国や企業だけでなく、自分の仕事の未来予測にも使える経済指標。「数字がニガテ」な人のために、新聞から効率よく情報を仕入れ、身につける方法を教えます!

「情報源をスマホに頼るのは危険」なワケ

「ニュースはスマホで読んでいます」という人は多いだろう。しかし、帝京大学の山本博幸教授は、「情報源をスマホに頼るのは危険」と警告。その理由は、「読むべき記事」よりも「読みたい記事」につい目が行ってしまうから。エンタメや実用系の記事や、その関連記事につられて経済ニュースが後回しになりがちな人は、紙の新聞(日本経済新聞)がおすすめという。

「世の中に大きな影響を及ぼす記事を目立たせているので、どこから読むべきかが直感的にわかります。毎日読むのが大変なら週1回でかまいません。土曜日の朝刊なら経済指標のほかに書評ページなどもあって楽しめます」

新聞を手に入れたら、まず1面をじっくり読み、次に数字の入った見出しを追い、ノートやメモに書いていく。GDP(国内総生産)、実質成長率、金利、為替、貿易収支、失業率などは基本中の基本。だが、数字をただながめていても退屈なだけだ。そこで山本教授がすすめるのは、指標同士の関連性に注目すること。

「たとえば朝刊には、東証1部の時価総額(東証1部の上場企業すべての株を時価換算した額)が出ていますが、不況時はGDPの70%、好調時は130%になる。日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)、国家予算・国税収入とも相関性が見られます」

日経平均、東証1部時価総額、TOPIXは「市場体温計」という欄に出ている。連動していることが実感できれば、指標を見るのが楽しくなってくるはずだ。

手を動かして得た情報は記憶に残りやすい

「数字をビジネスに活かすなら、過去の数字、他国の数字、年齢や地域別の数字と見比べるのが基本です。わかりやすいグラフや表はスクラップしたり、自分で描き写してみるのもいいでしょう。私自身も、興味のあるテーマごとに記事を貼り付けて、読み返しています。手を動かして得た情報は記憶に残ります。1年後には苦もなく新聞を読みこなせるようになっているはずです」

(左上)巨大な数字は、ざっくりでOK 国の数字は、概算がわかればOK。株式市場の指標も1円単位まで見る必要はなく、各指標の相関性を実感できれば十分。


(右上)3文字「英略語」は、丸暗記! 見出しに頻出する略語は「知っていて当然」のもの。いったん覚えてしまえば、経済に対する苦手意識がウソのように消えていく。
(右下)「人」にまつわる数字に注目! 完全失業率、出生率、自殺率など、「人」に関する数字は経済を読み解くのに不可欠。国内需要が激減したいま、期待されているインバウンド(訪日外国人)も重要だ。いつからどのくらい増えているのか。内訳はどうなっているのかにも注目しよう。
(左下)身近な企業の数字を比べる 企業の数字はライバルとの比較や、時系列の変化を見ることが肝心。興味深いグラフが出ていたらスクラップするか、自分で描き写してみよう。業界内の順位が変わったのはいつか。そのとき、世の中に何が起きていたのか。個人的に関心のあるテーマを3つほど決めて情報を集めよう。
山本博幸(やまもと・ひろゆき)
帝京大学 経済学部教授
野村證券入社後、野村中東投資銀行社長、野村證券ソウル支店長、野村證券投資調査部長、野村フランス代表取締役社長などを経て、2016年より現職。著書『とりあえず日経新聞が読める本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がシリーズ10万部を突破。