ふらりと、老舗レストランの地下のバーへ
17:30、銀座でのクライアントとの打ち合わせが終了。職場に戻るにはちょっと中途半端だし、このまま帰宅するのも心寂しい時間だ。カフェでお茶をするにもつまらないし……。どこかで1杯、お酒でも飲んで帰ろうか。
晴海通りを有楽町駅へ向かって歩いていると、ふと横道に、老舗のレストラン「三笠会館」があるのを思い出す。「そういえば、バーがあったはず」と、自然に足がそちらに向かう。1Fには、イタリアンバール「LA VIOLA」もある。ここはスタンディングでも気軽に飲めるのだが、今日はちょっと落ち着きたい気分。地下にあるBar「5517」へ。
階段を下りていくと、広々としたシックな空間が広がる。銀座のバーでこれだけの広さがあるのはめずらしいらしい。一人でも多人数でも応対してくれるので、利用価値は高い。
開店時間から間もないため、まだほかにお客はいない様子。早い時間のバーはこれがいい。たとえ仕事でキャリアを積んでいても、女ひとりでバーを訪れるときは、妙に緊張してしまうから可笑しい。
「こちらにどうぞ」と促され、カウンター席に着く。
「何に致しましょうか」
いつもは「シェリー」を頼んでしまうが、今日はカクテルの気分。「ほんのり甘めのカクテルが飲みたい」と伝え、アルコールには強いほうなので、ベースが強めのお酒でも問題ないことも伝えてみる。
「さくらカクテルはいかがでしょう」
聞けば、春の花のシーズンには、さくらをイメージしたオリジナルカクテルを提供しているのだそう。気づけばもう春。仕事で疲れた日に、うららかな春をいただく――。俄然興味が湧き、オススメの「さくらカクテル」のショートをオーダーする。
臆せず、好みを伝えるのがいちばん。ゆだねすぎはNG
バーでのオーダーに自信がないという女性も多い。とくにカクテルは、名前も知らなければ、どんなものなのか想像できないという人も多いだろう。そんなときは、まずは「甘め」「すっきり」「アルコール弱め・強め」など自分の好みを伝え、そこに、「フルーツを使ったもの」「クリームが好き」などとプラスしていけば、バーテンダーから提案がある。それでも緊張して伝えられないのであれば、まずはビールやグラスワインでも問題ない。
もっともいただけないのは、相手にすべてをゆだねること。「私をイメージしたカクテルを」というようなオーダーは、バーテンダーを困惑させてしまうのでNGだ。
カクテル以外をオーダーするなら、お酒の種類、例えば「ウィスキー」「ウォッカ」などを、「ロック」「水割り」「ソーダ割」など、どう飲みたいかを伝えるだけでOK。決して知ったかぶりをして、頭の片隅にあるカクテル名を伝えないようにしたい。思いがけず、強いカクテルだったという場合もあるので、要注意だ。
つくる過程を見られるのも、バーの楽しみのひとつ
カウンターに座る楽しみは、人それぞれだろう。バーテンダーとの会話を楽しむ人。ひとりでお酒をじっくり味わいたい人、そして、オーダーしたお酒ができ上がる過程を見て楽しみたい人。3つ目の「でき上がる過程」を見ることほど、一人でバーを訪れるときの楽しみはないと思う。
チーフバーテンダー湯浅和希さんが華麗な手さばきで、素早くさくらカクテルをつくり上げていく。
「どうぞ」
スッと出されたショートカクテル「さくらのマティーニ」は、ほんのりピンク色で繊細な面持ちだ。カクテルグラスの中にサクラの花が一輪、美しく花びらを広げている。ひと口飲めば、「マティーニ」だけあって、その可憐な姿からは想像できないほど、ほんのりとした甘さの中にウォッカの強烈なアルコール度数を感じる。
「サクラの花は、塩漬けなんですよ」と、湯浅さん。桜湯に使うものを塩抜きしているのだそう。カクテルにもほんの微かに塩みがあるそうだ。
クイ、クイッと4口ほどでカクテルを飲み干し、サクラ花の塩漬けを食べてみる。ウォッカが花びらにしみ込み、かなりパンチがある。「可愛い顔して、結構やるね」といった印象だ。
もう少し飲みたいような、と思っていると……
おつまみのロースト・カシューナッツをいただきつつ、もう1杯飲むか、止めようかと迷っていると、飲み足らないそぶりを感じ取ったのか、湯浅さんが「お次はいかがいたしましょうか」と尋ねてくれる。よし、来た!「では、さっぱりして甘くないもの」を、とオーダーしたところ、「ブランデー・サワー」を薦めてくれる。
シャカシャカとシェイクされ、細い華奢なグラスに注がれたのは、ほのかな黄色いカクテル。輪切りレモンとチェリーのシロップ漬けを添えて提供してくれる。
コニャックのクセを包み込むような、すっきりとした口当たりがうれしい。コニャック、ソーダ、そしてレモンの酸味のバランスがよく、とても飲みやすい。
毎日、店内で煎るという自家製ロースト・カシューナッツをつまみながら、こちらも10分ほどで飲み干す。もう完全にリフレッシュだ。
平日の中日、後半の仕事に備えて飲み過ぎはNG。この辺で切り上げて家路につこう。
今夜はカクテル2杯、滞在時間約50分。締めて4610円(席料、サービス料込み)。寄り道でちょっとハイソな気分を味わうには、ちょうどいい。
銀座「三笠会館」地下にある、1987年開店のシックな空間のカクテルバー。名物カクテル「5517」をはじめ、数十種類のリキュールからなるカクテルを楽しめる。平日の19:00まではハッピーアワーで、シャンパンやフルーツカクテルが30%OFFに。土曜日は、15:00~営業しているのがうれしい。女性のひとり客も多く利用しやすい。
東京都中央区銀座5-5-17 三笠会館本店地下1F
☎050-3134-5673
営業時間=月~金:17:00~23:30(L.O.23:00)、土:15:00~22:30(L.O.22:00)
休業日=日曜・祝日・年末年始
※サービス料10%、席料1200円が別途かかります。(ただし、土曜15:00~17:00は席料なし)
この記事を読んだという女性客の方は、席料1200円がサービスに。さすが老舗です。(2019年3/31まで)