仕事や私生活での「モヤモヤ」を、識者が解決する「プレジデントウーマン」の好評連載。今回の回答者はタレントの光浦靖子さんです。

【今回のご相談】
交際中の彼から、年のわりに教養がないと言われてしまい、図書館で借りた本を読んでいたら、「身銭を切らないと自分のものにならないよ」と笑われました。でも恥ずかしい話、「ハズレだったらもったいない」という気持ちが勝ってなかなか本を買えません。光浦さんはどんな基準で本を選びますか。やはり自分で買わないと教養は身につかないと思われますか。[31歳・IT・タラ美]

お金はそんなに関係ないと思います。それよりも、自分がどのような状態で読んだかが大きいです。夢中になったものなら記憶に刻まれますが、読みたくて読むのではなく、何度も寝落ちしながら、読まなくちゃいけないというノルマ意識で読んだものは、なにも身につかないと思います。

光浦靖子●1992年、大久保佳代子さんとお笑いコンビ「オアシズ」を結成。「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送)ほか、テレビ、ラジオで活躍中。手芸本『靖子の夢』(スイッチ・パブリッシング)を刊行。

ただ、私はなにか身につけてやろうとか、暗記してやろうというより、現実逃避するために本を読んでいて、その瞬間だけ楽しめればいいので、そうですね……本を閉じたらけっこう忘れています。

でも、何十年と本を読んでいたので、これといった目に見える知識は身についてなくても、なにか考えるとき役に立ってると思います。「何事も1つじゃない」と思うのは本のおかげかな、と。

本選びの基準ですか……。まずは、売れている本をおすすめします。売れているにはそれなりの理由があるわけで、面白いのはもちろん、理解しやすい、読みやすい、というのがあります。本慣れしてない人にも読めるので、たくさん売れるわけです。初めは売れている本を読めばいいと思います。すると、好きな作家、そうでもない作家がおのずとわかります。そしたら、好きな作家の作品を片っ端から読めばいいだけです。けっこうな量になりますよ。

もう1つは、賞を取った作品ですね。やっぱ、賞を取った作品は優れているものが多いです。芥川賞、直木賞、本屋大賞、三島由紀夫賞、谷崎潤一郎賞……もう山ほどあります。賞によって本の傾向があります。ので、自分の好みと合う賞を見つけると、片っ端から受賞作品を読むことになって、これもけっこうな量になりますよ。

本に慣れてくると、書評家という存在にも目がいくようになります。自分と感じ方が近い書評家を見つけると、その人がすすめてる、自分の知らない作家に手を出すようになります。また読むものが増えます。

そうです。無限です。

まずは図書館でいいと思います。好きな作家を見つけたら、自分から買いたいと思うようになりますよ。たった1000円、2000円で、こんな世界を見せてくれるんだ。こんな濃密な時間をくれたんだ。ありがたい。

こうなると、その1000円、2000円は安いとすら感じます。身銭を切ったから身になるんじゃなくて、身銭を切ってでも欲しいと思うのが先だと思います。