支出を減らすことを目的に家計簿をつけている人は多いのではないでしょうか。多くの家計相談を受けてきた八ツ井慶子さんは、その目的を達成するにはひと工夫必要と言います。支出カットができる家計簿のつけ方のコツとは?
※写真はイメージです(写真=iStock.com/mapodile)

こんにちは、家計コンサルタントの八ツ井慶子です。

みなさんは家計簿をつけていますか?

「この“つけ方”でいいのだろうか?」と、一度くらい悩まれた方は多いのではないでしょうか。

そこで、私のこれまでの家計相談経験を踏まえ、独断と偏見で“つけ方”を考えてみました。いまいちどうつけていいか分からなかった方は、よかったらご参考になさってください。

1.家計簿をつける「目的」をはっきりさせる

家計簿と向き合う前に意識しておきたいのが、家計簿をつける「目的」です。

「家計簿はつけているだけで、家計は何も変化がない」、なんてことはないでしょうか。こうならないためにも、「目的」をはっきりさせておきましょう。目的によって「つけ方」を変えるといいと思います。

家計簿の目的2つのパターンとは

家計簿をつける目的は、おもに2パターンではないかと思います。

①記録
②支出カット(家計の見直し)

「何にいくら使ったのか、把握しておきたい」という方の目的は、まさに「記録」ですね。分かりやすい例です。

また、いくら使ったかを定期的に振り返ることで、その月の予算管理をするといった場合や、やはり支出額を振り返ることで、その後の支出抑制につながるという方もいらっしゃるでしょう。これらのケースの目的は「支出カット」ともいえそうですが、ここでは「記録」として捉えたいと思います。

なぜかというと、「記録」としての家計簿が、その方の支出カットに自然とつながっているためです。家計簿には「記録」以上の情報がない中で、二次的な作用として支出抑制につながっていると考えてみたいと思います。

そして、もう一つの目的が「支出カット」です。

「どうも貯蓄ができない」「何から手をつけていいのか分からない」といった悩みを抱え、家計簿をつけようと試みるケースです。

「支出カット」目的なら正確さは必要ない

こういう方の場合、私の家計相談の経験上、以下のようなステップを考えていらっしゃるようです。

家計簿をつける
→家計を知る(「記録」としての機能)
→その上で、何らかの改善策をとる
→家計を見直す

ところが、家計簿を“正しく”つけることができずに、「家計を知る」前の段階で挫折したり、あるいは、家計を知ったところで、具体的な対策を立てるまでに至らず、結局つけただけに終わってしまうといったケースが多く見受けられます。

「支出カット」をおもな目的とした場合、私は必ずしも“正確な家計簿”は必要ないと考えています。ソコに注力するよりも、お金の「使い方」そのものに注目した方が、支出カットへの近道となるでしょう。

いずれにしても、家計簿をつける目的を最初のステップとして確認しておくことをオススメします。

2.いつまでつけるか、一応のゴールを決めておく

家計簿をつけたことのある“経験者”は非常に多いのですが、継続できている“継続者”は非常に少ないです。つまり、どこかで挫折してしまうのですね。

しかし、「家計簿をつけ続ける」前提に立てば、確かに「挫折」となりますが、一時のモノと捉えれば、挫折ではなく、単に「やめた」といえます。

そもそも家計簿はずーっとつけ続けるものでしょうか。

答えは、人それぞれだと思います。ですから、それをあらかじめご自身で決めておいてみてはいかがかなと思うのです。そして、この点も「目的」によって考え方は異なってくるでしょう。

「記録」として家計簿を捉えるとしたら、基本的にはつけ続けることになります。

以前、ご結婚以来30年以上家計簿をつけ続けているという方にお会いしたことがあります。家計簿をつけないと落ち着かないというほど几帳面な方でした。

家計簿のおかげで自然とムダづかいも抑制することができていらっしゃったとのことです。家計簿を拝見すると、その中身はもはや「家族の歴史」。お金の使い方は、日常生活を浮き彫りにさせます。まさに「記録」です。

ここまでではないにしても、「記録」を重視するのであれば、続けられるだけ続けることが前提になるでしょう。

「ときどき家計簿をやめてみる」効果

ただし、同じ「記録」でも二次的に支出管理に用いている方は、時折やめてみることをオススメしたいです。

なぜなら、できるだけ「記録」を振り返ることなく、常に使い方を安定できるに越したことはないためです。例えて言うならば、いつもレシピを見ながらお料理しているのを、レシピなしでもお料理できるようになることを目指すみたいなイメージです。

なんだかんだ家計簿をつけるには時間と手間がかかります。人生の限られた貴重な時間ですから、時折「記録」を辞めてみて、浮いた時間は有意義に使っていただきたいですし、万が一ムダづかいが増えてしまうようであれば、再び「記録」をつけて振り返ってみればいいです。そのうちにやめる間隔を長くしていって、いずれは家計簿(記録)卒業を目指してみてはいかがでしょう。少なくとも、そうした意識を持って、記録することをオススメしたいです。

すべてのレシートを記録する必要はない

では、「支出カット」を目的とした場合はどうでしょうか。

やはり家計簿をつける「期限」をぜひ設けていただきたいです。私の勝手な考えですが、3~12カ月あたりで設定されてはいかがかなと思います。

このときのポイントは、“正しくつける”ことにこだわらないことです。もちろん正しくつけられることに越したことはありませんが、「目的」はソコにありません。

私の経験上、なかなか貯蓄できない家計のレシートは非常に枚数が多く、すべてを把握するだけで、とても骨の折れる作業であるケースが少なくありません。したがって、いい意味でソコはあきらめて、お金を多く使っていそうな費目を数個取り出して、それらだけをつけるのでもいいでしょう。

3.スマホか手書きか……手段を選択する

家計簿の“種類”を選択します。いまや家計簿ツールはたくさんあります。既製のスマホアプリ、家計簿ソフト、市販の家計簿(手書き)や、独自にエクセルやノート(手書き)に作成する手段もあります。

「記録」を目的として、長く継続させたいのであれば、できるだけ楽につけられるもの、少々の手間はあっても自分の性格に合うモノがいいです。

スマホアプリのおかげで家計簿をつけることが楽になった、という声も聞きます。また、自動で集計してくれるので、結果を知るには重宝します。

デジタル派の一方で、やはり手書きの方がしっくりくるというアナログ派もいます。自由に書き込める自在性が好まれたり、書く作業を通じて、支出を振り返る時間づくりに役立つメリットもあります。

4.目的に合わせた「つけ方」を検討

ここまできて、いよいよ「つけ方」を考えてみましょう。

①「記録」の場合

費目ごとにひたすらつけていきます。集計もしましょう。

「費目」は、自由に決めてOKです。既製の家計簿を用いる場合は、すでにおもな「費目」が与えられていると思います。できるだけそれらの「費目」を活用した方が楽だとは思いますが、カスタマイズできるのであれば、自分の家計に合った費目を作成してもいいでしょう。

例えば、コンビニでの買い物が気になれば、「コンビニ」という費目があってもいいでしょうし、化粧品代や美容院代、マッサージも含めて「美容」でもいいでしょう。「自己投資」という費目でジムや習い事、書籍代を合わせてもいいと思います。

ただし、気を付けていただきたいのは、「貯蓄(積立)」と「保険料」です。「貯蓄(積立)」を支出として計上している家計簿を、これまで何度も見たことがあります。これは使ったお金ではありませんので、支出計上しないようにしましょう。

また、「保険料」と一口に言っても、貯蓄目的と保障目的の保険とがあります。前者の場合(個人年金保険や学資保険。貯蓄目的の終身保険など)の保険料も、支出に計上しない方がいいです。

なお、同じ「記録」目的でも支出管理につなげている方の場合は、すべての費目をつけなくてもいいかもしれません。支出抑制につなげたいと思う気になる費目だけをピックアップして、記録するのもアリです。

いずれにしても、時々やめてみるということはぜひ取り入れてみてほしいと思います。

「支出カットできる家計簿」のつけ方とは

②「支出カット」の場合

支出カットを目的とした場合の“つけ方”は、ひと工夫いるところです。家計簿は、基本的に「何」を「いくら」で買ったのかを明記していくもの、つまり「記録」としてのフォーマットになっています。ですが、「支出カット」を目的とした場合、大事なのは「何」を買ったのかではなく、「なぜ」買ったのかです。

「買った」という「結果」があって、その結果を変えたい、つまり、支出カットをしたいのですから、その「原因」を知ることが改善の第一歩です。「原因」が分かれば、具体的な改善策につなげられます。

既製の家計簿を使用する場合は、余白欄などを利用して、「なぜ」買ったのかをメモのように書いていくといいでしょう。もし、独自に家計簿を作成するというのであれば、1冊ノートを準備していただいて、日記として活用することをオススメします。「なぜ」買ったのか、買った後に後悔したか、満足したか、日記のように記していきます。毎日でなくて構いません。書く時間を捻出するのは大変かもしれませんが、「いまだけ(一応のゴールまで)」、がんばってみてほしいと思います。

“週1のレシート習慣”が支出を変える

日記以外に、レシートを費目ごとに集めて(クリップやホチキスで留めて)集計すれば、それが家計簿代わりになります。

そして、すべてでなくて構わないので、数枚のレシートを取り上げて、購入したアイテム一つひとつを振り返り、買ってよかったと思ったら○、買わなければよかったと思ったら×を書き込んでいきます。

レシートは1週間くらいの分をためておいて、週末にまとめて振り返るくらいでいいと思います。ひと月たったら、ひと月分をまとめて振り返り、翌月に向けての「目標」作りに役立てるといいでしょう。

例えば、会社帰りに寄り道をしてムダな買い物をしてしまう傾向があれば、帰り道を変えるとか、ストレスで甘いものをつい多く買ってしまうのであれば、ここまでにするといった具体的な予算を立てたり、ないと思って買ったら実は家にあったなどは、事前にストック確認を必ずするように心がけたり。

こうした具体的な「原因」が分かれば、その次の具体的な改善策につながるものです。

いずれは家計簿を卒業するのが理想

既製の家計簿を使用する場合は、(レシート作業はしつつ)気になる費目だけ書き込めばいいでしょうし、レシートを貼り付けたり、あるいは、週ごとや月ごとの「集計」だけを書き込んでもいいと思います。

人それぞれに顔や性格が異なるように、「買い方」にも人それぞれのクセがあると私は思っています。日記とレシートチェックの作業を通して、買わなければよかった、必要なかったと思う買い物を減らしていき、買ってよかった買い物の割合を増やしていくことを目指します。この繰り返しで、お金の使い方を正していきます。

さて、いかがだったでしょうか。

家計簿をつける作業は、結構骨の折れる作業です。やみくもにつけ続けることを前提とせず、目的を明確にし、自分に合ったつけ方を見つけながら、家計改善に役立てていただきたいなと思います。個人的には、最終的にはどなたも家計簿ナシで、お金の使い方が安定してくるといいなと思っています。