卓越した数字を残している営業職の女性は、どんな工夫をしているのか。今回、4社の敏腕セールスに「話す&聞く」技術を聞いた。第1回は、エン・ジャパンの坪倉愛さん――。

※本稿は、「プレジデントウーマン」(2018年10月号)の掲載記事を再編集したものです。

100件の電話が、1件のアポにつながる

●エン・ジャパン 派遣会社支援事業部 営業部マネージャー
坪倉 愛(つぼくら・あい)さん

2005年にエン・ジャパンに入社して以来、求人広告の提案営業に携わっている坪倉愛さんは、法人営業部に配属された新卒1年目の10~12月期に、いきなり四半期の新規契約件数ナンバーワンを獲得した。その後、派遣サイトの営業リーダーに昇格。産休・育休を経て、現在はグループマネージャーとして部下のマネジメントにあたっている。

仕事服は?●パンツに夏でもジャケット、初めてお会いする場合は上下セットにします。インナーは暗くなりすぎない、白や薄いピンク。ネイルはしません。部下にも、つける場合は派手になりすぎないこと、はがれて醜い状態にならないようにしなさいと伝えます。

部下のうち2人が社長賞新人賞を受賞し、13年には自身が社長賞ベストマネージャー賞を受賞した。結果を出し続ける坪倉さんの話し方には、どんな特徴があるのだろうか。

「入社時の営業先は新規開拓、電話でアポイントをとれたら訪問していました。自分よりもずっと年上の人事担当者や中小企業経営者と話をしますから、ハキハキ簡潔に話すこと、結論からお伝えすること、聞きとりやすいテンポで話すことに注意していました」

サービス認知度が上がった現在とは違い、当時は100件電話して1件会ってもらえるかどうか。入社2週間で心が折れたというが、「声は表情を表すから」と、電話口でもなるべく明るい声で話すことを心がけ、先方から「元気で明るい女の子だったから、会ってみようと思った」と言われるようになっていった。

初めて訪問する際には、事前に訪問企業や業界について調べるが、先方に教えてもらう姿勢も大事にする。自分に知識がないまま話をすると会話も空回りしがちだが、相手に話してもらうことで、自分の知識も増え、場も持ちやすくなるからだ。

「『自分なりに勉強して○○についてはわかるのですが、この分野についてはまだわからないことも多く、教えていただけますか』と、わからないことは素直にお聞きします。若い頃は特に、教えていただいたら大げさと思われるくらい『そうなんですね』と反応して、もっと教えてもらえるようにしていました(笑)」

採用に至らなかったとき、どう対応するか

広告の難しいところは、掲載しても相手が期待する成果に結びつくと確約できないところだ。「だからこそ、営業自身をいかに信頼してもらえるかが重要」と、坪倉さんは言う。

「例えば、『このプランだと何人応募が来るの?』と聞かれたとします。広告は出してから結果がわかるものなので、必ず成功するとは限りません。『応募者が何百人いても、採用に至らなければ意味がありません。ターゲットにされている方を採用するために、このプランが最適だと思います』と伝えます。目的は応募者数ではなく、採用につながる人に応募してもらうことですから」

とはいえ、自分の給与の倍以上の広告費をかけてもらっても採用に至らないときは、先方に連絡しづらいのではないだろうか。

「顔を合わせたくないときに連絡をしなくなることほど、先方の信頼を裏切ることはありません。すぐに連絡をとって『ご期待に沿えず申し訳ありませんでした』と謝罪したうえで、なぜこの結果になったのか、分析結果を伝えます」

担当者の立場からすると、怒りの原因は応募者が来なかったこともあるが、周囲を巻き込んで意思決定をしたにもかかわらず、サービスを使って結果が出なかったことだ。原因を明確にしたうえで、いまある機能でほかにできることやオプションでできることなどを提案してフォローしていけば、担当者も上司に報告しやすくなる。

「なにかあったときも、先方がこう言ったから、と相手のせいにしたり、システムが悪いからと考えたりするのではなく、自分のなにがいけなかったのかという視点で考えて、答えを出します」と坪倉さん。そうすることで、モヤモヤした気持ちを引きずることなく、次に踏み出せるのだという。

「相手から教えてもらう姿勢を持つ」「結果が悪かったり、問題が起きたときにも、自分に責任があるととらえ、状況に向き合う」。こうした誠実な姿勢の繰り返しが、現在につながったといえるのだろう。

▼Questions
(1)部下への接し方は?
「褒めシャワーを浴びせる」。できないことに目を向けるのではなく、ちょっとでもできたら褒めます。褒められることで、自信がつくからです。指摘するときには否定せずに「こうやったらもっといいよ」とアドバイスをします。
(2)必携のGOODSは?
服装が地味なので、手帳やスマホカバーなどの小物に赤系のものを取り入れて、パワーをもらっています。
(3)ストレス解消法は?
もうすぐ2歳になる息子がいるので、いまは子育てが一番のストレス解消になっています。イヤイヤ期で手のかかる時期ではありますが、子どもと向き合っているときには嫌なことはすべて忘れて、「またこの笑顔のためにがんばろう」と思えます。あとはカフェでカプチーノを飲んで気持ちを切り替えます。
(4)学ぶときには?
先輩や同期に相談したり、営業関係の書籍を読んだり、違う職種の方たちとの勉強会に出席して、さまざまな考え方を身に付けています。『3分間コーチ ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術』で部下への接し方を学びました。