海外の働く女性たちは、どんなふうにお金を貯め、どんなふうに使っているのか? アメリカ、フランス、シンガポール、インド……、国籍バラバラの30~40代女性たちが、お金にまつわるあれこれをざっくばらんに語り合います!
イラスト=かみやかやこ、以下すべて同じ
▼座談会に参加してくれたのは
【アメリカ合衆国…米】リサさん(39)/アメリカ合衆国・フロリダ在住、広告代理店勤務、既婚(子ども1人)。趣味は美容全般。
【香港…香】ジェニーさん(38)/香港在住、金融機関勤務、独身。趣味は休日の映画観賞、旅行、ヨガなど多彩。
【シンガポール…シ】メイリンさん(41)/シンガポール在住、公務員、既婚(子ども2人)。趣味は読書とショッピング。
【インド…印】アイラさん(40)/インド・カルカッタ在住、教師、既婚(子ども1人)。趣味は水泳、サイクリング。
【ドイツ…独】ミアさん(38)/ドイツ・ベルリン在住、建設会社勤務、既婚(子ども2人)。趣味はドラマ観賞。
【フランス…仏】アリーゼさん(38)/フランス・パリ在住、メーカー勤務、独身。趣味は旅行、テニス。
※参加者はすべて仮名です。

今、貯蓄している? 貯める目的は?

――日本では、なかなかお金が貯められずに不安を感じている人がたくさんいます。みなさんは今、順調に貯蓄できていますか?

【米:リサ】毎月定額を貯蓄に回すようにしていますが、順調と言えるほどじゃないかも。最近マイホームを買って住宅ローンを返し始めたし、大学時代に借りた学費ローンもあって……なかなか貯まりません。

【香:ジェニー】私もあんまり順調じゃないです。香港は物価がどんどん上がって、今では世界一物価が高い都市に! 2018年、自宅の家賃も上がったし、普通に暮らしているだけでお金がなくなってしまいます……。

【シ:メイリン】香港ほどじゃないけど、シンガポールも物価は高いです。特に外食が高くつくから、ちょっと気を緩めるとカードの引き落としが大変なことに(笑)。私も貯蓄はしているけど、やっぱりもうちょっと貯められたらと、常々感じています。

【印:アイラ】私は節約が苦にならないから、気付いたらけっこう貯まっています。でも、これで十分なのか、不安に感じることがよくあって。

【独:ミア】貯蓄にはゴールがないですよね。私も一応貯めているけど不安は強いです。

【仏:アリーゼ】みんな不安なんですね。私は貯めなきゃという意識が比較的低いかも。だからあまり貯蓄残高は気にならないです。

――みなさんは主に何のために貯蓄されているのでしょうか?

【香:ジェニー】やっぱり、老後のためかな? 働けなくなってからのことを考えると、すっごく不安です。

各国の年金制度と教育費事情

【シ:メイリン】私も。しかも、シンガポールって公的な年金制度があんまり充実していないんです(※①)

【印:アイラ】あ、それはインドもそう。だから私も老後資金と、子どもの教育資金のために貯めています。

【米:リサ】私は特に、何のためとは決めていません。とりあえずローンを返さなきゃ、で精いっぱい。

【仏:アリーゼ】大きなローンがあったら、それを返すほうに気を取られますよね。私は独身ですし、旅行や食事など、今楽しむことにお金を使うほうですね。

【独:ミア】私も家を買いたくて貯めています。ただ、1つドイツ人で良かったのは、子育てにあんまりお金がかからないこと。教育費はタダ同然だし、「子ども手当(※②)」も毎月約190ユーロ(2万円強)が最長25歳まで給付されるんです。

【仏:アリーゼ】フランスも一定条件を満たすと手当が出るし、教育費は幼稚園から高校まで、公立校は原則タダ。しかも、子育て世帯は減税される。だから、この先子どもが生まれても、急にお金が必要になる心配はないんです。

【米:リサ】いいですね。米国も減税措置はあるけど、教育費は高い! 学費だけじゃなくて、デイケア(保育所)やベビーシッター代も高くて大変なんです。欧州は本当に子育て世帯に優しい国が多いんですね。

【香:ジェニー】香港と違いすぎる! 私は独身だからまだ関係ないですが、香港は教育にお金を惜しまない人が多いですよ。子どもの大学卒業までにかかる教育費の目安は100万香港ドル(約1400万円)とか。

▼Keyword ①
「シンガポールの年金制度」
シンガポールの年金制度は「積立方式」。積立方式は、自分の年金を自分で積み立てる。日本は「賦課方式」で、現役世代が支払った保険料がそのときの年金受給者に支払われる仕組み。積立方式だと、積立額より受給額が少なくなることはないが、それだけで暮らしていけるほどの金額は用意しづらい点が、デメリットとされる。
▼Keyword ②
「ドイツの子ども手当」
ドイツは子育て世帯への社会保障が手厚い国。子ども手当は子どもが生まれてから18歳まで、あるいは教育が終わるまで(大学や専門学校を卒業するまで。最長25歳)毎月支給される。金額は月額2万円強で、日本のように子どもの年齢に応じて減額されることはない。ドイツ在住の外国人や海外に住むドイツ人も制度を利用できる。

【印:アイラ】高い! でもインドもそう。貧富の差が大きい国だけど、教育格差もすごくて、やっぱりかける人はそれくらい、いやそれ以上にかける感じです。私もわが子の教育にはお金かけなきゃと思っています。

【シ:メイリン】シンガポールも、教育にはお金をつぎ込んで当然、という風潮があるからしんどいですね。ドイツやフランスがうらやましい。

――みなさんは貯蓄をし、将来の資金計画も考えられていますが、母国でもそのような方が多いですか?

【独:ミア】ドイツ人は一般的にケチが多いから(笑)、周りはお金についてしっかり考えて、コツコツ貯めている人がほとんどです。

【仏:アリーゼ】フランスも、貧困層が増えていたりすることもあって、多くの人は危機感を抱きつつ倹約していると思いますが、一方で「なるようになるさ」って感じの人も多い気が(笑)。そういう人はお金がなくても大して気にしていません。

【印:アイラ】インドは人口が多くて価値観も多様だから一概に言えないですが、都市部のエリート層は意識的に貯めている印象です。先進国ほど老後の社会保障が充実していないから、将来の自分の生活を守るためには、貯蓄がすごく重要。

【シ:メイリン】シンガポールも、老後の年金が少ないおかげで、若いうちから危機感を持って貯蓄しようという人が結構いると思います。

どんなやり方でお金を貯めている?

――日本では投資文化が根付かず、資産の大半が預貯金で、元本割れのリスクのある金融商品には手を出さない人も多いですが、みなさんは投資などでお金を増やそうと思っていますか?

【香:ジェニー】香港では、20代から貯蓄に励んで、株式投資を始める人もかなり多いんですよ。株式投資を通じて、資産を最大化しようという考え。何しろ物価も不動産も高いから、自然と「将来のために、自分でどうにか資産形成しなきゃ」って思うのかも。私自身、そうです。

【米:リサ】しっかりしていますね。米国は千差万別っていうか、差が激しい。私の周りには、将来を見据えた投資なんてまったく考えてません、みたいな人も多いです。私自身は、親が昔から株を買っていてなじみがあったので、ちょっと勉強して投資信託を買い始めていますが。

【独:ミア】私は今のところ銀行預金だけです。ジェニーさんやリサさんみたいに、バリバリ投資してみたいけど。周囲では、低リスクの投資信託や債券を買っているという話をよく聞きます。ドイツ人は金融商品の勉強に熱心な人が多いかも。あ、うちの夫も勉強して投資しているみたいなんだけど、何を買っているかはよく知らないな……。

【仏:アリーゼ】まあ、私もパートナーの資産運用の実状は全然聞いたことがないですね(笑)。自分は銀行預金だけです。

【シ:メイリン】私は老後資金形成の目的で「個人年金保険(※③)」に加入しています。シンガポールでは、この個人年金保険が大人気!

【香:ジェニー】香港でも個人年金保険は人気がありますよ。とりあえず入っとこう、みたいな雰囲気。私は株で大きく増やしたいから、余裕資金の大部分は株式で運用しています。香港株と米国株メインです。

【印:アイラ】私も資産の一部で株を買っていて、そのほかに少しずつインデックス型の投資信託も買い足しています。

ボーナスをどのように使っていますか?

――意見がいろいろと分かれましたが、運用している方は、ボーナスなどを投資資金にあてるのでしょうか。みなさんはボーナスをどのように使っていますか?

【印:アイラ】運用資金は、ボーナスではなく日々の貯蓄から捻出します。そもそも、ボーナスって絶対もらえると決まっているわけじゃないから、普段からあてにしないようにしていて、もらえたらその分は貯蓄に。

【香:ジェニー】素晴らしいですね。私も運用資金は月収から出していますが、ボーナスは自分へのご褒美に使っちゃってます。この間も新作のバッグや一目ぼれした指輪を買っちゃって。本当は今家がほしくて、お目当ての物件が1500万香港ドル(約2億円)くらいするから、貯めなきゃいけないのに。香港でちょっと便利な場所にマンションを買おうとすると、普通にそれくらいかかるんですけど、実現できるかな……。

【米:リサ】え~、高い! 私はボーナスをもらったら、ローンの返済にあてます。でも、洋服とか化粧品が好きだから、ちょこちょこそういうのも買っちゃいますが。

【仏:アリーゼ】私はボーナスは半分貯蓄、半分は好きなものを買うって感じで、洋服や化粧品もだけど、インテリアも好きだから、前々から狙っていた家具を買ったりするかな。

【シ:メイリン】私はボーナスで、さっき話した個人年金保険の保険料を払っています。何口も入れるからボーナスが出たら追加加入。老後まで解約できませんが、手元にお金を置いてもムダ遣いするだけですし。

【独:ミア】ボーナスは預金のほか、夫婦旅行に使います。でも、お互いボーナスが少ないときでも、夫が家計を顧みずに豪華なバカンスをしたがるからイライラする(笑)。

【印:アイラ】わが家も旅行が好きですが、ボーナスをあてるのではなくて、毎月少しずつ旅行用の貯蓄をしています。それで18年に家族旅行をしたんですが、親も連れていったから、貯蓄分だけじゃ足りなかった(笑)。

▼Keyword ③
「個人年金保険」
公的年金を補完する目的で、民間の保険会社が販売する。現役時代に保険料を支払い、老後に保険金を受け取る。日本の個人年金保険は利回りが低かったり、商品によっては元本割れしたりするため、あまり人気がないが、シンガポールや香港の個人年金保険は加入時に高い利回りを保証。着実に老後資金をつくるツールとして人気。

【米:リサ】でも、旅費を毎月貯めるのいいですね! それなら定期的に旅行できそう。マネしてみようかな。

日々の地道な節約は、していますか?

――みなさんは、普段は「節約」をしていますか? たとえば日本では、節約のためにランチはお弁当、安売りスーパーでしか食材を買わない、家電製品の電源をこまめに落として電気代を節約するなど、地道な努力をしている人も多いです。

【仏:アリーゼ】節約マインドは結構あると思います。たとえば、洋服や家具をリサイクル品で済ませるのは普通。フランスではゴミを拾って使っている話はよく聞きます(笑)。

【米:リサ】米国ではクレジットカードを使いすぎたり、ローンを抱えすぎたりして、節約くらいじゃ追い付かない人が多い。最近、米国の景気減速懸念(※④)のニュースが多いから、そうなったら破綻する人が増えそう。私自身は、節約のために毎月生活費の予算を決めて、その範囲内でお金を使うようにしています。

【シ:メイリン】私も予算は決めています。生活に困らないお金を手元に残して、あとは定期預金や保険に資金を振り分けるから、日々の生活は節約せざるをえない感じ。

【印:アイラ】私も似たようなものですね。日本人っぽいこまごました節約も好きで、なるべく照明をつけずに済むよう、一部屋に家族が集まるようにしたりしますよ。多くのインド人は、自分たちが受けた以上に良い教育を子どもに受けさせたいと願っているから、そのために、みんなコツコツ節約するんだと思います。

【独:ミア】私は節約、大好きです! ドイツでは「エコ」の概念が浸透していますが、地球に優しいことをするという延長線上で、自然にお金の節約になっているという感覚でしょうか。たとえば夜はキャンドルをともして、電気代を節約したり。

【香:ジェニー】みんな偉い……。私は節約してないです。周りは節約家もいれば浪費家もいるし、いろいろですが。個人的には仕事や運用で、お金を増やすほうを頑張りたい!

――さまざまなお金に対する考え方を伺えて興味深かったです。みなさん、ありがとうございました!

▼Keyword ④
「米国の景気減速懸念」
米国は世界経済のけん引役で、2018年まで景気拡大局面にあった。しかし、経済・金融関係者からは19年以降の景気減速を懸念する声が多く聞かれる。要因は、昨今の米中貿易摩擦や財政の引き締めなどさまざま。米国で景気が後退すれば、国内の失業者や自己破産者が増えるばかりでなく、世界中に影響を及ぼすことは間違いない。