女性たちにとってバッグは、装いの格や、見た目の美しさだけでなく“その人自身”を如実に表してしまう、まるで“形なき名刺”のような存在。仕事の熱意や本気度、そしてセンスのよさを雄弁に語ってくれるバッグ……あなたは持っていますか?

バッグでわかる! 仕事のスタンス

女性が仕事で使うバッグに求めるものとはなんだろう? ビジネスに必要なすべてのモノを整然と収められる十分なキャパシティ、そして見た目に清潔感があり、タフで、スーツにマッチする。派手ではないのに華やかさがあり、それでいてどこかその人らしさも感じさせる……。一見欲張りにも感じるが、何かに似ていると思わないだろうか? そう、それはまさに働く理想の女性像そのものなのだ。

事実、バッグにはその人の仕事のスタンスがすべて出る。見た目も成果も大切にしている人は、才色兼備なバッグを求めるだろうし、なりふりかまわず結果だけを出そうとする人は、機能性は完璧でも、スーツ姿になじまないデザインのものを持っていたり。バッグを見ればその人がどういう働き方をしているのかが、一目瞭然なのだ。

あなたの仕事ぶりは、周囲にどう見えている?

モノを入れて運ぶだけでいいのであれば、女性がこんなにもバッグにこだわることはないだろう。とりわけ日本人は、バッグに多くのこだわりがあるように思う。若くてもハイブランドのバッグを持つのがステイタスだったり、服よりもまずバッグにお金をかけるという人がとても多かったり。何年か前には「#女の価値を決めるバッグ」などという、少々乱暴なハッシュタグが話題になり、炎上騒ぎになったこともあった。

行きすぎたこだわりがいいとは思わないが、女性たちは心のどこかで「素敵なバッグは自分を実力以上に見せ、自信を持たせてくれるもの」だということをよく知っているのかもしれない。事実、同じスーツを着ていても、バッグ次第で箔がつく。もちろん身の丈に合わない高級ブランドのバッグは、それ自体がどんなに素晴らしいものでも、成熟していない大人が持つのでは意味を成さない。予算があるから買うのではなく、そのバッグが今の自分にふさわしいかどうかをきちんと吟味し、自らに向き合うという作業が伴うからこそ、素敵なバッグをエレガントに使いこなせるともいえるのだ。

バッグひとつで、仕事に結果が出る理由

責任ある立場の管理職ともなれば、自分の働き方を象徴するバッグというアイテムを、より真剣に選ぶ必要がある。バッグには、あなたの理想を現実に引っ張り上げてくれるパワーがあるからだ。もちろん、適当に選んでいてはそんな魔法は働かない。けれど、週に3日は一緒に過ごすであろう“ビジネスパートナー”と真摯に向き合ったとき、バッグ=ただのファッションアイテムという領域を超え、ときにはあなたの分身となって仕事の一部を担い、そしてときには、あなたという人を品よくアピールし、さりげなくバックアップしてくれる。そう、まるで有能な秘書のように。

バッグはあなた自身であり、同時に優秀なビジネスパートナーである。良い仕事をするうえで、絶対に欠かせない存在だ。さらに大切なのは、それを選び、使いこなすあなたの確かな意志。私たち女性の価値を決めるのはバッグではないけれど、仕事の運命を握る、大切な相棒であることは確かなのだ。

今月の名品

ヴァレクストラのバッグ「イジィデ」

余分なものをそぎ落としたストイックかつ端正なフォルムのイジィデバッグは、定番でありながら毎シーズン注目必至のブランドアイコン。シンプルでいて印象的なデザインが、品よく主張したいビジネスシーンに映える。しっかりとした広めのマチ&内側のジッパー式ポケットで、使い勝手においても文句なしに秀逸。バッグ(右/ミニ/パウダーブルー)[タテ16.5×ヨコ22×マチ12cm]31万8000円、(左/ミディアム/ホワイト)[タテ20×ヨコ26×マチ12cm]37万5000円/ヴァレクストラ
ロングストラップを取り付ければ、肩掛けや斜めがけも可能。サイドの金具部分もミニマルで美しい。
バッグを開け閉めする所作までエレガントに見せてくれる、気品溢れるクロージャー。
 
木村 綾乃(きむら・あやの)
フリーエディター&スタイリスト
数々の女性誌のファッションページを担当するほか、大人のファッションセミナーを開催。アパレルブランドとのコラボレーションや美容サイトのディレクションなども手がける。