事業のリストラやコスト構造の見直しが奏功

国内の景気拡大が続いている。景気の良さは個人的にはなかなか実感しづらいという人も多いかもしれないが、株式市場は絶好調。日経平均株価は2017年11月7日にバブル崩壊後の最高値(2万2666円)を上回った。18年も引き続き、好景気が続き、株価は上がり続けるのだろうか。2人の専門家に話を聞いた。

世界の景気も良好だ。(アフロ=写真)

マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆さんは年内に日経平均は3万円に達するとみている。

「その根拠は日本含め世界の景気が良好なためです。世界的に景気が良いので、日本企業の業績も過去最高益を更新するほどです」

ただ単に景気拡大の恩恵を受けているだけではない点も重要だと広木さんは指摘する。「この数年間、日本企業は事業のリストラやコスト構造の見直しなど、利益を稼げる体質に変わる自助努力をしてきましたが、それが奏功しています」

とはいえ、株価が過去最高値にならないのは、昔の株価が高すぎたから。「バブル時代に記録した異常な株価が正常な値に戻るのに、20年かかりました。しかし、その異常値の調整もいまは完了し、市場では利益に見合った株価がついています」と広木さんは言う。

「今後は企業の業績拡大を追いかけるように株価も上昇していくでしょう。18年度は17年度と比較して8%の増益を見込んでいます」(広木氏)

「日経平均株価指数の算出に使われる会社が出す18年度の利益(当期純利益)予想を平均すると、1株当たり1789円。この1株当たりの利益に対して、株がどのくらい買われるかという予想が、日経平均株価の予想になります。これまで過去5年間平均して、1株当たりの利益の15.5倍まで買われてきましたが、過去5年間よりも、もう少し買われ、16.8倍まで行きそうだと考えられます。以上のような業績予想をもとに適正な株価を算出すると、3万円が妥当です」(広木氏)

景気は完全に追い風。米国の利上げの影響も限定的か

一方、野村證券エクイティ・マーケット・ストラテジストの若生寿一さんは18年の株価を「2万2500円から2万5000円」と予想する。増益率を5~10%と見積もり、13~15倍まで株が買われるというイメージだ。

若生さんも、16年頃から世界的に景気回復が進んでいると指摘。これを背景に「17年11月末時点で、日本企業の業績は全般に当初の予想を上回っています」。

さらに物価や賃金を上げるため、先進国を中心に金利を下げる金融緩和が長期間行われている。いわば物価を上げる「アクセルを踏んでいる」状態だ。低金利であれば企業も設備投資がしやすく、業績も上げやすい。

これらの条件から「現在は適温相場といって、過熱でも、冷えこんでもない、ちょうどよい相場で、18年は株価も順調に上がりやすい環境にあるといえます」。

トランプ大統領の暴走も「企業業績に影響はない」

他方、米国では利上げが予想されるが、「それも現状では、景気を抑制するほどではなく、アクセルを緩める程度」と若生さん。利上げが予想以上のペースで進まない限りは影響はないとのこと。

また円高になると、輸出が伸びず、企業業績が悪くなるが、「1ドル111円程度であれば心配ありません。現在は円高に対して企業業績の耐久力が増しているので、100円を超えるような円高にならなければ減益にはならないと考えられます」。

テロなど有事の際に、一時的に株価が上下することもあるが、企業の業績が根本的に左右されるわけではない。米・トランプ大統領が日本企業の輸出に不利な政策を実施するというリスクも、議会との折衝があるので大統領の思い通りになるわけではなく、「企業業績に大きく影響することはないでしょう」(若生さん)。

もちろん企業の不祥事があった場合、連鎖的に株価が低迷する業界も出てくる可能性はあるが、一過性のものという見方が強い。18年は日経平均株価3万円もありえるのかもしれない。