ビジネスでステップアップしたいなら必読!
日本経済新聞(以下、日経新聞)は、押さえておくべき政治・経済の最新情報がコンパクトにまとめられた情報ツール。ビジネスの世界における町内会の回覧板のようなもので、読んでいることを大前提に会話することもしばしば。ビジネスでステップアップしたいのなら必読でしょう。
ただ、何かと忙しい日々の中で、継続的に読みたくとも挫折しがちであることも事実。そこで、挫折を予防する読み方を紹介しました。
全部読む必要はなく、世界経済を動かす重要ポイントや、自分なりのテーマを決め、ピンポイントで読めばOK。手順としては、まず見出しをザッと見て、気になったらリードを読む。さらに気になれば本文も読んでいく流れにするといいでしょう。
ただ、重要ニュースのダイジェスト版である1面は熟読を。詳細は中面にあるので、気になったらそちらもチェック。ちなみに、重要ニュースは新聞の奇数面に集中しています。
また、平日の日経新聞の中ほどに「経済教室」「やさしい経済学」という連載があり、一流の学者がタイムリーなニュースをわかりやすく解説していて、おすすめです。
▼多くの人が日経新聞に挫折する主な理由は?
【理由 1】情報量が多い
日経新聞は、国内外の政治・経済情報を中心に構成されており、一説によると、朝刊(紙版)の文字数は1日あたり新書2冊分程度。隅から隅まで読んでいたら、丸1日かかってしまうような情報量の膨大さに、読む前からさじを投げたくなる人も多そうだ。
【解決策】全部読まなくていい! 読む時間も30分でいい
「私は熟読するほうですが、それでも所要時間は1日1時間。大抵の人は30分以内でしょうが、それでも必要な情報は一通り収集できます」。まず新聞に慣れることから始めたい。
step 1
●最初は電子版ではなく紙版の新聞を選択。
●土曜日版を購入し、最低1週間は同じ新聞を何度も読み続ける。
紙版から入ったほうが新聞に慣れやすく、情報が頭に入りやすい。まず、情報量の多い土曜日版を購入し、同じ新聞を毎日読むところからスタート。1週間後に新しい新聞を購入し、同じことを繰り返す。
step 2
●1週間だけ毎日、日経新聞を購入する。
●新聞の後半部分は捨てて、広告も切り捨て、残りを読む。
1週間続けて日経新聞を購入し、毎日新しい情報を仕入れる訓練を。新聞の後半のページや広告を切り捨てると、大幅にボリュームが減るので、通勤時でも持ち運びやすく、読みやすい。
step 3
●何か1つテーマを決めて、それに関連する記事をスクラップする。
●慣れてきたら、テーマを複数に増やしてみる。
テーマを1つ決め、その関連記事をスクラップして“ネタ帳”を作ると、新聞をさらに深く読めるようになり、ビジネスにも役立つ。テーマは、たとえば「Amazon」「シェアリングエコノミー」など何でもOK。
【理由 2】出てくる言葉が難しい
新聞を読んでこなかった人にとって、日経新聞に出てくる政治経済の用語は難解。新しい用語には説明が加えられているが、すでに「常識」と見なされている言葉に注釈はつかない。それをいちいち調べながら読むだけで、時間と手間がかかってしまう。
【解決策】最低限の経済用語だけ覚え、網を張りながら読む!
「読む時点で6つの要素を意識すると、予備知識なしで読むより情報が頭に入りやすくなります。略語や一種の隠語に面食らう問題については、面倒でも最低限の用語を覚えておくのが早道でしょう」
「A・B・C・D・E・F」の6要素を意識する
日経新聞を読む以上、世界経済の流れはつかんでおきたい。「下の6要素は、今の世界経済を動かす主要な物事。ほかを読み飛ばしてもこれらの最新情報を押さえれば、流れを読み誤ることはありません」
A:アメリカ
世界最大の経済大国で、世界中の経済に影響を及ぼす存在。トランプ大統領の発言なども含め、目を離せない。
B:Brexit(ブレグジッド)
Brexit(英国のEU離脱)は、引き続き世界中の関心事。もちろん、EU諸国の動きも含めてウオッチしたい。
C:中国
米国に次ぐ第二の経済大国・中国も、日本経済に多大な影響を及ぼす存在。政治・経済・軍事の面でも注目を。
D:デジタル
デジタル革命で産業界の勢力図は変化。AI(人工知能)、仮想通貨などの最新情報には敏感になっておくべき。
E:EV
電気自動車(Electric Vehicle)関連企業は成長が著しく、毎日のように情報が出て、投資家にも注目されるテーマ。
F:金融
経済の動向は金融(Finance)と直結する。国内外の株価や債券価格などの動向も押さえておきたい。
今がわかる最低限の経済用語を知る
経済ニュースには、たとえば「GDP」「IMF」といったアルファベット3文字の略語が頻出。これがわからなくて、読むのがイヤになる人が多い。そこで、今必ず覚えておきたい10の略語を紹介! (略語/何の略?/意味)
CSR:Corporate Social Responsibility
「企業の社会的責任」。企業は利益追求だけでなく、労働環境の整備や社会貢献活動などを果たす責任を帯びる。
ESG:Environment, Social, Governance
「環境」「社会」「企業統治」の頭文字。これらへの取り組みの度合いから、企業の持続的な成長性が測れる。
ETF:Exchange Traded Funds
「上場投資信託」。投資信託だが株式市場に上場し、株と同様に値動きする。日経平均などに連動するものが有名。
FRB:Federal Reserve Board
「連邦準備制度理事会」。米国の中央銀行で、金融政策を決定する役割がある。現在の議長はジェローム・パウエル氏。
GDP:Gross Domestic Product
「国内総生産」。1年間にその国で生み出された財・サービスの付加価値額の合計。経済状態を測るバロメーター。
IMF:International Monetary Fund
「国際通貨基金」。189カ国が加盟。加盟国の為替政策の監視や、金融危機の際の救済などが主な役割。
ROE:Return on Equity
「株主資本利益率」。企業が独自の資本でどれだけ利益を上げたか示す指標。高い企業は資本を有効活用できている。
TOB:Takeover Bid
「株式公開買い付け」。上場企業を買収する際に採られる手法で、その企業の株式を市場外で一括して買い付ける。
VAT:Value Added Tax
「付加価値税」。EUやアジア諸国などでは、「消費税」とほぼ同じ意味でこの言葉が用いられる。
WTI:West Texas Intermediate
「西部テキサス産原油」。「北海ブレント」とともに有名な原油の品種名で、世界の原油価格の指標とされる。
帝京大学経済学部経済学科教授
野村證券入社後、同社の投資調査部長、野村フランス代表取締役社長などを経て現職。近著に『図解とりあえず日経新聞が読める本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。