35歳は、妊活のターニングポイントともいえる年齢。婦人科系の疾患がなくても妊娠しづらくなり、妊娠のタイムリミットがチラつき始めるころです。35歳からの妊活は、不妊外来への通院も視野に入れて、最短ルートで進むべき! そこで気になるのが、仕事と治療の両立は可能なのか、という問題です。通院回数や通院中の体調のこと、費用のこと、仕事と両立するために知っておきたい疑問の数々に、産婦人科医の月花瑶子さんが答えます。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn)

検査だけでも1~3カ月かかる

不妊治療の特徴は、月経周期に沿って行われる、ということ。検査も例外ではありません。

「不妊治療は、原因となる疾患がないか、体の状態を調べるためのスクリーニング検査からスタートします。問診、超音波検査、血液検査などで、ホルモンの分泌状態や子宮や卵巣、卵管の状態、正常に排卵しているかなどを調べます。月経の時期ごとに検査が必要で、一般的に1周期に3~4回。指定された日に受診ができない場合は、その検査は次の周期に見送らざるを得ないことも。すべての検査が終わるまでには1~3カ月かかります」

ただ、検査がメインの周期にも、医師の指導によるタイミング治療や人工授精は同時進行でできます。また検査のなかには、治療に似た性格を持っているものも。たとえば、子宮と卵管に造影剤を通して、癒着や詰まりがないかをチェックする「子宮卵管造影検査」は、卵管の通過性がよくなり、その後数カ月、妊娠しやすくなるというメリットも報告されています。

「意を決して病院の門を叩いたのに、なかなか治療へ進めないことにイライラされる方もいます。でも、ここはちょっと気長に。月経期、排卵期、黄体期と、月経のリズムに合わせてホルモンの数値も変動します。治療の方針を立てるためには、時期ごとの検査ははずせないものです。検査には少なくとも1カ月以上かかること、またその期間にも妊活はできることをあらかじめ知っていると、余計なストレスを感じずにスタートを切れますね」

約3割の夫婦は原因不明の不妊

ひと通りの検査が終わったら、検査結果、女性の年齢、夫婦のライフプランなどから、治療方針を立てていくことになります。

「半数以上約3割のご夫婦は、検査をしても何も異常がみつからない、原因不明の不妊。治療をしながら、妊娠率が上がる方法を試していくことになります」

一般的には、医師の指導で夫婦生活をする日を決める「タイミング法」、排卵に合わせて精子を子宮に注入する「人工授精」、高度生殖医療である「体外受精」とステップアップしていきます。検査の結果によっては、すぐに体外受精をしたほうがいい、と判断されることも。

「タイミング法や人工授精であれば、1周期あたり1~2回の通院でOK。排卵誘発剤を使う場合は、もう少し通院回数が増えます。費用は、タイミング法なら1周期あたり数千円~1万円前後、人工授精の場合は1周期あたり約2~3万円が目安です」

体外受精では、1周期あたり4~5回通うことに

35歳以上であれば、より妊娠率が高い体外受精も視野に入れて、早めのステップアップを提案されることも少なくありません。

「体外受精になると、ぐっと通院回数が多くなります。クリニックの治療方針によっても異なりますが、採卵や移植などの処置も含めて1周期あたり4~5回以上の通院が必要となることがほとんど。多くは半休をとることで対応できると思いますが、仕事との両立にも工夫がいりますね。費用も30~80万円と高額に。施設ごとに価格が異なるので、事前調査は必須です」

まずはクリニックの説明会に参加

ひと口に不妊治療といっても、体の状態、どんな治療を選択するか、さらにクリニックの治療方針によっても、内容は大きく変わります。

月花先生がおすすめするのは、まず、いくつかのクリニックの説明会に足を運んでみること。不妊治療の流れをつかみ、体外受精の知識も付けておくことは、妊活のイメージをつくるためにも有効です。

「いざ検査を受けようと思っても、まずどこの病院に行ったらいいものか、と悩んでしまう方も多いと思います。多くの不妊治療専門クリニックでは、説明会やセミナーを実施していて、通院中ではない患者さんも受け入れているところがほとんどです。通いやすそうなところをピックアップして、いくつか参加してみるといいでしょう。また、クリニックの説明会への敷居が高いと感じる場合は、まず簡単なスクリーニング検査は通いやすい近くの病院で実施し、体外受精の必要性まで感じる場合に、通院の可能性のあるクリニックの説明会に参加するのも一つでしょう」

情報はネットよりセミナーで収集

セミナーへの参加は、妊活に対する夫婦の意識をすり合わせる効果も!

「治療と仕事を両立するためには、パートナーがどれだけが協力的か、治療に対する理解をしているかも大きなポイント。通院するのは主に女性ですが、男性も助成金の申請をしたり、治療内容を把握して妻の精神的なサポートをしたりと、できることはたくさんあります。

説明会は、女性1人でももちろん参加できますが、できればぜひご夫婦で足を運んでみて。赤ちゃんを授かったあとの育児のことを考えても、夫婦で同じ方向をみて妊活期間を過ごし、協力体制をつくっていくことは大切ですね」

不妊治療についてある程度の知識を持っておくことは、治療中の仕事の仕方などをシミュレーションするうえでも必要なこと。セミナーは無料で受けられる上、説明を担当するのは実際に治療をする医師や培養士などのプロです。ネット検索などで膨大な情報から取捨選択を迫られるよりも、ずっと手っ取り早く、情報も正確だといえるでしょう。

「こんなに通院が必要なんて」「一方的に通院日を決められてしまうなんて」といった、知識不足からくるギャップに戸惑うこともなくなるはずです。

次回は、仕事との両立を左右する「クリニック選び」のコツについて伺います。