男性は実力や実績がともなっていなくて自己評価が高く根拠のない自信を持っている。対して女性は自分自身のことを客観的にとらえる力があり、謙虚な人が多い――。数々の研究結果から男性の自惚れ傾向が明らかになっているそうです。そんな男性とうまく仕事を進めていくにはどのような工夫が必要でしょうか。心理学者の内藤誼人さんが解説してくれます。
アジアのビジネスチーム
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なぜか自己評価が高い男性

女性からすると、「(能力や実績は大したことないのに)なぜあの人は自己評価があんなに高いのだろう」と疑問に思うような男性は多いのではないでしょうか。

たぶん、みなさんも薄々とは感じていらっしゃると思うのですが、男性は基本的に「おバカさん」です。

ここでは、他ならぬ自分自身について正しく自己評価ができない人のことを「おバカさん」と呼びますが、男性は基本的に自分のことをよくわかっていません。ですから、「おバカさん」だと言えるわけです。

たとえば、男性に「あなたの知能指数はどれくらいだと思いますか?」と尋ねると、たいていは現実の得点よりも大幅に高い得点を見積もります。実際に知能テストを受けてもらうと、自分の予想よりはるかに低いのです。逆に、女性に知能指数を見積もってもらうと、実際よりもかなり低い点数を見積もる、という面白い逆転現象も見られることがわかっています。

男性がなぜおバカなのかは解明されていない

男性がおバカさんであることを示す研究は、いくらでもあります。

カナダにあるヨーク大学のマイケル・ラストマンは、運転免許証を保有している男女210名に、「あなたの運転能力はどれくらいだと思いますか?」と尋ねてみました。

すると、男性の73%は、「自分の運転能力は80点以上だ」と答えました。大半の男性は、運転がうまいと思い込んでいるのですね。なぜそんなに自信を持ってしまうのかは、よくわかりません。

ちなみに女性に同じことを質問してみると、80点以上と答えたのは49%でした。女性に自己評価をさせると、男性よりも謙虚です。自分のことはよく知っているということがうかがわれます。

ビジネスシーンにおいても、男性は、自分の仕事ぶりにおそらくものすごく高い得点をつけているでしょう。仕事のスキルを見積もってもらうと、本当は40点くらいだとしても、70点とか、80点くらいだと見積もるのではないでしょうか。

「俺のプレゼン能力は、どんなに低く見積もっても平均よりはるか上」
「僕の企画書の通過率は、たぶん90%以上」
「私のセールス成約率は、日本でも指折り……のはず」

おそらくはそんなふうに男性は考えている(信じている)はずです。なにしろ、おバカさんですから。正しく、客観的に自分自身を把握できないところが男性の弱いところ。

男性のほうが、根拠のない自信を持っている

株式投資家というと、数学を駆使して高度な予測をしている人たちばかりのようなイメージがあるのですが、そんなこともありません。

カリフォルニア大学経営大学院のブラッド・バーバーは、3万人を超える株式投資家について調査したことがあるのですが、女性投資家に比べて、男性投資家のほうが、なぜか自分の能力を高く見積もっていて、「自分なら勝てる」と根拠もなく思い込んでいることが明らかにされました。自信があるぶん、男性投資家のほうが、女性投資家よりもたくさん売り買いしていました。45%もトレーディングの回数が多かったのです。

異性との関係においても男性は、自分に関しては、客観的な判断があまりできません。

ニュージーランドにあるヴィクトリア大学のガース・フレッチャーは、50名ずつの男女に10分間の会話をしてもらって、その後で、「あなたは相手から何点の魅力をつけてもらえたと思いますか?」「どれくらい関心を持ってもらったと思いますか?」「デートしたいという気持ちを、どれくらい感じてもらったと思いますか?」と自己判断を求めました。そして、実際に相手にも得点をつけてもらって、自分の見込みと相手からの現実の評価を突き合わせてみたのです。

その結果、やはりというか、男性は自惚れた得点をつけることがわかりました。現実にはそんなにモテていないのに、自分ではモテていると勘違いしていたのですね。男性は、とてもハッピーな脳みそを持っているといえるでしょうか。職場にもいますよね、「俺はお客さまたちから好かれてるんだ!」と言いながら、実はそんなに好かれていない男性って。

男性には、2割増しのお世辞を言ってあげる

さて、男性がおバカさんだということが理解できたところで、男性の扱い方についても考えてみましょう。

男性が、自分自身に対してかなりの“自惚れ”をしていることはすでに指摘しました(細かいことをいうと、この傾向を心理学では「過剰確信効果」とか「平均点以上効果」などと呼んでいます)。

基本的に男性は自惚れ屋さんですから、もしお世辞を言ってあげるのであれば、「ちょっと大げさかな?」と思うくらいのレベルがちょうどいいでしょう。小さなお世辞や、微妙なお世辞だと、気づいてもらえない可能性があります。お世辞を言って男性に喜んでもらいたいなら、2割くらい大げさにやらないとダメ、というルールを覚えておきましょう。男性の自己評価はそれくらい高いのです。

たとえば、42歳のエンジニアの男性に、「○○さんって、若く見えますよね。40歳くらいに見えます」とお世辞を言ってあげたとしましょうか。たしかにお世辞ではあるものの、「たった2歳しか若く見えないのかよ!!」と逆に憤慨されてしまう危険性もないわけではありません。

こんなときには、もう、どーんとお世辞の大盤振る舞いをしてあげて、「○○さんって、若いですよね? 32、33歳くらいですか?」と言ってあげたほうがいいでしょう。男性は、それくらい自惚れているはずですから、「ちょうどいい感じ」に受け止めてもらえるはずです。

お世辞の注意点2つ

ただ、お世辞には2つ注意点があります。一つは誰かれ構わずお世辞を言っていいというわけではないということ。どうしても友好的に仕事を進めたい相手や尊敬している相手、企画を通したい相手などを選んで戦略的に賢く、が基本です。そうでなければ、自惚れ傾向のある男性たちはますます「俺って天才」状態になってしまいます。

もう一つが褒める内容です。たとえば「深夜まで働いてすごい熱意ですね!」などと言ってしまうと職場の長時間労働が助長されかねません。お世辞を言う内容は、そのお世辞によって強化されても問題がない点を選びましょう。

【参考文献】
・Lustman, M., Wiesenthal, D. L., & Flett, G. L. 2010 Narcissism and aggressive driving: Is an inflated view of the self a road hazard? Journal of Applied Social Psychology ,40, 1423-1449.
・Barber, B. M., & Odean, T. 2001 Boys will be boys: Gender, overconfidence, and common stock investment. Quarterly Journal of Economics ,Feb, 261-292.
・Fletcher, G. J. O., Kerr, P. S. G., Li, N. P., & Valentine, K. A. 2014 Predicting romantic interest and decisions in the very early stages of mate selection: Standards, accuracy, and sex differences. Personality and Social Psychology Bulletin ,40, 540-550.