※本稿は『「複業」のはじめ方』(同文舘出版)の一部を再編集しました。
会社を“辞めずに”自立すべき理由
あなたは、好きなこと、やりたいことがあり、将来的には会社に頼らず、できたら自立して生活していきたい。でも、ちょっと待ってください。そうなるためには、「滑走路」が必要です。また、会社から自立するといっても、今、まわりにいる人たちが、助けてくれるかもしれません。
もしかしたら、あなたは会社の人たちに不満があるかもしれません。でも不思議なもので、あまり付き合いのなかった人が、助けてくれたりすることがあるのです。独立志向があり、やりたいことがはっきりしているあなたは、本項の活動を参考に考えてみたらどうでしょうか?
1.毎日の仕事を効率化していく
あなたは、いつか会社との関係を見直したいと考えています。ただし、その日が本当に来るかどうか、今はわかりませんし、焦って決めて自分を追い込まないほうがいいでしょう。
ということは、当分「仕事はきちんとやる」のです。しかし、将来を見据えて、できるだけ効率化して自分の時間を取れるようにする工夫は必要です。早朝型の生活に変えることもいいかもしれません。
また、仕事の効率化とは少し違いますが、「人付き合いの整理」も考えましょう。なるべく、無駄な会社の付き合いを断っていき、夕方以降は自分の時間として自由に使えるように変えていくこと。さらには、逆に「信頼できる仲間」がいないかを探すことです。
多くの場合、会社の中には「同好の士」がいます。それは別の部署の人かもしれません。今後、会社との付き合い方を考える時期に備えて、頼りになる同好の士を探しはじめましょう。
2.自分の身を守るために会社の制度を調べてみる
今すぐ辞めるなんて考えず、まずは「滑走路」をつくりましょう。でも、それができるまでは日々の仕事も頑張りましょう。「そのうちに……」なんて漫然とすごしていてはもったいないので、もちろん活動の準備もします。ただ、そういった自分の活動がペナルティにならないか、会社の制度を調べてみましょう。会社は意外と寛容だったりするかもしれません。そうすれば、焦らずに「滑走路づくり」の時間を取ることができるはずです。
3.「第3の場所」を探す
職場でも家でもない「第3の場所」は、あなたには絶対に必要です。それは、自立した後も利用するからです。
コワーキングスペースのような、月々の契約で、いつでも解約できるものがいいでしょう。まだ、この時点で「自立すること」を条件にしないでもいいと思います。気が変わって、やはり会社を辞めずに両立させようとなった時は、解約するか、もっと別の方法で「第3の場所」を持てばいいからです。
そんな場所に通ううち、そこが「第3の場所」になっていったり、そこで「同好の士」を見つけられたり、何かのきっかけを得られることも少なくありません。
4.ネットで静かに情報収集をはじめる
あなたは将来的に「自立したいという気持ち」を胸に抱いています。いや、そこまで決めつけなくても、「独立志向」があるという表現でもいいでしょう。
そんなあなたには2つの方法があります。「好きなこと、やりたいことをまずは副業として開始」する方法と、「やりたいことを事業化する勉強をはじめる」方法です。この2つのどちらかに絞るか、あるいは両方とも情報収集をすることをおすすめします。
(1)「好きなこと」「やりたいこと」をまずは副業として開始したい場合
あなたは「好きなこと」「やりたいこと」がはっきりしているし、将来的にはできたら自立したいと考えているのですから、もう副業としてスタートしてもいいでしょう。
匿名でできるものがおすすめです。たとえば、ビジネス系のことならば、クラウドソーシング(不特定多数に仕事を依頼するシステム)を利用して、匿名で仕事を請けられます。また、スポットコンサルといって、短時間のコンサル案件を紹介してくれる仲介サービスもあります。
またクリエイティブなこと、たとえばイラストなど、作品やサービスを販売したいなら「ココナラ」というサービスがありますし、写真作品を匿名で販売したいなら、ストックフォトと呼ばれる仲介サービスがあります。また、自分のオリジナル曲を販売できるサービスもあります。クリエイティブなことをやりたいなら、何らかの仲介サービスがありますので探してみましょう。
では、サービス例を紹介していきます。
気軽に使える仲介サービスリスト
クラウドソーシングの大手です。いろいろな案件があります。決して単価は高くありません。あくまで、自分のスキルを磨くため、自分の仕事力がどう評価されるのかを知るためにはじめて、待遇がよくなりそうだったら本格的に取り組むイメージです。
●ビザスク
アドバイザーとして登録すると、いろいろなコンサル案件を紹介してもらえます。コンサル案件といっても、自分の得意な業界のことを、自分の知識や経験を基に話すことを求められることが多いので、そんなにハードルは高くありません。
登録は氏名非公開で可能です。コンサルもスポットコンサルといって1時間が基本です。自分の知識や経験がどれぐらい役に立つのか、社外の人とやり取りすることが、まさに「滑走路」時代のトレーニングになります。
●ピクスタ
カメラでの撮影が好きな人向けの、自分が撮影した写真素材や動画の委託販売を行なうストックフォトサービスです。ただし、クリエイターとして登録するのは、ハードルが低くありません。かなり本気で取り組まなくてはいけませんが、そういう厳しさを知る意味でも挑戦するのはいいことかもしれません。
「スナップマート」や「写真AC」は、もう少しハードルの低い、気軽な写真投稿ができますが、価格的には安いので、トレーニングの意味合いで挑戦するといいでしょう。
自分のつくったオリジナル曲を大手配信ストアに配信してくれる仲介サービスです。登録費がかかりますが、iTunesやAmazonなど世界185カ国以上の配信ストアに配信できるので、レコード会社を立ち上げた気分になります。
これらは登録(登録だけは無料がほとんど)してみて、内容をじっくり吟味することをおすすめします。また、SNSなどで評判を調べてみましょう。あくまで情報収集として登録するところからです。登録する時には「ありたい自分」のニックネームをつくりましょう。
行政の企業支援が充実してきている
(2)「やりたいこと」を事業化する勉強をはじめたい場合
あなたはひょっとして、もっと先の自立を見据えて「滑走路」をつくろうとしているのかもしれません。そんな時は、「事業化」を検討してみたらどうでしょう。別にすぐ起業する必要はありません。起業を視野に入れて勉強し、ビジネスプランコンテストなどを目指すなど、目標を設けるのです。
繰り返しになりますが、すぐ起業しなくてもいいのです。ただ、それを前提に事業計画書などをつくると、自分のやりたいことが事業化できるのか、それで自分が自立してやっていけるのかを、より「自分ごと」として考えることができるはずです。
幸い今は行政が若い世代、シニア世代の起業を支援しています。行政の無料セミナーやスクール情報を見つけて、会社帰りに勉強してみたらどうでしょうか?
東京都が運営する創業情報のウェブサイトです。無料で起業相談ができる公的な施設、多くが無料の起業や創業に関するセミナー・イベント、資金調達の相談場所、インキュベーションオフィス(大学など関係機関と提携した起業支援施設)など、さまざまな支援メニューが紹介されます。まず、この中から、自分が興味を持っていることを探すことからはじめるのもひとつの手です。
●StartupHubTokyo(スタートアップハブ東京)
前述の「東京都創業NET」のウェブサイトに記載されていますが、東京・丸の内にある総合的な起業支援施設です。無料の起業相談や起業に役立つセミナー、コワーキングスペースの利用などさまざまな支援メニューを受けられます。
まだまだある創業の支援窓口
●ミラサポ(地域の創業支援窓口・ビジネスプランコンテスト)
東京だけではなく、各地域に市区町村と民間の創業支援事業者(地域金融機関、NPO法人、商工会議所・商工会など)が連携して運営する地域のワンストップ相談窓口があります。「ミラサポ」という中小企業庁所管で運営しているウェブサイトの、「創業・起業」のコーナーで、「専門家に相談する」から「地域の相談窓口」に行くと、各都道府県の相談窓口が検索できます。
同じく、「創業・起業」のコーナーには、全国のビジネスプランコンテスト情報も載っているので、地元の情報を見てみましょう。
もうひとつ、公的機関の情報収集としては「J‐net21」という、これも中小企業庁所管が運営するウェブサイトがあります。
この中の「起業をする」のコーナーにある、「業種別開業ガイド」がとても充実しています。
たとえば「まつ毛エクステサロンを開く」とか「インテリア・コーディネイターになる」などの業種別に、「なるにはどうすればいいのか」「開業する注意点」「店を開くにはいくらかかるのか」などが、とても具体的に説明されていて、あなたの好きなこと、やりたいことがこの中にあれば、一度読んでおくと参考になると思います。
もちろん、現実はここに書いてあることがすべての人に当てはまるとは限りませんが、大枠をつかんでおくには、とてもいいコンテンツなので、おすすめします。
まだまだ起業は……という人も情報収集に意味あり
ここまで、「起業」という文字が並んでしまい、プレッシャーになってしまったならすみません。あなたはまだ情報収集の段階ですから、「そうか、起業しなきゃ」なんて焦る必要はありません。
ただ、こういう起業に関する公的サービスを知って、他にも頑張っている人たちがいて、それぞれに、いろいろなアイデアを持っているということを「自分ごと」にするのが、将来の自立につながります。
むしろ「起業」より「独立」あるいは「自立」。“自分の足で立つ”ということをイメージしてみるといいでしょう。