未来を予測するためには、日々変化する経済の状況をチェックしておくことが大事。ここでは、世の中の大きな動きが把握できる7つの指標を紹介します。
▼長期金利

景気が良くなると、長期金利は上昇する

金融市場といえば、株式市場を思い浮かべる人が多いようですが、債券市場の動きもチェックしておく必要があります。その代表的な指標が長期金利です。長期金利は、将来の景気見通しを表します。長期金利が上がるときは、投資家が「将来、実体経済が良くなり、中央銀行が金利を引き上げるだろう」と見ていることになります。逆に長期金利が上がらないときは実体経済の先行きに投資家が悲観的であることを表します。長期金利は1年以上の債券の利回りをいいますが、代表的な指標とされているのは10年国債の利回りです。右は米国の10年国債の利回りの推移ですが、2017年の秋以降上昇し、米国の実体経済が良くなっていることを示しています。

▼資金供給量

資金供給量が抑えられると、株式相場は下がる

政策→金融市場→実体経済のサイクルを動かしているのはお金です。世の中に出回っているお金の総量は「ベースマネー」「マネーサプライ」「マネーストック」などと呼ばれます。この量は各国の資金供給量によって増減します。2018年2月に世界の株価が下落しましたが、お金の動きが関係していました。各国の資金供給量の増加ペースが減速していたのです。米国はその3カ月前より0.99ポイント減、日本は同1.0ポイント減、中国は同4.2ポイント減でした。資金供給量の増加率が株価に影響しているのです。

▼ドル/円相場

投資家心理の変動で、乱高下が続く可能性が大きい

米国の通貨であるドルは世界の基軸通貨です。そのドルと円との関係を示すのがドル/円相場(為替レート)。円高になれば日本の輸出品は高くなり売れにくくなるので企業収益が圧迫されます。今後はトランプ大統領の政策に対する不安に伴い、相場が乱高下する可能性があります。そのとき1ドル=99円を割り込むと、投資家は東日本大震災後の1ドル=75.5円を意識するようになり、さらに円高が進む可能性も。

▼失業率

世界経済に影響を与える、米国の失業率が注目される

歴史を振り返ると、国民が食べ物に困窮して政治に強い不満を持ったときに、政権交代が起きています。これを回避するために政府は、国民に仕事を与えて収入を確保できるような政策を打ち出します。その結果として表れるのが失業率です。現在の失業率は日本が2.4%、米国が3.7%と低水準で落ち着いています。失業率が下がるのは、経済状態が良くなっていることを示すので株価は上昇します。とくに米国の失業率は注目されています。世界経済にインパクトの大きい、米国の財政政策や金融政策に影響を与えるからです。

イラスト=原田リカズ
▼日経平均株価のPBR

過去のバブルと比較すれば、株式市場の過熱度合いがわかる

株価の水準を評価する指標には、利益の額をベースにしたPER(株価収益率)や資産額をベースにしたPBR(株価純資産倍率)があります。利益は短期的に変動しやすいため、長期的に株価を評価するにはPBRが向いています。そして日本全体の株価の水準を判断する指標になるのが日経平均株価のPBRです。2018年9月21日時点では1.88倍。これはリーマン・ショック前の2.2倍やITバブル最中の2000年の3.0倍と比較すると低い水準。このことからも現在がバブルではないことが判断できます。

▼物価上昇率

ゆるやかな上昇が、国民の生活を安定させる

物価上昇率も失業率と並び、政府の政策判断の指標となります。食品の物価が安定していることが国民の生活の安定につながるからです。代表的なものは消費者物価指数です。これは、消費者が購入するモノやサービスの価格を示す数値です。物価が下がったほうが国民の生活は楽になると考えるかもしれませんが、長期的にみるとそうとはいえません。デフレは経済の長期停滞に結び付きます。景気が悪くなり収入も減るので、若者を中心に人々は将来に希望を持てなくなります。結果的にゆるやかな物価上昇が望まれます。

イラスト=原田リカズ
▼原油価格

価格が上がると、企業収益にも個人消費にも悪影響を及ぼす

原油価格は企業収益や国民生活に直接影響を及ぼします。たとえば、原油価格が上昇するとガソリンの価格も上昇し、企業の運送コストは上がり、収益にはマイナスに働きます。一方で、個人の車離れや外出する機会が減るので、郊外型のショッピングセンターなどの不振にもつながります。2019年から20年にかけて原油価格は上昇していく可能性が高まっています。

渡辺林治(わたなべ・りんじ)
リンジーアドバイス 代表取締役
商学博士(慶應義塾大学)。野村総研、シュローダーを経て、企業の業績改善や資産形成に役立つ経済予測モデルを開発。著書に『乱高下あり! バブルあり! 2026年までの経済予測』。