リモートワークや出勤者の削減が進む中、2020年度の新入社員たちはどんな働き方をしているのでしょうか。今回は、原田曜平さんが新社会人4人を招いてZoomによるオンライン座談会を開催。現在の状況から就活時の思い、今後のキャリアに対する考え方までを聞きました。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Tomwang112)
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Tomwang112)
【座談会参加者】
Aさん/IT系企業でオンライン研修中。女性
Bさん/人材サービス企業でオンライン研修中。女性
Cくん/動画配信サービス企業で毎日出勤中。男性
Dくん/人材サービス企業で在宅勤務中。男性

出社組からは在宅勤務をうらやむ声も

【原田】今日集まってくれた人は全員、今年(2020年)4月に入社したばかりだね。コロナによる緊急事態宣言の中で社会人生活をスタートしたわけだけど、皆、今はどんな働き方をしているのかな。

【Aさん】自宅で、オンライン会議サービス「Zoom(ズーム)」を通して研修を受けています。まだ配属されていないし通勤もしていないので、あまり働いている実感がありません。時間にも余裕があるので、今は学生から社会人へのゆるやかな移行期間という感じです。

【Bさん】私もZoom研修を受けている最中です。満員電車の通勤がないのは楽でいいですね(笑)。「家に一人でいるのがさびしい」って言う友達もいますが、私は特に不安や憂うつは感じていません。

【Cくん】僕はもう仕事を始めていて、毎日ガッツリ出社しています。同期も皆同じで、夜9時頃まで残業するのも当たり前。通勤もそうですが、職場でもわりと密集して働いているので「もし感染したら……」って不安です。その点では会社に対して不信感がありますね。在宅勤務の人がうらやましいです。

【Dくん】僕は在宅勤務ですが、正直つらいです。今は営業職への登竜門みたいな感じでテレアポから仕事を始めていますが、自宅で一人電話をかけ続けるのはきついですね。職場だったら隣の席の人と励まし合えるのに、と思います。

会社説明会よりOBを信用する若者たち

【原田】オンライン研修、在宅勤務、通常出社といろいろな状況の人がいるんだね。研修組は比較的気楽みたいだけど、在宅勤務のつらさや出社への不安を感じている人もいる。いずれにしても皆、今の働き方は就活時に思い描いていた社会人生活とは違うよね。どんな思いがあって今の会社に入ったのかな?

【Aさん】「企業規模に関わらずやりたいことができるところへ行こう」と思って今の会社に決めました。実は私は“就活ガチ勢”で(笑)、周りの人よりかなり早めにエンジンをかけてがんばっていたんです。最初は大手企業を狙っていたんですが、落ちまくって早々に理想が崩れたおかげで、早めに現実を見ることができました。大手に行きたいっていうのは単なる憧れだったなって。

【Dくん】僕はもともと体育の先生を目指していたので、同じように人の成長を助ける仕事をしたいと思って人材サービス企業を志望しました。今の会社を選んだのは、求職者のことをきちんと考えていて、実際に利用者の離職率も低かったからです。

【Cくん】僕は20代からどんどん仕事を任せてもらえる企業に行きたかったので、昭和体質や年功序列型の企業は避けて、ベンチャーに絞って就活しました。その中で今の会社に決めたわけは、中途採用者が多くて他社で面白いことをやっていた人がたくさんいたから。でも、今はまだ同期や先輩と仲を深める機会がなくてちょっと残念です。

【Bさん】私も、若手の時からガツガツ働けるところがよくてベンチャーを目指しました。「自分がこのサービスを開発した、育てた」って実感したかったので、それが実現できそうなミドルベンチャーに絞って探したんです。今の会社は、面談で尊敬できる人が多かったのと、キャリアも人種も多様な人がいて面白そうだなと。あと、お給料がよかったのも決め手になりました。

就活生たちは面接官のどこを見ているか

【原田】なるほど。でも、就活生が企業の体質や実際の社風を見抜くのは難しいよね。その辺はどんな工夫をした?

【Bさん】面接官の姿勢をよく見るようにしていました。私の話を途中で否定しないで傾聴してくれる、表情が硬くなくて友達のように話してくれる、そういう会社を選びました。

【Dくん】僕はOB訪問アプリ「Matcher(マッチャ−)」を使って、積極的にOBに会いました。今の会社に決めたのは、会った4人全員が楽しさもやりがいもあるって言っていたから。金融系の企業にも就活しましたが、OBが「給料はいいけど人間関係が悪い」って言っていたのでやめました。OB訪問は、実際にそこで働いている人からぶっちゃけ話を聞けるので、会社説明会より信用できますね。

「新人はまずテレアポ」は昭和的すぎる

【Cくん】僕は転職系の口コミサイトをよく見ていました。辞めた人だからできるぶっちゃけ話が載っていて、すごく参考になりましたね。正直、今の会社は働き方や雰囲気はそんなに評判がよくなかったんですが、若手の裁量権が大きいということだったので決めました。

【Aさん】私はTwitterで業界別の就活アカウントをチェックしていました。実際にその業界で働いている人が発信しているので、各社の評判やイメージなどをつかめて便利でしたよ。私はとにかく「会社大好き」「同期Love」みたいな雰囲気が嫌いなので、まずTwitterで会社の雰囲気をざっくり把握してから、OB訪問で確認するようにしていました。

【原田】今の若者にとっては、会社の雰囲気がかなり重要な決め手になっているんだね。実際に入社してみて、今は会社や仕事をどう思っているのかな。

【Dくん】今はコロナの影響で仕方がないかもしれないけど、このまま自宅でテレアポの仕事が続いたら嫌ですね。このような情勢下で電話した相手からきつく当たられることもあるんですが、それも含めて「新人を鍛える」みたいな発想でやらせているんだとしたら昭和的すぎる。メールでアプローチしている同業他社もあるのにって不満に思っています。

入社前後のギャップに戸惑いも

【Cくん】入社してから知って驚いたのは、初任給の振り込みが5月末だったこと。最初の給料は4月末にもらえると思っていたので。それと、ベンチャーを選んだのは自分自身ですが、今になって大企業に入った人がちょっとうらやましくなっています。インスタを見ると在宅でオンライン研修を謳歌している人が多いのに、僕は通勤して3密の状態で働かされて……。

【Aさん】私は転職前提で入社したというか、最初の会社である程度の知識をつけたら次へ行こうと思っていました。でも、コロナ禍で転職のハードルがすごく高くなっているみたいで、小売業に就職した友達の中には「給料がもらえない、転職先も見つからない」っていう子もいます。だから今は、安定したお給料をもらえているこの仕事を手放しちゃいけないのかなって思い始めています。

【Bさん】それは私も思っています。友達の中には、コロナで業績が悪化したせいか入社前日に内定が取り消された子もいました。ひどいなと思うのと同時に、そういうことをしない自分の会社に感謝の気持ちが湧きました。

「コロナ後は能力のない人は淘汰される」という危機感

【原田】今の若者は会社への帰属意識が薄いと言われているけど、コロナの影響で、Aさんのように意識が変わる人も増えているのかもしれないね。皆は今後のキャリアについてどう思っているのかな?

【Cくん】僕は就活の時から転職ありきで考えていたので、今も帰属意識はまったくないです。これはキャリアのワンステップで、結婚もしたいから最終的にはやっぱり安定した大企業に行きたい。一方で20代は挑戦する時期だと思っているので、今のうちに海外も含めていろいろな仕事に挑戦したいです。

【Dくん】僕も帰属意識はありません。今の会社は早くからチームリーダーを任せてくれるので、次でマネジャー職につけるように自分の市場価値を上げていきたいですね。ただ今回のコロナで、今後は能力のない人は淘汰されるだろうと強く思うようになりました。今がんばってスキルを上げておかないと、と思っています。

【Bさん】私も20代のうちに事業開発から運営までの一連の流れを経験しておきたいです。私はオンラインで就活生の相談を受けているんですが、来年は新卒も本当に厳しい状況です。2021年卒は去年だったらまだ採用期間なのに、今年はもう締め切っている会社も多いんですよ。22年卒では、6月からのサマーインターンが実施されるのかどうか不安がっている子が多いです。

意識を変えないといけない局面に

【Aさん】私は、コロナの影響でこれまで常に持っていた転職カードを切るのが難しくなって、次のキャリアが見えなくなりました。今の会社で何十年も働こうと思っていなかったので、何とか気持ちを切り替えなきゃ。自分の意識を変えなきゃいけない、そんな局面に立たされた気がしています。

【原田】データによれば、去年は文系女子の6割が第2志望までの会社に合格しているそうなんだ。でも、今の就活生はコロナの影響でかなり厳しい状況にある。それは転職も同じで、今後しばらくはハードルが高い状態が続くだろう。仕事や会社の風土が合わないと思ったら、もちろん辞めるという選択肢もあるけど、転職には今までより慎重になる必要があると思うよ。

コロナの影響で、仕事に対する若者たちの意識にも変化が起こりつつあるようです。内定取り消しなどが起こる一方、余裕のある企業ではオンライン研修や在宅勤務が行われ、ここに来て企業の体力の差を実感している若者も少なくありません。また、業績は好調なものの、この状況下で通勤も出社も通常通りという方針に不信感を抱いている若者もいます。今後、若者に選ばれる企業であるためには、コロナにどう対応したか、新入社員の不安やつらさにどう寄り添えるかといった点も重要になってくるのではないかと思います。