気になるたるみやシワを治療できる美容クリニック。しかし、選び方を間違えると効果が見られないどころか、不幸な事故が起こることも……。美容クリニック選びに失敗しないための3つのチェックポイントを、皮膚科専門医の慶田朋子先生が教えます。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/kazuma seki)

キャッチーな価格に惑わされないで

はじめての美容クリニック選びで失敗しないために覚えておきたい1つめのポイントは「価格が安すぎないかどうか」。美容クリニックの施術料金には、医師や看護師、場所、機材の確保のほか、リスクへの対応などを踏まえた適正価格があります。つまり、安すぎる価格には、何かしらカラクリがあるのです。

特に、広告で表示されているキャッチーな価格は“客寄せパンダ”のようなもの。実際にクリニックを訪れると、不要な施術をすすめられたり、「あなたの場合、こっちのほうが効果があるから」などとカウンセラーの話術に乗せられ、結局は広告表示価格よりはるかに高いものを契約させられたりすることがあります。実際に、ほうれい線をなくしたかった30代前半の女性が不要な製剤を過剰に注入され、皮膚に凹凸が出てしまい、私のクリニックに「何とかしてください」と駆け込んでくるケースもあります。また、20代でフルフェイスリフトの手術を受けてしまった女性も、今までに数人ご相談にみえました。どう考えても手術適応はありませんから悲しくなります。

安すぎる価格には理由がありますし、自信のある医師は押し売りをしません。美容クリニックを選ぶときは、価格だけで判断しないことが大切です。

誰がカウンセリングをするか確認を

2つめのポイントは「医師がカウンセリングを行うかどうか」。過去に受けた施術や病歴を確認する「問診」は別として、本来は医師がカウンセリングを行い、一人ひとりにベストな診立てを行うものです。カウンセリングでは、施術の適応があるかどうかを見極め、施術が必要な理由や、施術のメリットとデメリット、考えうるリスクなどを説明しますが、私のクリニックでは初診の場合、20~30分かけてカウンセリングを行います。看護師の問診も丁寧に20分くらいかかるので、初診の患者様はカウンセリングだけでも1時間半、同日に施術までご希望の場合は2時間半~3時間のお時間を取っていただいています。

しかし、クリニックの中には、医師ではなく、カウンセラーがカウンセリングを行って施術内容を決め、医師は3分で決まった施術の説明を行うだけ、というところも。経営的に効率が良いのは明らかです。でも、一人ひとりの適応やリスクを考慮したうえで、施術の診立てができるのは医師だけです。カウンセラーが治療方針を決め、同意・契約まで行い、医師の診察は短いというクリニックには注意しましょう。

医師の経歴と資格を要チェック!

3つめのポイントは「医師が皮膚科もしくは形成外科の専門医かどうか」。クリニックのホームページで医師の経歴をチェックし、「日本皮膚科学会認定皮膚科専門医」あるいは「日本形成外科学会認定形成外科専門医」と書かれているかチェックしましょう。学会の所属ばかり羅列している医師は要注意です。

また、大学で6年間、きちんと研修を行っているかどうかも重要なポイント。卒業してすぐ、美容クリニックに就職した人に、基本の皮膚病診療ができるとは思えません。皮膚がんや膠原病の見極め、皮膚の炎症性疾患の診察などをできない人が、皮膚科を運営していることもあるのです。

レーザー治療など美容医療の手技自体は比較的簡単ですが、その施術を行っていいかどうかを見極めるために、医師は何年も勉強しています。それが医師の責任ですが、残念ながら、そうした真摯な気持ちや医師としてのプライドがない人も多いのです。実際、皮膚がんを見落とされ、何度もCO2レーザーを照射されて転移し亡くなるなど、不幸な事故も起きています。

美容医療は、適切に受けていただけば、魅力を高め、健康的で若々しく年齢を重ね、前向きな気持ちになれる素晴らしい面があります。でも、迷ったらしなくてもいいものでもあるのです。もしも受けてみようと一歩を踏み出すのであれば、信頼できる医師を探すことが大切です。まずは、クリニックのホームページなどをチェックし、真剣に美容に取り組んでいる医師を探してください。そのうえで、カウンセリングでの対応や施術方針をもとに、治療を受けるかどうか決めるといいでしょう。

すぐに契約すればキャンペーン価格が適用されるなど、その場の雰囲気にのまれず、一旦家に帰ってもう一度よく考えることも必要です。

前述した3つのポイントを踏まえて、あなたに合う美容クリニックを見つけてください。