どこにも遊びに行けない、前代未聞のゴールデンウィークが始まります。せっかく家族全員が顔を揃える休日です。ゲーム三昧、YouTube三昧になってしまった子どもたちを画面から引きはがしましょう。家族みんなで楽しめて、ちょっと頭が良くなるかもしれないおススメのボードゲームを、国内最大級のボードゲーム専門店「すごろくや」社長の丸田康司さんに聞きました。

お父さんではなく、お母さんが選んで

新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛になり、家で過ごす時間が増えたので、ボードゲームに関心を持つ人は増えています。テレビ、映画、テレビゲームなど、さまざまなエンターテインメントがありますが、ボードゲームほど年齢を超えて全員が遊べるものはありません。しかも子どもたちにとっては、ゲームのルールや順番を守ること、論理的な思考、先々を考えた運用、優先順位付け、取捨選択など、学校ではなかなか教わらないことを学ぶ機会になります。

ボードゲーム専門店「すごろくや」の丸田康司さん
ボードゲーム専門店「すごろくや」の丸田康司さん

ただ、「ボードゲームなら何でもいい」というわけにはいきません。人によって、「楽しい」と思えるゲームは違うので、家族それぞれの個性を見て、お母さんが選ぶとよいと思います。実は、「お父さんが買ってくるゲーム」は、ほかの家族には難しすぎたり、おもしろくなかったりと、なんだかズレていることが多い。「うちの子だったらこれは好きそう」「家族全員楽しめそう」といった想像力は、女性の方が長けているようです。

大人も本気で楽しんで

子どもがいる家族だと、子どもと「遊んであげる」という発想になりがちですが、ぜひ、大人も含めた家族全員が楽しめるものを選び、大人も本気で楽しんでください。ボードゲームにはたくさんの種類があるので、必ず、全員が楽しめるゲームがあるはずです。一見子ども向けのように見えても、大人が楽しめるものがたくさんあります。未就学児も一緒に楽しめるものもありますが、ここでは、小学生以上の子どもを想定して選んでみました。いくつかご紹介しましょう。

遊べば遊ぶほどルールが“進化”

ゾンビキッズ:進化の封印
2人~4人用 所要時間の目安:15分
ゾンビキッズ

ボードゲームは、順位や勝敗を決めるものばかりではありません。参加者全員が協力してゴールを目指す「協力型」のものもたくさんあります。「ゾンビキッズ:進化の封印」はそんな協力型ゲームです。勝負で負けるとスネてしまうお子さん(や大人)と遊ぶのにもいいでしょう。

参加者は、ゾンビの大群が押し寄せてきた「僕らの学校」を守るヒーローです。教室や校庭のマスを移動しながら、突然湧き出るゾンビを退治し、協力して4つの校門を施錠することを目指します。

このゲームは、「進化」するところがミソ。ゲームが終わると、「進行チャート」にシールを貼っていき、シールがたまると、同封された13通の「進化の封筒」の1つを開けることができます。中にはカードが入っていて、ゾンビがさらに狂暴になったり、ヒーローが特殊な能力を授かったり。遊ぶたびにゲーム内容が進化するのです。1ゲームは15~20分で終わるので、毎日何度も遊んでシールを貼っていきたくなります。

「キッズ」とありますが、子ども向けのゲームというわけではなく、子どもから大人まで幅広い年齢層におすすめです。また、誰か1人が持っていれば、Zoomなどのビデオ通話を使って遠隔の人とも遊べます。「サイコロをコップに入れておき、自分の番の人は『○回振って』と指定する」など、少し工夫は必要ですが、こうした遊び方もおもしろいと思います。

上がるとスッキリ! 女性好みの“夜通しゲーム”

ラミィキューブ
2~4人用 所要時間の目安:20分
ラミィキューブ

これは僕が「夜通しゲーム系」と呼んでいるジャンルのゲームです。運と実力(戦略)のバランスが絶妙で、負けたとしても、次は勝てそうな気がして何度もプレイしてしまいます。70年も前からある人気ゲームで、世界大会が開かれるほど。子どもから大人までじっくり遊べます。

手持ちの色番号タイルを、3枚以上の「同じ色で連番」か「同じ数で違う色」の組み合わせを作って場に出していき、手持ちがなくなったら勝ちです。いろんなパターンをシミュレーションして、うまく手持ちがなくなるとすっきり。女性に好まれる傾向があるゲームです。

見た目に反して、実は高度で深みのあるゲーム

ねことねずみの大レース
2~4人用 所要時間の目安:20分
ねことねずみの大レース

小学校低学年のお子さんも一緒に遊べます。サイコロを振って自分の4~5匹のねずみを動かし、追いかけてくるネコにつかまらないよう、たくさんのチーズを集めます。遠くまで進んでから部屋に逃げ込めば、より大きなチーズがもらえます。

危険を冒して大きなチーズを狙うか、小さいチーズを確実に取るか。戦略や駆け引きに、大人も熱中してしまいます。見た目がかわいらしいので、敬遠する男性がいるかもしれませんが、実はかなり深みのある、高度なリスクマネジメントのゲームです。もちろん、大人も子どもも、そんなことには気付かず楽しく遊んでしまうんですけどね。

日本では、お父さんが好きではなさそうな、見た目や設定がかわいらしいものが、家族向けとして全然売れないんですよ。そこは、海外とまったく違います。「剣と魔法と戦士」みたいな設定だと、お父さんが食いつくんですけど(笑)

お父さんもハマる

街コロ
2~4人用 所要時間の目安:30分
街コロ

街コロは、「剣と魔法と戦士」ではありませんが、お父さんも好きだと思います。モノポリーをご存じの方は、すごろくの場面こそありませんが、ゲームを遊んだときの感覚は似ていると感じられるかもしれません。

「ショッピングモール」「森林」「カフェ」など、さまざまな施設のカードを“購入”しながら、自分の街を発展させていきます。サイコロの目に応じて、手元の施設カードから大小の収入が得られ、それを原資に新たな施設カードが購入できます。お金を貯めたり、大きく稼いだり、お金や施設カードを奪い合ったりしながら、規定の大型施設4つの完成を目指します。

小学校低学年くらいだと、一緒に楽しむのは少し厳しいというお子さんもいるかもしれません。中学年くらいからがいいでしょうか。ただ、大人にも歯ごたえがあるゲームなので、普段あまり子どもと遊ばないようなお父さんでもハマると思います。

図形好きにはぴったり

タイニーパーク
2~4人用 所要時間の目安:10分
タイニーパーク

図形好きな大人や子どもにおススメなのが、遊園地の設計がテーマの「タイニーパーク」です。さまざまなアトラクションが描かれたサイコロ5つを振り、対応するアトラクションのパズルピースを配置して自分の敷地を埋め尽くすゲームです。

1回にパズルピース1つしか取れないので、大きなピースを狙うか、小さいものを取るか考えないといけません。また、一度パズルピースを敷地に配置したら、後で動かしたりできないので、無駄なすき間を作らないよう、計画的に配置していく必要があります。

これも、小学校低学年くらいだと、ちょっと難しいかもしれません。でも、お母さんが「めっちゃ楽しいじゃん!」とハマることが多いゲームです。

低学年の子どもも「計画」の楽しさ学べる

ファブランティカ
2~5人用 所要時間の目安:25分
ファブランティカ

「ファブランティカ」は、6歳くらいから楽しめます。森なら馬、砂漠ならラクダなど、手元にある「乗り物カード」を消費しながらコマを進め、塔の中に隠れた、おとぎ話の登場人物を探します。参加者の誰かが塔に到着すると、中の人物をみんなで確認しますが、すぐに再び塔がかぶされて、別の場所に移動させられてしまいます。どこに誰がいるのか、なかなか覚えていられません。

手元に残っている「乗り物カード」を見ながら、「確かあそこには私が探している“魔法使い”がいるから、このカードとこのカードを使ってこんな経路で行こう。その後、近くに“お姫様”がいるハズだからそこに行って……」などと、計画を立てていると、狙った塔を誰かが動かしてしまったり。任務をこなしていく達成感と、予想外のことが起こるドラマが楽しいゲームです。

「こうやってこうすると、こうなるぞ」という計画立てって楽しいんです。そのエッセンスを盛り込みながらも、低年齢の子どもも楽しめるので、とてもよくできたゲームだと思います。

ちなみに日本の親御さんは、こうした「記憶モノ」の要素があるゲームに苦手意識を持つ人が多いんですよね。でもこうした名作のボードゲームは人並の記憶力を想定して作られていますので、誰もが楽しく遊べるはずです。

感受性のゲーム

ディクシット
2~6人用 所要時間の目安:30分
ディクシット

これは、感受性のゲームですね。意味深で、かつ不思議なイラストが描かれたカード84枚を使います。交代で務める「語り部」役が、自分の手札の中から1枚選んで、そのイラストから連想する「印象ワード」をみんなに伝えます。これを聞いて、語り部以外の人は、複数のカードの中から、語り部が選んだカードを当てるのです。木村拓哉さんがテレビ番組で「好きなゲーム」として挙げたそうです。

このカードが、なかなかよくできていて、例えば、牢獄なのに豪華なじゅうたんが敷かれていて、そこにいる男性は笑顔で安らかな表情をしている。見る人によって、異なる印象を受けるイラストばかりです。「この人は、多分こんな絵を見てこんな風に感じるんじゃないかな」と推測しながら楽しむゲームなので、「誰にでもおススメ」ではないかもしれません。僕はよく、「女の子なら6~7歳から楽しめるけど、男の子なら12歳以上かな」と言っています。

万能のゲームなんてない!

誰にとってもおもしろい、万能のゲームはありません。遊ぶ人数や参加者の年齢、好みや性格によって、合うゲームは違うんです。でもボードゲームは、パッケージやルールを見ただけでは面白さがわからないことが多い。できれば、詳しい店員がいるお店で、家族構成や好みなどを伝えて相談に乗ってもらうのがいいでしょう。

ただ、今は新型コロナウイルス対策で、店舗で相談するのは難しいと思います。僕が書いた『おうちでボードゲーム for ママ&キッズ』などの書籍は参考になるでしょうし、「すごろくや」では、インターネットの「おすすめボードゲームのリクエスト条件フォーム」をご用意しています。遊ぶ人数や年齢、価格帯、「気軽に楽しく」「じっくり集中」などの集中度などを記入すると、スタッフがおすすめのボードゲーム候補をメールでご提案しますので、活用してもらうとよいと思います。