ここ数年、転職市場がホットと言われ続けていますが、本当に売り手市場なのでしょうか。ベンチャーやスタートアップ企業の採用支援を中心に活躍するキープレイヤーズ代表の高野秀敏さんは「転職できる人はすぐできるけど、転職できない人はなかなかできないという二極化が存在します」といいます――。

転職を希望するなら少しでも早く

企業側や経営者に話を聞くと、「中堅層が育っていない」「ミドル世代の人材がほしい」というケースが非常に多く、ミドル世代が求められています。男女問わず35歳以上の人でも転職がしやすい状況なのは確かです。特にマネジメント経験のある女性は需要がありますが、完全な“売り手市場”とはいい切れません。要は、企業側が求める基準以上のスキルに達していないケースも多いからです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

求人数は景気の好調さを背景にここ数年、常に増加傾向。転職を考えている人にとっては、絶好のチャンスが続いています。一般的に、オリンピック開催国の景気はオリンピックが近づくにつれて良くなる傾向にあるといわれているので、転職マーケットもまだまだ活況を呈すると見られがちです。しかし、僕はこの状態はそう長くは続かないと考えています。さまざまなデータを見ていると、そろそろ景気は後退入りする可能性が大きいので、求人数も徐々に変化していくのではないでしょうか。

実際、厚生労働省が3月1日に発表した1月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比横ばいの1.63倍。1974年1月(1.64倍)以来の水準で高止まりしていますが、総務省が同じく3月1日に発表した労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は前月比0.1ポイント上昇の2.5%と、2カ月ぶりに悪化している。完全失業者数は8万人増の172万人で、季節調整前の原数値でも8年9カ月ぶりに前年同月を上回りました。

いずれにしても好景気が永遠に続くことはないので、転職を希望するなら少しでも早く動き始めたほうがよいことは間違いありません。

「ツイッター転職」が今の流行り

最近の転職活動で注目しておいてほしい手法が3つあるので、ご紹介しましょう。

1.リファラル採用

ベンチャー企業などを中心に、リファラル採用が進んでいる印象があります。リファラル採用とは「referral=紹介・推薦」という意味を持つ採用方法のこと。自社に在籍する社員や既に退職したOBなどから知人や友人を紹介してもらい、自社の選考基準に沿って採用を行います。

このリファラル採用は、求人媒体への出稿や合同説明会などのイベントに出展する場合と比べて採用コストが大幅に抑えられるだけでなく、人材の質がある程度担保されるメリットがあるといわれています。アメリカではGoogleやFacebookをはじめとしてIT企業を中心にすでに約85%の企業がリファラル採用を導入していて、日本ではメルカリやビズリーチなどもこの採用方法を取り入れています。

2.ツイッター転職

また最近は、ソーシャルリクルーティングといい、SNS上で採用活動を行う経営者や人事担当者も増えつつあります。中でもツイッターを使った転職が流行っているようです。ツイッターで#転職 #転職希望 #ツイッター転職 などと検索すると、たくさんのツイートを見ることができると思います。

まず、求職者側は持っているスキルや求める条件などをツイッター上にアップする。その時、ハッシュタグの後に職種やスキルなどの特定のキーワードを付与すると投稿がタグ化されます。すると、それが採用者側の目に止まって「この人の話を詳しく聞きたいな」と思ったら、直接DMが届くという仕組みです。

逆に採用者側がツイッター上に自社が求めている人材のスキルや条件をアップして、求職者を募っているケースも見られます。ツイッターには費用がかからないうえに求職者と直接スピーディーなやりとりができるという利点があるからです。

人事部はあなたのフェイスブックのここを見ている

3.レファレンスチェック

レファレンスチェックとは、書類選考や採用面接だけではわからない求職者の人物像や、前職での仕事ぶりを確認すること。外資系企業などでは一般的に用いられている手法ですが、個人情報の観点などから日本の多くの企業では求職者の同意なしには行われることはないといわれていました。しかし、最近はレファレンスチェックのサービスを提供する会社も登場するなど、レファレンスを重視する企業が増えてきているのも事実です。

あまり大きな声ではいえませんが、採用者側は何らかの形でレファレンスチェックを行なっていると思っています。Facebookやツイッターを検索して問題のある投稿はないか、どんな人と繋がりがあるのかを見ている。採用者側の目的はリスクを軽減することなので、求職者のFacebookをのぞいてみて共通の知り合いがいたら、本当はよくないことなのですが「○○さんの仕事ぶりはどうでしたか?」と聞いてしまっている会社もあるとの噂も耳にします。

採用者側は書類や面接だけではわからない部分を確認しておきたいだけなので、プライベートな内容の投稿を残しておいても問題はありません。逆に何も投稿がなく、繋がっている人がいないほうが不自然。何か隠したいことがあるのではないかと勘ぐってしまうので、リスクを避けたい採用者側は敬遠します。ただし、Facebookはあくまでもオフィシャルな場と捉えて。転職活動の妨げになりうるような投稿は、事前に削除しておきましょう。

スキルと人脈があれば年齢は関係ない

転職できる人はすぐできるけど、転職できない人はなかなかできないという二極化が存在します。スキルや人脈がある人は、「副業でもいいからウチの仕事を手伝ってくれませんか?」と声がかかる。いかにこれまでに関わってきた仕事できちんと結果を出し、周囲の人と友好な人間関係を築けてきたかが鍵になります。転職には若い人のほうが有利だといわれた時代もありましたが、今は年齢がネックになることはほとんどないでしょう。つまりは、スキルと人脈さえあれば年齢は関係ないということです。

また、これまでは子育て中の女性の転職はハードルが高かったのですが、働き方改革が進む中、多様な働き方に理解を示す企業がかなり増えてきました。たとえ時短勤務でも、きちんと責任を持って仕事の結果を出してくれさえすればよいという考え方が浸透してきています。

高野秀敏(たかの・ひでとし)
新卒でインテリジェンスへ入社。その後、2005年にキープレイヤーズを設立し、人材エージェントとして30社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内、シリコンバレー、バングラデシュで実行。3000名以上の経営者の相談と、1万名以上の個人のキャリアカウンセリングを行う。マネージャーとして、キャリアコンサルタントチームを運営・教育。人事部採用担当として、数百人の学生、社会人と面談。学校や学生団体での講演回数100回以上。