平成生まれの若者たちは、結婚後のライフスタイルをどう考えているのでしょうか。育児はどう分担するのか、財布のヒモはどちらが握るのか、苗字はどちらが変えるのか──。大学生5人が思う「結婚、その後」を原田曜平さんが探ります。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Xavier Arnau)
座談会メンバー
塩田 亜多夢くん/慶応義塾大学3年生。強い結婚願望も子育て願望もあり。男性
伊藤 光輝くん/法政大学3年生。結婚も子育ても「ぜひしたい」。男性
富山 連太郎くん/上智大学1年生。将来は結婚も子育てもしたい。男性
田中 雪菜さん/明治大学2年生。結婚はしたいが子なしでいたい派。女性
羽山 未来さん/専修大学4年生。結婚願望も子育て願望もゼロ。女性

子育ては「主体的にやって当たり前」

【原田】結婚すると、交際中にはなかったいろいろな問題が持ち上がってくるんだ。皆は結婚後の生活についてどんなイメージを持っているのかな。例えば子育てはどうだろう。女子は2人とも「働き続けたい、子どもはほしくない」という意見だけど、男子は全員が共働き希望で子どももほしいと考えているね。育児はどう分担するつもり?

【塩田くん】僕は育児をしたいし、2人で平等にやるものだと思っています。僕は昭和の時代の白黒映画を観るのが好きなんですが、そこに登場する育児のあり方には全然共感できません。子どもの世話をするのはお母さんだけでお父さんは座りっぱなしとか、男女の立ち位置が違いすぎてびっくりします。

「育児は2人で平等にやるものだ」と言い切る塩田くん。

【伊藤くん】僕も子育てをしたいです。共働きだから分担するというより、男は母乳をあげたりできないので、自分からできることを探して関わっていかないと、後になって子どもにもそっぽを向かれる気がして。もしそうなったら絶対傷つくと思うから。

【富山くん】僕の両親も共働きで苦労した面もたくさんあったと思いますが、お互い協力して子育てをして楽しんでいたイメージがあります。将来は奥さんと自由な個性を伸ばす育て方をしていきたいです。

【原田】経験者の立場から言うと、子育ては大変だよ(笑)。でも、男子の意識は昭和の時代からかなり変わってきているんだね。育児を「手伝う」という感覚もないし、「男は仕事、女は家庭」という昔の図式は、若い世代では男性のほうから変わりつつあるようだね。

小遣い制ウエルカムな男子たち

【原田】じゃあ次は家計の管理について。財布のヒモはどちらか一方が握るのか、それとも夫婦で完全に分けるのか、考えたことはあるかな?

【塩田くん】僕は完全に奥さんに握ってもらって構わない。僕の父も、母にお小遣いをもらってやりくりしているんですけど、その姿がとても幸せそうなので。結婚したら、自分の収入や時間は全部家庭に費やしたいですね。

「家計管理は奥さんに任せてお小遣い制がいい」と富山くん。

【田中さん】うちも、財布のヒモは母が握っています。でも、私は2人で共同の口座を作って、お互い全額を入れるようにしたいな。お金が必要な時は、報告し合いながらそこから引き出していくようにしたいですね。収入を一元化したほうが、家計が見えやすくていいと思います。

【伊藤くん】僕は奥さん次第ですね。金銭感覚がしっかりしている人なら、給料の何割かを渡すのでやりくりしてほしい。金遣いが荒い人なら、生活費用の口座に互いの収入の何割かを入れて、趣味の費用はそれぞれで出すというのが理想です。

【富山くん】僕は食事の買い出しなど奥さんにやってもらうことが多いと思うので全部奥さんに任せたいです。自分は小遣い制で食べるものに困らない月2万〜3万、いや5万円ぐらいもらえればいいかな。足りない時はプレゼンします。

【原田】2万〜3万円だと、富山くんが好きなコムデギャルソンの服は買えないよ。日本のサラリーマンのお小遣いは、月平均で3万円台。かなり少ないけど、皆その中でやりくりしているんだ。

夫婦別姓には賛成の声が多数

【原田】じゃあ次に、名字はどう? 日本の制度だと、結婚後は男女のどちらかが名字を変えなければならないよね。夫婦別姓を希望する声も上がっているけど、まだ実現には遠いようだね。

【塩田くん】僕は夫婦別姓に賛成です。別姓じゃなきゃ結婚しないというわけじゃないけど、名字の統一を強制する意味がわからない。僕はアメリカと日本のハーフなので、そのうち国籍を選択する日が来るかもしれません。でも、どちらを捨てるか、想像しただけで片腕を落とされるような気持ちになります。自分の一部という意味では、名字もそんな感じじゃないのかな。

【田中さん】私は自分の名字が好きじゃないので、ぜひ相手の名字になりたいですね。でも、自分の名字を守りたいと思う人も多いはずです。

【伊藤くん】夫婦別姓についてはOKです。奥さんになる人が変えたくなければ別姓でも全然構いません。ただ僕は、祖父からずっと「伊藤の名を守ってくれ」と言われ続けているので、自分が相手の名字になるという選択肢はないです。

【羽山さん】名字を変えるって結構大きな変化ですよね。ただ、私は両親の離婚後に名字が変わったんですが、新しい人生の始まりみたいで悪くないなと思いました。昔の名字だった時の自分と、今の「羽山時代の自分」を比較できて面白いです。

【富山くん】夫婦別姓に賛成ですが、高校時代の先生は、学校では旧姓、家では現姓を使っていて「それぞれの顔がある」って言っていました。2つの自分を使い分けるのも悪くないのかもしれません。

【原田】意識調査ではまだ、名字を変えたい人と変えたくない人が半々なんだよ。でも、皆は「夫婦別姓という選択肢もあるべきだ」という意見なんだね。若い世代の考え方がこうなら、今後は夫婦別姓の動きが高まっていきそうだね。さて、次は10年後ぐらいの自分の姿を妄想してみてほしい。将来どうなっていたいか、教えてくれるかな。

30代前半には家庭を築いていたい男子

「10年後、子どもの夜泣きを『いいアラームだ』と言えるようになっていたい」と語る伊藤くん。

【塩田くん】結婚して、子どもはわからないけど授かれたらうれしいですね。父に「親って何でこんなに一生懸命子育てするの」と聞いたことがあるんですが、「子どもができると生活は子ども中心になるけど、自分にとって何よりも大切なものができて、そんな幸せなことはないよ」と言われて。僕も自分の両親がそうしてくれたように、子どもに時間をかけて、奥さんをねぎらって、バリバリ働いて家庭を支えたいです。

【伊藤くん】結婚して、子どもはまだ小さくて、夜泣きを「いいアラームだ」と喜んでいる自分でありたいですね。地元の愛知県に戻って家を建てるのもいいな。でも、両親と同居はしませんよ。母が「パス」って言ってるし、奥さんにも気苦労はかけたくないので。

【富山くん】10年後はまだ29歳だから、全然稼げていないだろうし結婚もしていないと思います。残業のない会社に勤めて、ペットを飼って、家での時間を大切にできる生活がしたいです。

仕事や自分の生活を優先したい女子たち

【羽山さん】私は友人たちが結婚していって、きっとご祝儀を配りまくってると思う(笑)。独身のままで子どももいないけど、たくさん働いて稼いで、自分で好きな家を買って、気楽に暮らしていたいですね。

「10年後は独身のまま、たくさん働いてご祝儀を配りまくっていると思う」と羽山さん。

【田中さん】東京で働いていて、結婚したいと思える人に出会えていたらいいな。理想としては30代前半までに出会って、30代後半までには結婚したい。毎日帰るのが楽しみになるくらい素敵な部屋に住んで、愛情が劣化しないように、旦那さんと毎日たくさん話していたいです。

【原田】富山くん以外は10年後には30代か。男子は、30代前半で結婚して子どももいる自分になっていたいということだね。一方、田中さんはその頃に結婚相手を見つけたい、羽山さんは独身で自分の家を買っていたいと。

こうした男女の意識の違いは、理想の相手や結婚後の生活に対してもありましたが、将来像についても同じことが言えるようです。男子が家庭を築いていたい30代前半は、女子にとってはまだまだ仕事や自分の生活を優先したい時期なのかもしれません。これもまた、結婚のミスマッチを引き起こす原因の一つと言えるように思います。