「英語と会計(財務)とITのスキルが必須だ」
大学を1年休学してイギリスへ語学留学していたとき、現地で英語以外の専門分野を学べる語学学校を探して簿記を勉強しました。まだ、女性が一生働くというイメージがあまりなかった頃。大学入学当時は英語をしっかり学んでおけばそれで十分と思っていたんですが、英語以外の何かを身に付けたくなりました。会計を選んだのは、それ以外にこれといって思い浮かばなかったから(笑)。ただ、後になって大前研一さんの『サラリーマン・サバイバル』という本を読んだときに「英語と会計(財務)とITのスキルが必須だ」と書かれていて、自分の選択は正しかったのだと思いました。
帰国後、あらためて簿記の学校に通い直し、P&Gのファイナンス部門に入社。2年目からはコーポレートファイナンス部門のアナリストとして、日本子会社全体の利益予測・資金予測などの報告をアメリカの本社に行うという、かなり大きい仕事を任されました。外資系企業のファイナンス部門では、各事業部に人が配置されていて、経営管理も戦略策定も担うという点が日本の大企業と異なるようです。新商品をつくるには多額の投資が必要ですから、ファイナンス的な視点でビジネスに深く関わることができました。この経験が、その後の私のキャリアに大きな影響を与えています。
仕事は自分なりに試行錯誤しながら覚えました。今とは違い、当時は手取り足取り教えてもらえる状況ではなかった。パソコンも個人に与えられていない時代でしたから、前年のファイルを見返して手計算が当たり前。加えて海外のP&Gのファイナンスに入る人たちは、すでに会計士かMBAを持っているのが普通で、ほとんど何も知らずに入社するのは、日本くらい。当時、日本人は大学で専門性を身に付けていなくても、入社後に勉強すればOKだったんです。後に会社からも米国公認会計士の資格を取るように推奨されたので、20代後半からはそのための勉強を。第1子の育休中にアメリカで試験を受けて、資格を取得。少し遅いくらいなのですが、それでやっと会計の全体像がつかめました。
CFOになるために、会計の道を突き進んできた
半年間の育休を経た後は税務へ。CFOになることを目指していたので、自分から希望しました。CFOは社長に報告し、会社経営に参画する立場。そんな責任ある仕事に就くためには、ひと通り全部できることがマスト。それまで主に事業部付のファイナンスの仕事に携わっていたので、経理・財務、税務方面の仕事にチャレンジしたかったのです。その後、日本マクドナルドを経てレノボ・ジャパンでCFOに。日本ケロッグでも、商品開発の最初からファイナンスとして関わっています。
企業が存続する目的は、売り上げと利益を伸ばして企業価値を高めること。そのために社員はみんな日々、売り上げと利益を伸ばすべく仕事をすることが期待されます。経営者でなくても、経理でなくても、マーケティングでも営業でも、自分の会社の経営を理解する必要があると思います。会計、数字は経営の一部で、特に重要な部分です。
子どもを産んでも続けられる仕事をしたい。そういう意味では会計がいいのではないかと考え、この道を突き進んできました。会計は女性向きの仕事だといわれています。P&Gに在籍中、アジアのファイナンス部門の男女比を調べたことがあったのですが、そのときに日本と韓国以外は大半が女性だということがわかりました。世界的に見ても、会計分野には女性が多いんですよ。女性に向いているというよりは、男女の能力差が出ない仕事と言ったほうがよいでしょうか。男女の差がない分野だからこそ、さらに自分の価値を高めるためにも会計の勉強をしてみませんか。
1994年:コーポレートファイナンスマネージャー就任
1996年:アジアの予算管理グループマネージャー就任。米国会計士の資格取得に向けての勉強を開始
1998年:ファブリック・ホームケア部門の財務部長就任
2000年:第1子を出産。米国公認会計士試験に合格。税務部長として復帰
2002年:第2子を出産
2006年:日本マクドナルドに入社。フランチャイズ事業担当財務部長就任
2010年:レノボ・ジャパンに入社。取締役CFO就任。合弁事業のNECパーソナルコンピュータの監査役兼任
2014年:日本ケロッグに入社。執行役員、経営管理・財務本部長就任。中小企業診断士試験に合格・登録
2018年:慶應義塾大学大学院経営管理研究科EXECUTIVE MBAを修了
「会計力」を強くするには?
▼経理・財務部門のメンバーと仲良くなる
経理・財務部門のメンバーに、自分の仕事をやっていくうえで、どうしたら売り上げと利益が上がるかについて相談してみてください。会社の風土にもよるかもしれませんが、きっと「こうやったらいいんじゃないか」というアドバイスをくれると思います。それを実践すると会社の価値を高める仕事ができ、自分の価値も上がります。