電子書籍は「見て理解」がやりやすい

ページをめくるスピードが紙に比べて遅い電子書籍は、速読には不向きだと一般的にはいわれている。しかし、速読法を教えてくれたExイントレ協会代表理事の角田和将さんは、電子書籍派だ。Amazon Kindleを愛用し、外出時はiPad、自宅ではパソコンを使って読書をしている。

写真=iStock.com/praetorianphoto

「速読は電子書籍のほうが圧倒的にやりやすい」と角田さんは断言する。「速読をするうえで大事になるのが、『読む』のではなく、言葉を『見て理解』する感覚を身につけること。紙と違って電子書籍などのデジタルツールは、『読む』というよりも『見て理解』するものとして使われることが多いので、実は速読向きなんです。紙の本はどんなに意識していても、なぞり読みや黙読のクセが出てしまいやすい。その点、電子書籍は『見て理解』しやすいので、速読トレーニングをするうえでも、おすすめのツールです」

さらに、難しいビジネス書などを読まなければならない場合は、電子書籍を使ったほうがいいと角田さんは続ける。

「分厚い本や、見ただけで身構えてしまう内容のときこそ電子書籍の出番です。電子書籍のいいところは、自分好みに仕様を変えられること。速く読みやすい環境をつくることで、読むことに対する心理的なハードルを下げられます。続々と新しい機能も出てきていて、ますます使いやすくなっています」

紙の人気は根強いものの、電子書籍のシェアは年々拡大。多くの企業が参入を果たし、電子書籍ストアの数もここ数年で一気に増えた。各ストアは切磋琢磨(せっさたくま)しながらバージョンアップを図っている。しかし、電子書籍に興味を持っていても、「どれほど便利なのかがイマイチわからない」という人も多いのではないだろうか。そこで、角田さん愛用のAmazon Kindleを用いながら、電子書籍を使うといかに読書が快適になるのかを解説してもらった。

▼MERIT 1
文字を大きくでき「見て理解」しやすい

電子書籍を使っている人の多くが、紙の本を基準にした文字サイズにしているようです。しかし、文字サイズを自由に変えられるのは電子書籍の大きなメリットの1つなので、思い切ってサイズを大きくしてみましょう。

iPadなどのタブレット端末やスマートフォンの画面を指でタッチすると、フォントの「切り替えバー」が現れます。そこで希望のフォントサイズを選択すると、文字の大きさを自由に変えることができるのです。文字のサイズを大きくすると、文字を「見て理解」しやすくなるので、速いスピード感で読書を進めていくことが可能になります。

しかし、文字サイズを大きくすれば、ディスプレーに表示できる文字数は減ります。特にiPadのようなタブレット端末だと、画面に表示される文字数がかなり少なくなりますが、少ない文字数のほうがパッと見て、ある程度の内容を把握できるという利点もあります。

Before/紙の本に合わせて最初は小さめのフォントに設定されているので、読みにくく感じる。
After/表示される文字数は減るが、一つ一つの文字が大きくなり、目に留まりやすい。

▼MERIT 2
読み直したい部分を一発で探し出せる

知識や考え方を学ぶビジネス書などを紙の本で読む場合、気になった部分やわからない箇所に線を引いたり、付せんを貼ったりするという人もいるかと思います。電子書籍でも、指先ひとつで簡単に文章の一部にマーカー風の線を引いたり、しおりのようなブックマークを付けたりすることができますよ。紙の本は1度書き込むと残ってしまいますが、電子書籍ではすぐに消すことも可能です。後日その本を読み返しても、「マーカーが引かれた部分にしか目が行かない!」というようなことがありません。

また、ブックマーク機能もとても便利です。後で読み直したいときなどは、各ページに表示されるブックマークのアイコンをとりあえずタップしておきます。読み直すときは、ツールバーにあるメモ状のアイコンを選べばOK。ブックマークがリスト化されて表示されます。タップすればすぐさま該当ページに移動できるので、ページを探す手間も省けます。

Before/気になる部分が出てきたら、アイコンをタップして、ブックマークを付ける。
After/ブックマークを付けたページがリスト化されて、探しやすい状態に。

▼便利なキーワード検索! 該当ページがすぐに開ける

電子書籍ではパソコン同様、特定のフレーズや単語を検索することができます。固有名詞や特定の単語を検索にかけることで、該当部分のみをピンポイントで見つけることが可能です。「ブックマークを付けていなかったけど、あの内容が書かれているところを読み直したい」というときなどにも重宝しますよ。紙の本の場合は、パラパラとページをめくりながら該当部分を探すのが常ですが、電子書籍の検索機能を使えば大幅な時短につながります。

▼MERIT 3
読み上げ機能で時間を有効活用!

読み上げ機能とは、文字通り、本の内容を読み上げてくれる機能のことです。

iPhoneやiPadには、画面に表示されたテキストを読み上げる「スピーチ」という機能が備わっています。耳から情報を得たいときに、メールなどを読み上げてくれるのです。iOS版のKindleではこの読み上げ機能が使えるため、日常のあらゆる場面での読書が可能になります。

たとえば家事の最中や満員電車の中、眠りに就く間際などでも、音声で本の内容を読み上げてくれるので、時間を有効に使うことができます。仕事に家事に忙しい女性にとっては、非常にうれしい機能だと言えるでしょう。

角田和将(つのだ・かずまさ)
Exイントレ協会代表理事
速読を学び始めて8カ月後に、日本速脳速読協会主催の2010年速読甲子園で準優勝。翌月開催された特別優秀賞決定戦で速読甲子園優勝者を下して日本一になる。現在はさまざまな分野において速読を生かした研修、指導を行っている。近著の『速読日本一が教える すごい読書術』(ダイヤモンド社)はベストセラーに。