大学生6人が、ファッションについて語りつくします。参考にする情報源も、服を選ぶ基準も、大人世代からすると大きな変化が。若者の消費動向を追いかけているマーケティングアナリストの原田曜平さんが、若者市場のトレンドを探り出します。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/MoustacheGirl)
座談会メンバー
Aさん/早稲田大学3年生。中学時代からファッションが大好きで渋谷109などに通っていた。今はモード系や古着系が好み。女性
Bくん/法政大学3年生。きれいめのジャケットスタイルにスニーカーなどを合わせる「スポーツミックス」スタイルが多い。男性
Cさん/明治大学2年生。ファッションやブランドには興味なし。楽に着られて大学で浮かない服装ならOKと考えている。女性
Dくん/上智大学1年生。複数のブランドや古着を組み合わせた着こなしを楽しんでいる。特に好きなのはコムデギャルソン。男性
Eさん/青山学院大学4年生。ZARA(ザラ)でバイト中。好みのファッションはカワイイ系、キレイ系を経て現在はモード系。女性。
Fさん/東洋大学3年生。フェミニン系を着ることが多いが、今しかできない大学生っぽい格好もするよう心がけている。女性

最大のファッション情報源はSNS

【原田】みんなはファッションの情報源として何を参考にしていますか? 昔の若者の多くはファッション誌だったと思うけど。

【Aさん】私はインスタです。インスタで好きなブランドショップや古着屋のアカウントをフォローしていて、そこで気になった商品を店舗に行って見て買います。

本投稿では気になった投稿をコレクションとして保存することができるので、「欲しい服」というフォルダを作成して気になったアイテムを保存しておくようにして定期的に見返します。

【原田】やっぱりファッションに限らず多くのジャンルで、若者の情報源がインスタに集約されてきていますね、特に女子は。

雑誌は親子2世代で読む

【Eさん】「GINGER」や「MORE」などのファッション誌を母が付録目当てで買って来て、私はそれを借りて家で読み、気に入ったものを店で買っています。インスタグラムでは、モデルの三吉彩花さんや西内まりやさんのアカウントをチェックします。また、インスタのストーリーズの広告を見て買うこともあります。最近、ストーリーズの広告でDHOLICのブラウスを買いました。広告を見て買うというのは、いいカモかなと思ったりもするけど(笑)、あまりに素敵だったので。

母親が買ってきた雑誌を共有しているというEさん(右)

【原田】今の若者は成人になっても親子仲が本当に良いので、雑誌世代である母親が買ってきた雑誌からの影響っていうのは大きいのかもしれないね。出版社側も「母と娘」とか「父と息子」の2世代で読める雑誌なんか創刊して、親子セットでターゲットにしても良いかもしれない。あと若者の間で、インスタのストーリーズの影響力が上がる中、ストーリーズ広告の効果も高まってきているんだろうね。

ところで、雑誌とインスタには違いがあったりしますかね?

【Eさん】ファッション誌に登場するモデルさんは、モデルの中でもレベルが高い方(例えば桐谷美玲さんや菜々緒さんなど)が多いと思います。ですので、彼女たちに似合っていても、自分なんかにはとても似合わないのではないかと思ってしまい、購買意欲が湧きにくくなってしまう面もあると思います。

一方で、インスタの広告やストーリーズの広告では、そこまで著名なモデルさんを使っていないことが多いし、鼻から下しか映っていなかったり、横顔しか映っていなかったりするので、自分に似合うかどうか想像しやすい気がします。

【原田】そうか。やや極端に言うと、ブランディングは雑誌、購買意欲はインスタといった微妙な切り分けみたいなものができつつあるのかしらね。

ファッションコーディネートアプリが便利

【Bくん】僕は美容院で、電子書籍の「MEN’S NON-NO」や「FINEBOYS」などのトレンド雑誌を読んでトレンドをチェックしています。初めてのファッションスタイルにチャレンジするときは店員さんに相談することも多いですね。

【原田】これだけ情報検索ができ、一見どんな情報でも得られる時代になったようだけど、初めてのジャンルを相談するのは今でも店員さんなんだね。洋服に関する細かいQ&Aは、まだネットでは代替できないんだね。

ファッション専門アプリを活用するDくん(左)

【Dくん】僕はファッションコーディネートアプリの「WEAR」を重視しています。WEAR内の検索欄に好きなブランドを入れるとユーザーが投稿したコーディネートが一覧で見られるため、これらの写真を参考に自分の所有している服の中から似ている服を選び、コーディネートをすることが多いです。また、無名ブランドの商品を買った時は、載せているユーザーが少ないため、服の形、色で検索をかけ、コーディネートの参考にします。

【原田】若者の間でインスタ化が進む中で、ファッションに関心が高い子はファッション専門のアプリも参考にするようになっているんだね。

「美容垢」「追っかけ垢」の影響力は絶大

【Cさん】ファッションに自信のない私の場合、おしゃれしたいというよりまずは標準点に到達したいので(笑)、ツイッター9割、インスタグラム1割ぐらいの割合でファッション情報をチェックしています。投稿のスクショを保存して後で見ることもよくあります。

ツイッターでは、コスメやファッションで可愛いアイテムを紹介しているいわゆる「美容垢」(美容アカウント)を見ます。例えば、「しろくまちゃん」さんや「るるちゃん」さんなどです。

また、私は元TBSの宇垣美里アナが大好きなので、彼女を追いかけているファンのアカウントから、彼女の着用アイテムを知り、似たようなアイテムを買うこともあります。

【原田】いわゆる「美容垢」の影響力は大きくなってきていますね。これも確実にインフルエンサーの一つになっていると言えるよね。それと好きなタレントの「追っかけ垢」なんていうのもファッションの情報源になっているんだね。

買い物は念入りに、時間をかける

【原田】次は洋服代と買い物の仕方について聞いていきたいと思います。

【Aさん】毎月2万~4万円程度です。無駄遣いしないようにショッピングをするときは試着して、長い時間悩むようにしています。本当に必要か、丈感や生地など不満な点はないか、着回しが難しくないかなどをよく考えます。

【Bくん】僕は季節ごとにまとめ買いをしています。1回に使うのは4~5万円。それとは別に追加したいアイテムを買いに行くときは、コーディネートしたい服を着て行って余計なものを買わないようにしています。

【Fさん】私は月1万円くらいの予算です。ウインドーショッピングでは、渋谷の109や、池袋のサンシャインシティ、新宿のルミネエストを見ます。渋谷の109を例にあげると、地上8階から地下2階全て回り、気に入ったお店や商品があれば、携帯のメモに書いて家に帰ってからネットで買います。他の施設も同様で片っ端から見ます。その場で買うことはほとんどなく、9割がネットショッピングですね。ネットで買えば最大で半額割引のこともあるので。私が買っている服の9割はZOZOTOWNかメルカリです。2つを見比べて安いほうで買う。ZOZOは頻繁に1000円offチケットなどが発行されるので、そのタイミングで利用します。

【Cさん】私はシーズンごとに2万円ほど。被服費の優先度は低いです。どうしても買いたいものがあるときは即座に買いますが、長時間悩むことが多いですね。お店に行くと店員さんに流されて買ってしまうこともあるので、基本的にはZOZOTOWNで買うようにしています。ほしいものをカートに入れておき、安くなったときや、クーポンを使用できるタイミングで買います。

古着屋で購入する前にメルカリで安くなっていないかチェックするDくん(左)。

【Dくん】僕の予算は月2万円程度。月に3回ほど行きつけの古着屋をめぐります。購入するときはメルカリで調べて古着屋よりも安く売っていないかを必ず確認します。

【原田】もうリアル店舗が完全なショールーム化しているね。また、アパレルのネット購入は「安いから」なんだね。かつ、洋服の購入は現物を見ることや試着することは消費者にとって未だに必要不可欠で、洋服のネット購入はこのリアルとセットになっている。ゾゾスーツは、リアルを取り除こうという試みだったわけだけど、消費者はリアルを取り除けない。

今、ニューヨークでは、店舗は現物を見たり試着したりするいわゆるショールームになっていて、実際に購入すると商品が倉庫から自宅に送られるというスタイルがかなり増えています。店側も店頭には試着分だけを置けば良いので、お店も省スペースで済む。だから、商品価格を多少下げられる。今後は日本のアパレルショップも、こうしたNYモデルが増えていくかもしれないね。

服選びの基準は「モテ」より「自分」

【原田】次に知りたいのは、服を選ぶときに誰の目を意識するかということ。男子の目か女子の目か、それとも自己満足か。

【Eさん】完全に自己満足です。ファッションに関しては、誰の目も意識したことがないですね。彼氏から「こういうの着たら?」と言われることもあるけど、何を言われても自分が着たい服はそのときどきで決まっているから。もちろん、少しでも彼に好かれたいという気持ちはあります。しかし、自分が好みでない服を買うと彼に会わない日は絶対着なくなるし、服もお金ももったいないと思うので、私は自分の好みを優先するようにしています。

「自分の好きなファッションを楽しめないのが一番ダサい」とAさん(左)。

【Aさん】私も。周りの人のファッションから影響を受けることはあっても、どう見られるかを気にすることはないですね。自分で似合うと思ったら着ちゃう、みたいな。どう見られるかを気にしすぎて自分の好きなファッションを楽しめないのが一番「ダサい」と思うからです。ファッションは私の趣味の一部でもあるので、その日の気分などに合わせて自分の好きな服装、自分が似合っていると思う服装をすることが一番楽しいです。

【Fさん】私は彼氏の目は気にするかな。かわいいって言われたいから、彼の好みに合わせて自分の好みとは違う服を着ることはあります。彼氏と会わないときは完全に自己満足(笑)。

男性の目からも女性の目からも自由

【原田】今から10年くらい前、あるファッションビルの会社の方にインタビューしたら、「ある時期から女性が、男目より女目を気にするようになったタイミングがあった」という話をしていました。つまり、昭和の女性は洋服選びの際に「男目」を気にする人が多かったけど、女性が働く時代になり、平成のある時期から「男目」よりも「女目」を重視するようになった、ということだそうです。あれから10年が経ち、今はさらに女性が「女目」よりも「自分目」を重視するようになってきているのかもしれないね。

個人の幸福という意味ではとても良いことのような気もするし、なんだか若者の間で恋愛離れが進むのも分かる気もする。

では、男子はどうかな? 周りの女子にモテたい気持ちはあるでしょう?

モテたいというほどではないが、好感度をマイナスにしたくないというBくん

【Bくん】うーん、周りの女子におかしいとか変とか言われない程度の格好はしたいと思っていますけど……。本当におしゃれな人って世の中にたくさんいると思うので、そうした人たちに僕は到底勝てない。「モテたい」まではいかないけど、好感度をマイナスにはしたくないので、その点では女子の目を意識して。

【Dくん】僕は100%自己満足ですね。自分の服を分かってくれる人にだけモテればうれしいので、趣味が違う人に変だと思われても気にしません。僕のファッションを気に入って寄ってきてくれる人となら、絶対に話も合うし一緒にいて楽しいはず。これからもこのまま自分の道を突き進むつもりです。

【原田】なるほど。「脱ゆとり世代」の皆は、普段から僕も皆と接していて感じるけど、男女ともに個人主義化が進んでいるね。だから、あまり人の目を気にせず、自分の内なる満足度を重視するようになってきている気がします。もちろん、BくんやCさんのように「好感度がマイナスにならない程度に」っていう最低限の部分は考えた上での話なんだろうけど。

さて、次回は今の若者から見た「おじさん・おばさん」のファッションについて聞いていきます。痛い服装や逆に好感を持てる服装など、若者たちの本音を紹介します。