社長は経営幹部をどこで見つけてくるか
これまでの経歴を活かしてキャリアップを狙うには、ベンチャー・スタートアップ企業などに経営幹部として転職するというやり方もあります。実際、経営者に話を聞くと、「幹部クラスの人材がほしい」という声をよく耳にします。ニーズはたくさんあるのです。しかし、求人サイトなどを探してみても、経営幹部募集の求人広告はなかなか見つけられないのではないでしょうか。
実は経営幹部の募集に関しては、求人広告が利用されることはほとんどありません。なぜかというと、企業が求人媒体を使うのは大量採用の場合に限られるから。経営幹部のようにピンポイントで人材を探しているときは、求人広告は費用対効果が良くないと考えられてしまうのです。そこで使われるのがエージェント。
経営者が、今の自社の幹部に対して物足りなさを感じていることはよくあります。どうにかして新しい人材を入れたいと考えている社長もいますが、現在いる幹部の手前、そういったことはなかなか公にしづらいもの。だから、「社内の人間にわからないように人材をリサーチしてほしい」と、社長が仲の良いエージェントにこっそり頼むのです。
エージェントを利用して、希望に合った求人を紹介してもらうというのが最も効率が良いやり方ではあると思いますが、経営幹部を目指すには、他に手段がないわけではありません。そこで、今回は経営幹部として転職するための方法をいくつかお教えしたいと思います。
1.資金調達のニュースを見逃さない
ベンチャー・スタートアップの企業が資金調達をしたというようなニュースを、いろいろなところでよく見聞きすると思います。資金調達に関する情報は大きなチャンスになることが多いので、要チェックです。資金調達に成功したということは、つまり人材も増やそうとしているということ。求人募集が表立って流出する前の先を読んだ積極的なアクションが命運を分けることになるかもしれません。情報収集は怠らないようにしましょう。さらには、そういった資金調達のニュースを事前に知っておけると◎。そのためには、エンジェル投資家やVCのネットワークもあると良いでしょう。
2.現在の経営幹部について調べる
気になる企業の現在の幹部構成を調べてみましょう。幹部層の顔ぶれや仕事ぶりを知ることで、経営レベルの視点が養われ、「この企業はここのセクションが弱そう」などといった課題やウィークポイントが見つけられるかもしれません。ウィークポイントがわかれば、「自分のこの能力が役に立つ」というアピールができます。逆に業績を上げているセクションを持つ企業には、「自分の経験を使えば、さらに業績に貢献できるかもしれない」というアプローチをすることもできる。周りができないことが自分にはできるという説得ができなければ、経営幹部にはなれないので、人脈やメディアなどを使って企業の幹部情報を得ておくことも大切です。
3.過去の友人や知人とコンタクトをとる
学生時代の友人や知人などにコンタクトを取って、採用のニーズを聞いてみるという方法もあります。昔の縁が思わぬ展開に発展することはよくある話です。私は、同窓会の幹事を務めたことかがきっかけで、15年ぶりに旧友と再会し、結果としてベンチャーの幹部に転職した方を知っています。幹事を務めるのははっきり言って面倒なことも多いですが、幹事をすると、いろいろな情報が集まってくるというメリットもあります。
また、普段からツイッターやフェイスブックなどのSNSを使っている人は、転職を考えていること、自分にはどういったことができるのか、どんなことがやりたいのかを書いてアップしてみるのも良いと思います。その際は仕事のことだけでなく、プライベートのことも記しておきましょう。例えば、産休・育休を経て仕事に復帰した経験がある場合はそのこともお忘れなく。小さいお子さんが2人以上いながら仕事を続けている人は、効率よく仕事を進めることができる有能な人が多いので、高く評価されるようです。思いがけない友人や知人から声がかかることがあるかもしれないので、躊躇せずに転職の意思をオープンにしてみましょう。
4.勉強会などに参加する
勉強会や研究会に出かけてみるというのも、ひとつの手です。最近ではスタートアップ系のイベントはあらゆるものが行われていて、むしろ顔を出しきれないくらいです。興味のある企業の人の参加が事前にわかっている場合は、その人と接触できるように努め、求人について質問してみたり、自分の売り込みをしてみたりしてください。その企業に転職するしないは別にして、誠意ある交流を心がけておけば、のちのち、実のある人間関係を築けます。その人や主催者の方の連絡先をお聞きして、翌日にでも感謝のメールを出すことを忘れないように。そういった小さな行動の一つひとつが、転職へと繋がることがあります。
5.交流会などをセッティングする
異業種交流会でも情報を得るチャンスはあると思います。しかし、異業種交流会は比較的若手の層が参加することが多いので、参加者側よりも主催者側に回ったほうがさまざまな情報を得やすく、メリットにつながるかもしれません。
また、交流会では、「一人の人ときちんと交流を持つ」ということに注力したほうが賢明です。人が一堂に集う場では、できるだけたくさんの人と知り合いにならなければと焦ってしまうものですが、その結果、実のない時間になってしまうこともあります。たった一人でも、仲良くなれる人、信用できると思われる人が見つかれば、その場に足を運んだ甲斐があったと言えるでしょう。
交流会できっかけをつかむことができたら、その後なるべく早くにその人と会う機会を作ること。せっかくの出会いをただの名刺交換で終わらせるのではなく、その後の人間関係の構築へとつなげていくことで、ネットワークはどんどん広がっていきます。
このように、少し視点を変えればチャンスは至るところに転がっています。受け身の姿勢で待つのではなく、「自分で情報をつかみにいくんだ!」という気持ちで積極的に行動することを心がけてください。