてしまうと「やっぱり直接会わないとね」という話になりかねません。外資系や比較的若手の担当者がいるような、オンラインの経験値が高い相手との商談を設定するのがポイントです。そして、お客様のほうから「リモートでも十分できますね!」「これからもリモートでやってくれれば、うちも助かりますよ!」と言ってもらえれば、古いタイプの上司も納得せざるを得ないでしょう。

営業というのは「まずはお客様ありき」で、自社の都合だけで新しい働き方を推し進めるわけにはいかない難しさがあります。でも、「お客様のため」という共通の目的に向かって関係者が力を合わせることができるのも、営業の醍醐味です。ぜひ、みんなでこの危機を乗り越えて、with、afterコロナの営業のあり方を作り出していきましょう。