私たちはお互いの体について、意外と知らない
妊娠のメカニズム、女性の体やバイオリズムについて、夫婦がお互いにある程度の知識を持つこと。これは、妊活をスムーズに進めるためにも、大事なことでしょう。けれど、女性にとっては説明するまでもない当たり前のことが、男性にとっては「へえ!」と驚く新事実、ということもあるようです。
「たとえば生理について。男性に生理についてのヒアリング調査をしたとき、『生理のとき、女性は経血を尿のように排出している』と思っている男性が結構いたんですよ。女性からしたら、そんなわけないじゃん! って思うでしょうが、そのくらいわかっていないんですよね」と吉川さん。
生理に関しては、こんなエピソードも。
「生理中の女性メンバーにどういう対応をしたらいいか、と男性マネジャーから相談を受けたこともありますが、やはり方向性がトンチンカンなんです。男性脳で考えると、生理の前には何か全女性に共通する兆候があるはずで、それを察知したらこうすべき、という最善策があるはずだ、と。でも、女性に意見を聞くと、そもそも一人ひとり症状は違うし、上司に何かしてほしいとは思ってないからほっといてください、という声が多数派。トンチンカンな上司も決して悪気があるわけではなくて、それだけ男女の体や考え方って違うんだ、ということなんですよね」
女性は男性の体のことを、男性は女性の体のことを、案外知らないものかもしれません。とくに妊活を始めようというときは、「お互いに異性の体については十分な知識がない」という前提に立って話をすることが、すれ違いやギャップを生まないためのコツといえそうです。
カレンダーやアプリでスケジュールを共有
夫婦として一緒に暮らしていても、妻がいつ生理になったかを把握している男性は少ないはず、と吉川さんは指摘します。
「多くの夫婦は、排卵日周辺に合わせてタイミングをとるところから妊活をスタートすると思います。女性の月経周期を男性も知っておくことは、やはり妊活の基本。女性は、基礎体温を測ったり、排卵検査薬を使ったりして月経周期を把握し、妊娠しやすい日がいつかもわかっている。けれど、男性にはそういったリズムがピンと来ていない人も多いと思います。妻からすれば生理がこの日から来たんだから、がんばるのはこのあたりという予定が見えている。でも、男性にとってはそれが突然に感じられます。『明日がチャンスだよ、絶対早く帰ってきて』と言われて、大事な会議があるのに、飲み会の予定だったのに、そんな急に言われても……とギスギスしてしまったりするわけです」
そこで吉川さんがおすすめするのが、トイレにカレンダーを貼っておくこと。
「女性にとっても、生理や排卵日の予定を伝えるのって、気恥ずかしかったりすると思います。カレンダーに印をつけておけば、日常生活のなかで自然と目にしてお互いにスケジュールを共有できます」
夫婦でスケジュールを共有できる妊活アプリもたくさん登場しています。紙のカレンダーを貼る以外にも、妊活アプリ、カレンダーアプリなどから、使いやすいものを選んで取り入れてみましょう。
「2人の妊活」を意識できる習慣をプラス
妊活では、どうしても女性の負担が増えがち。基本的には、通院するのも、薬を服用するのも、女性です。
「男性にできることは少ないけれど、だからといって『俺は何にもできないから』とわれ関せずな態度では、女性はますますつらくなってしまいます。ふたりで妊活を楽しめるような習慣を持つことはとても大切。たとえば、あるご夫婦は、ご主人が毎日ある時間にアラームをセットしておき、アラームが鳴ったらアーモンドを1粒食べる、というふうに決めていたそうです。その時間というのは、妻が排卵誘発剤を飲む時間。『今、彼女は妊活のために薬飲んでるんだな』と、仕事中の夫もその時間を共有して、ふたりの気持ちをひとつにする。いっしょに妊活をしている、と思える習慣をつくるってすてきだな、と感じますね」
クリニックに通院をしている夫婦なら、毎回の通院のことを話し、男性も治療の内容をしっかり把握しておく、というのもよいでしょう。女性だけが頑張る、という構図にならないようにコミュニケーションをとることが大切です。
「妊活をしていると、生理がくることは『リセット』。また今月も妊娠できなかったと落ち込んでしまうことも少なくありません。そして、当然ながらそれを最初に知るのは女性です。落ち込みながら、夫に生理が来たことを伝えるのってつらい。そこで、『生理が来たら、玄関にぬいぐるみを置いておく』『LINEで目玉焼きのスタンプを送る』などと、合図や合言葉のようなものを作っているご夫婦も。直接言葉にしない、ふたりだけのコミュニケーションをつくることで、つらさを乗り越えて2人で支え合える、ということもあると思います」