不妊の原因は、男女半々
吉川さんが、「基本データとして押さえておきたい」として挙げたのが、WHO(世界保健機関)が発表した数字です。
「不妊原因の割合を示した1996年のWHOの統計によると、男性のみが24%、夫婦両方が24%。つまり、男性側に不妊の原因がある夫婦は48%にのぼる、ということです。『妊娠は女性だけの問題じゃないんだ』と気づくきっかけになるグラフですね」
また、現在の日本においては、5.5組に1組の夫婦が不妊の検査や治療を受けたことがある、というデータもあります(国立社会保証・人口問題研究所「2015年社会保障・人口問題基本調査」)。
不妊は女性だけの問題ではないこと、さらに不妊治療は決して特別なものではなく、多くのカップルが取り組んでいるものである、ということが数字からもわかるはずです。
精液検査を受けたくなるデータ
妊活女子のお悩みの常連といえば、「夫が検査を受けてくれない」というもの。そこで吉川さんが用意したのが、精子の真実を伝えるデータです。こちらは、WHOが発表した自然妊娠するための最低ラインを示した「精子の基準値」。
正常な精子は4%以上で基準値クリア
「実は男性も、自分の精子についてほとんど知らないんです。学校の性教育で習うのって、丸い頭に尻尾がついたおたまじゃくしみたいな精子が、一回の射精で一億匹出ます、といった程度。それがすりこまれていて、『元気なニョロニョロが大量に発射されて、そのなかで最強のヤツが卵子にたどり着く』と思っている男性が多数派です。
でも、実際には、動かない精子もいれば、頭が2つあったり尻尾がちぎれたりした奇形の精子もいる。WHOの基準では、正常な精子が4%以上いること、となっています。つまり、多くの精子は奇形、ということ。こうしたデータを見ると、『俺の精子はどうなんだろう?』と興味が湧いてくるのではないでしょうか」
精子の実態を知ることが「精子によい生活」を意識するきっかけになった、という男性も多いそう。
「僕はよく、『私生活の乱れは精子の乱れ』という話をします。精液のコンディションは、日によって大きくばらつきがあります。二日酔いや徹夜明けの日は、精液検査の結果も最悪。バランスのいい食事、質のいい睡眠、適度な運動などを心がけることで、精子も元気になる。一度の検査で結果が悪かったとしても絶望することはない、ということも知っておくと、さらに検査へのハードルが下がりますね」
妊娠率のデータで客観的事実に向き合う
「そろそろ本腰を入れないと授かれないかも」とエンジンをかける女性に対して、男性は「そんなに焦らなくても」「そのうちできるよ」「君は若々しいから大丈夫」とのれんに腕押し、といった話は「妊活あるある」といって言いほど。年齢によるタイムリミットを実感しづらい男性の目を覚まさせるためにも、やはり客観的データの提示が効くようです。
「わかりやすいのは、年齢別の妊娠率の変化を表したデータです。これを見れば、年を重ねるにしたがって妊娠率が下がることが一目瞭然。もっとも妊娠率が高い日で比較すると、20代前半なら50%、20代後半から30代前半なら40%、30代後半では30%です。さらにこのグラフからは、男性も年齢を重ねることで、女性を妊娠させる能力が低下することが見てとれますね」
「不妊治療においても、年齢は治療成績を左右する大きなファクターです。35歳以降は妊娠率が下がるとともに、流産率、先天異常の赤ちゃんが生まれる確率も高くなります」
ライフプランを話し合うためのデータ
「これらのデータを見せながらぜひ行ってほしいのが、2人のライフプランをすり合わせることです。子どもは1人がいいと思っている夫婦と、2人以上ほしいと思っている夫婦とでは、妊活をどれだけ急ぐべきかも違いますよね。でも、基本の家族計画を面と向かって話したことがないという夫婦は意外と多いものです」
「こちらはオランダの研究チームがまとめたものです。こうしたデータも、夫婦の意識をすり合わせるときに役立ちそうですね。達成確率75%の年齢を目安としてみてはいかがでしょう」
「妊活なんて必要ない」「俺たちに限っては大丈夫」という意識低めなパートナーを前にすると、つい焦りやイライラから感情的になってしまう、という方もいるでしょう。でも、無関心に見える態度は、正しい知識を知らないがゆえのことかもしれません。確たるデータを見せることで、話し合いもぐっと建設的になるはずです。