書類選考は通過するのに、面接でなかなか次のステップに進めないという人がいます。人当たりは決して悪くないし、自己分析もしっかりできているはず。それなのに一体なぜ? ベンチャーやスタートアップ企業の採用支援を中心に活躍するキープレイヤーズ代表の高野秀敏さんは、その原因は「ビジネスパーソンとしてのコミュケーションスキルの低さと準備不足にある」と言います――。
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35歳以上の書類通過率は1~2割

何度もお話しているとおり35歳以上の転職は決して楽なものではありません。ただでさえ書類選考の通過確率は約1~2割。100人応募者がいたとすると、一次面接に案内されるのは多くても20人くらいです。仮に書類で落とされてしまったとしても35歳以上という年齢を考えれば、ある程度は仕方のないこと。同じようなスキルを持った20代と35歳以上の人材がいたら、企業側は可能性のある20代を選ぶからです。いちいち落ち込んでいたら、時間がいくらあっても足りません。

しかし、極度の人材不足で企業側は即戦力になる人を求めているので、年齢がネックになって足切りされるケースはほとんどなくなってきているはず。つまりは書類で「会ってみたい」「面接でもっと詳しく話を聞いてみたい」と企業側に思わせることさえできれば、一次面接に呼んでもらえるということ。まずは転職エージェントなどのプロに添削してもらい、自分のキャリアと強みをしっかりと落とし込んだ書類を作成することから始めましょう。

一次面接で落とされる人に欠けていること

見事、書類選考を通過したとしましょう。さぁ、いよいよ面接です。面接に案内されるのは、採用基準の最低ラインはクリアしていて、企業側がその人物のキャリアや能力に興味を持っているからです。自信を持って面接に臨んでいいのですが、せっかく書類選考に通過したにも関わらず、あっさりと一次面接で採用見送りになる人がいます。初対面の人とでも感じよく話をすることができる。キャリアも十分。しっかりと企業研究もしている。それなのに、なぜか次の面接には呼ばれない……。一体なぜなのでしょうか。その原因は、ビジネスパーソンとしてのコミュケーションスキルの低さと準備不足にあるのではないかと僕は考えます。

面接官のタイプと会社の課題を見極める

35歳以上で転職活動に臨むのであれば、面接の場では瞬時に面接官のタイプを見極めて、面接官が好むような話し方を心がける必要があります。そうでないと、どんなにアピールを重ねても徒労に終わってしまう可能性が高いからです。

例えば左脳型タイプの人は、論理的に話そうとします。相手の話も整合性がとれているかを考えながら聞いているので、論理的に話すほうが好まれるでしょう。数字やデータを具体的に上げながら自分のキャリアについて説明すると効果的です。逆に情緒的な発言が多い右脳型タイプの面接官には感情に訴えかける話し方をしたほうが有効。やる気をアピールしたり、共感を得られるようなエピソードを上げたりするといいでしょう。

また、面接では企業側が何を求めているかを探り出すことも重要です。どんな人もできる限り自分の強みをアピールしようと努めると思いますが、そのアピールポイントがズレていたとしたら……? 結果は言わなくてもわかりますよね。

面接で受かるのは、面接での会話を通じて企業側の課題を抽出し、「私が入社したらこんなふうに状況を変えられますよ」とアピールができる人です。「この人を採用したらこんなメリットがあるのか。会社が良くなりそう!」と、面接官をわくわくさせることが大事。それができれば、間違いなく次の選考に進むことができると思います。

「カジュアル面談」に気を抜いてはいけない

ベンチャー企業などでよく行われているカジュアル面談も要注意です。カジュアル面談とは、企業の担当者と気軽な雰囲気の中で話をする機会のこと。昨今、人材の採用が難しいので、少しでも企業に興味を持っている求職者と直接話をしたいと考える企業が取り入れている採用方法です。このカジュアル面談の案内には、「相互の理解を深めるために、ざっくばらんにお話しましょう。当日はスーツではなく、普段の服装でお越しください」などと明記されていることと思います。このような案内を受ければ気楽に考えてしまうのも無理はありませんが、丸腰で臨むと見事に玉砕します。なぜなら、カジュアル面談といっても実質は面接だからです。

企業側は、普通に会話を交わしながら求職者の人となりややってきたこと、そして、その企業でやってみたいことを確認し、最終的に「一緒に働きたいかどうか」を判断します。会話の流れを読みながらさりげなくアピールしなくてはならないので、むしろ通常の面接よりも難易度が高いとも言えるでしょう。

模擬面接で何度も練習を重ねるべし

人にはそれぞれ話し方のクセがあります。どんなに気をつけようと思っていてもそう簡単に直せるものではありません。長く生きていればなおのこと。相手に合わせた話し方をするのはコミュニケーションの基本ですが、説得に長けた敏腕な営業ウーマンでもない限り、面接の状況に応じて話し方を変えたり、話の流れをコントロールしたりするのはなかなか難しいと思います。だからこそ、場慣れというか準備が必要になるのです。

相談をすれば大抵どこの転職エージェントでも面接対策を行ってくれます。面接に自信がない人は模擬面接を通じて何度も何度も練習を重ねてください。エージェントは客観的な目線で改善ポイントを指摘してくれるので、自分では気付いていなかったクセや弱点が見つかると思います。面接も100回くらい重ねれば場慣れして上手な話し方ができるようになると思いますが、模擬面接で練習するほうが効率的だと思います。

社会人としてまだ経験の浅い20代なら、これまでのキャリアや自分のスキルなどをきちんとアピールできさえすれば可能性を感じて採用してもらえるかもしれません。しかし35歳以上ともなればそうはいかない。年齢や経験年数に合ったアピールの仕方で差をつけるしかないのです。

高野 秀敏(たかの・ひでとし)
新卒でインテリジェンスへ入社。その後、2005年にキープレイヤーズを設立し、人材エージェントとして30社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内、シリコンバレー、バングラデシュで実行。3000名以上の経営者の相談と、1万名以上の個人のキャリアカウンセリングを行う。マネージャーとして、キャリアコンサルタントチームを運営・教育。人事部採用担当として、数百人の学生、社会人と面談。学校や学生団体での講演回数100回以上。