一見アンバランスな節約法を人目を気にしないタフさで継続
お金持ちは「節約」とは無縁なのか。少なくとも意識してお金をセーブする必要がないのでは――との問いに「そんなことはありません。ミリオネアほど節約意識が高いのです」と答えるのは午堂登紀雄さん。自身も会社員時代に不動産投資を始め、33歳で自己資産を3億円に増やした。公私ともに富裕層とも交流が多いが、彼らの節約法は“アンバランスさ”に特徴があるという。
「自らの力で多くの資産を築いた人たちは、お金は自分の人生をより豊かにするため、目的を達成するための“道具”であるとの認識が強い。この“道具=お金”をうまく使いこなすことが重要なので、使いたい部分にはとことん使い、使いたくないことには全く使いません。この線引きが実に明快です」
その言葉通り、登場する資産1億円以上を持つ4人の女性たちにも、アンバランスな節約術が垣間見える。たとえば、ある人は豪邸に住んでいてもインテリアは質素。また、洋服は古着でも、靴は好きな高級ブランドのものを履くのがポリシーという人もいる。これらの節約術が他人から見ると違和感があっても、本人の中ではちゃんと「節約のルール」が確立している。このルールがないまま節約をすると、すべてにケチケチしてしまう。結果、生活から潤いが失われる、ということにも……。午堂さんも1億円の住宅に住みながら、車は中古の軽自動車。その理由は「わが家では自動車はただの移動手段にすぎないので、乗れればいい」からだ。
「『お金持ちなのに、なんでそこをケチるの?』と言われることもありますが、気にしません。富豪になれる人は自分軸がブレない。人の意見に左右されず、メンタルが強いのも特徴です」
その“いさぎよさ”を毎日の生活に取り入れれば、ミリオネアに近づけるかもしれない。
とことん堅実派▼ほとんど自炊で健康管理。
古い洋服は雑巾にして使い倒す
優子さんは現在50代で、独身。40歳で勤務していた会社から独立し、イベント会社の経営を始めた。“会社員時代の年収の3倍”を目標とし、仕事にまい進する。持ち前の頑張り精神を発揮して早々と目標を達成してからは、着実にお金を貯めてきた。そして5年前に、マンションと一戸建てを無借金で購入。
「それぞれ事務所と住居として買いましたが、どちらも地価が飛躍的に上がったことが幸運でした。今後売っても貸してもいいので、ぜいたくしなければ不動産収入で老後は生きていけるのではと思っています」
しかし、それに甘んじることなく、毎日の生活はいたって質素。
「食事はほとんど自炊。高級なフレンチを食べにいく、というようなことはほぼありません。外食は味付けが濃かったり、添加物が多かったりするので、健康のためにも自分で作るようにしています」
普段の買い物は、基本的に現金。クレジットカードは使いすぎを防ぐために1枚だけ保有というから徹底している。「財布に入っている金額の範囲で買い物をするので、衝動買いはほとんどない」そうだ。
また、クローゼットの中もシンプルでスッキリ。洋服は好きなブルー系のアイテムを季節ごとに2、3着持ち、ストールやアクセサリーで変化をつけて着回している。「『優子さんといえばいつも“青”の人ね』と、服がアイコンがわりになっているみたい。覚えてもらいやすいので、自営業としては有利かも。古くなった洋服は、最後は裁断して雑巾に。とことん使い倒しています(笑)」
惜しまないのが「交際費」。友人たちとの交流でさまざまな情報を得ることができるし、新しい出会いによって世界が広がることもある。お金の管理が苦手な優子さんは、その道のプロである友人に、資産運用を学ぶことも。「自分が不得意な分野は人に助けてもらい、相手が困っているときは自分が助ける。“人的資産”に私は支えられていると思います」
毎日自炊して健康管理をしていると、今後の医療費を抑えることにもつながるので、“見えないお金の節約”になっています。また、同業種よりも他業種の一流の人々との交際にお金と時間を使うのもミリオネアの特徴。コネクションは、お金以上の“財産”となりうるので、大切にするべきです。
子どもへの投資派▼自転車移動で交通費を節約。
家賃はわずか7万円のワンルーム
シングルマザーで、起業家として活躍する30代の幸恵さん。離婚する前は家賃35万円のマンションに住んだこともあったが、現在は家賃7万円の古めのワンルームマンションに引っ越して子どもと暮らしている。
「離婚後、2人の暮らしに必要な毎月の出費や、お金の使いどころを見直したのです」
しかし建物自体のグレードが下がっても、インテリアにはこだわりたい幸恵さん。引っ越し先が内装の変更可能な物件だったので、壁や床を自分好みにチェンジ。大好きなブランドの椅子やソファを置いて、快適な空間に仕上げた。だから「狭いけれど、今の家に満足しています」。
また、交通費を抑えることを考えて、会社に近い都心に家を見つけたので、通勤はもちろん、晴れた日はなるべく自転車で移動している。
洋服も節約アイテムの1つだ。アパレル輸入業を営んでいるので、質のいい古着を探して自分でリメークし、安く見えない工夫もする。その一方で「靴は妥協しません」と断言。シューズラックには10足ほどの高級ブランドの靴がラインアップ。
「ファッションは“足元が要”です。1度買ったら修理して何年も履くので、流行に左右されない定番デザインのものを選びます」
流行の安い靴をたくさん買うより、無駄になっていないという考え方だ。
家とファッションに関しては「使う」「使わない」のメリハリが利いているが、絶対に惜しまないのが子どもの教育費。小学校から私立に通わせ、多くの習い事をさせている。
「でも、親の押し付けになってはいけないので、子どもがやりたいと思ったものだけ習わせています。また、さまざまな体験をさせて視野を広げることも大事。私の海外出張に子どもを連れていって、生産工場の現場を見せることもあります。旅費は自腹なのでお金がかかりますが、貴重な体験になっているようです」
「学び」はプライスレスであり、将来への投資。この考えはブレない。
たくさんの習い事は、子どもがどの分野が好きで、どんな能力を発揮できるのかを見極めるのに有効です。大人になってからの集中力は、子どもの頃の集中力に比例します。集中力が高い人は稼ぐ力も高いので、つぎ込んだ教育費はちゃんとリターンとして返ってくる。だから教育は投資なのです。
振り幅大きい派▼時間節約のために
コンビニ弁当を食べ、ヘリコプター移動
康代さんは、ヨーロッパに拠点を置く50代。海外公共投資や美容関連事業の経営などで大富豪となった。普段は現地のセレブたちと交流し、大切な友人とクルーザーに乗って感動的な景色を見に行くのが、何よりも心の栄養になるという。節約する必要は全くなさそうだが、心がけているのが「時間」の節約だ。
「“時は金なり”が行動の基本。日本に帰ると、食事の時間がないほど忙しいときもあります。仕事にグッと集中するため、コンビニ弁当で済ませることも少なくないです。また、ヨーロッパではヘリコプターをレンタルして、移動時間を短縮することも。電車や飛行機より高くつきますが、節約した時間でほかのことができると思えば、もったいないとは思いません」とは、大富豪ならでは。
捻出した時間は、新たな挑戦に費やせる。結果、それがお金を生むチャンスにもなる。「最近フランス語の学校にも通い始めました。英語はもちろんフランス語もセレブの会話に必要な言語。彼らとより密なコミュニケーションをとることができれば、新しい仕事の案件につながることもあるでしょう。何歳になっても、可能性を模索したいのです」
大富豪ほど時間の管理が上手です。即断即決型が多く、メールの返信、仕事の決断も速い。数分でも無駄にしません。徹底したタイムマネジメントスキルで仕事の集中力が高まり、良いパフォーマンスが生まれるのです。
趣味につぎ込む派▼いいワインを楽しむために
旅先ではモーテルに宿泊することも
料理研究家として活躍する知恵さんは40代の既婚者。普段はバリバリ仕事して、休暇には国内外を旅するという充実した毎日を送る。旅に出るたびに夫婦で各国のワインを堪能。今ではワインを個人輸入して、セミナーを開けるほどになった。
「先日はオーストラリアのワイナリー巡りを楽しんできました。そこで高価なワインを楽しむために、モーテルに泊まって宿泊費を節約。また、別の旅で豪華なリゾートホテルに宿泊したときは、飛行機をLCCにして、出費を抑えました。マイレージがたまったときだけビジネスクラスに乗ります」。
旅行代金の優先順位は食事なのか、ホテルなのか、毎回夫婦で話し合う。
出費の優先順位は住宅にも表れている。人が集まる家にしたくて、美しい海が一望できる高台に、広々としたリビングとテラスを備えた豪邸を建てた。
「遊びに来た友人に『建物に比べて、インテリアがチープだね』と言われてしまうぐらい(苦笑)、高級家具には興味がないんです。収納には300円均一や100円均一で購入したプラスチックケースを使っていますが、機能的にはこれで十分」と本人は納得の様子だ。
友人が家に集まって、手作りのおもてなし料理と自分で選んだとっておきのワインを楽しんでくれるひとときが、一番楽しい。それが、次の旅のモチベーションになる。
趣味と実益を兼ねている、典型的な例。ワインセミナーが開催できるほどに知識を集積できたのはすごい。たとえ趣味でも、中途半端なレベルでなく人に教えられるほど徹底的に追求するのがミリオネアの特徴です。
エデュビジョン代表取締役
1971年、岡山県生まれ。中央大学経済学部卒業。外資系コンサルティング会社でIT、情報通信等の経営戦略立案、企画変革プロジェクトに従事。現在、不動産投資コンサルティング、ビジネスマッチング等を手がける。近著に『1億稼ぐ子どもの育て方』(主婦の友社)。