NHK BS1朝5時~の「ワールドニュース」を見る
――株式投資に興味はありますが、経済に詳しくなくて。まず何から始めればいいですか?
まずは世界全体の動きを知ることです。世界経済が上向きかどうかを見て、拡大傾向にあれば成長率の高い国や地域に投資するというのが鉄則です。
経済が苦手という方でも必ずチェックしていただきたいのは、IMF(国際通貨基金)が出す「世界経済見通し」。たとえば2017年の世界の実質経済成長率(GDP)予測は3.5%。18年は3.6%、19年は3.7%と拡大しているので「世界経済は回復途上にある」と解釈します。となれば各国の企業業績も良くなり、株価が上がる。これが株式投資をするうえで大前提の動きになります。
――国内企業を見ているだけではダメなんですね。
そうです。全世界の株式の時価総額のうち、日本の企業が占めるのはたった7%。もっと大きな枠でとらえましょう。世界の景気が拡大しているとわかれば、次にどの国の成長率が一番良いのかを考える。先進国の数字をみると、トランプショックはありましたが、それでも米国経済の調子が良いことがわかります。
――特にインドがすごい! でも、新興国への投資って何となく不安……。
先進国の中でも一番成長率が高い米国、そして日本、さらに新興国ではインドがいいかも……、と投資先の分散を考えてください。投資する地域を組み合わせて選び、そこから業種、個別銘柄へと絞っていくのがよいでしょう。
――まずは世界の動向から勉強するということですね。
東京証券取引所が週1回出している「投資部門別売買状況」というものがありますが、実際東京のマーケットで株を売買している投資家の約7割が外国人なんです。ですから、株式投資には「外国人が日本をどう見ているのか」という視点を持つことが重要です。
――でも、外国人の投資家と話す機会はありません。
投資に活かすという観点でおすすめしたいのが、NHK BS1で朝5時から放送している「ワールドニュース」。世界各地の放送局のニュースを流す番組で、英BBCや独ZDF、米CNNなど先進国からはじまり、インドやロシアといった新興国まで、最新ニュースがそれぞれ5分程度ずつ、約1時間流れます。経済だけでなく政治や気象情報まで全部入っています。
――そこからなにがわかるんですか?
たとえば17年の春、オーストラリアをサイクロンが直撃し、炭田や鉱山が水浸しになったというニュースがありました。鉄鉱石の産地といえばオーストラリアですから、もしニュースを見ていたら「鉄鉱石価格が上がるんじゃないかな」と予測することができます。
2017年はシワを改善するクリームがヒットし株価も上昇
――それが「グローバルな視点」ですね! では、いよいよ投資を始めるときの個別銘柄の選び方のコツを教えてください。
身の回りにあるモノで、これはいいなと思う製品があれば、それを作っている会社の株を買うのが一番確実です。今は米国株も日本株と同じように売買できますから、たとえばiPhoneが好きならアップルの株を買えばいいのです。ちなみに、17年に発売されたiPhone8の部品や組み立ては、東アジアのグローバル企業が関わっています。好きな製品からグローバルな視点を持つこともできます。
――海外企業も選択肢に入れていいのですね!
ちなみに、アップルは世界の時価総額ランキングでナンバーワンです。2位以下にはマイクロソフト、アマゾン・ドット・コムなど、有名なハイテク株が並びます。人からどんなに良い会社だと言われても、聞いたことも、製品を使ったこともなければ不安ですから、このあたりを買うというのも1つの手です。
――個人的に好きな製品があっても、その会社の業績がいいとは限りませんよね?
基本的に多くの人がいいと感じる「売れ筋」を狙うのがよいでしょう。女性向けの視点でいくと、いま非常に伸びているのが高機能化粧品。17年ポーラ・オルビスの株価がものすごく上がったのですが、その理由が1月に発売したシワを改善するクリームがヒットしたから。このあたりの情報には女性のほうが敏感かもしれません。
――株は流行に敏感な女性向けの投資!?
あと1つ大切なのは、その会社の財務力。投資する前に、その会社の「自己資本比率」を調べてみてください。自己資本比率が高いというのは、借金が少ないという意味。借り入れが多いと、景気の波に影響されやすい金融機関の動向によって、会社の業績が左右されてしまうことも。
――3つのポイント、納得です! ではさっそく投資を……。
まずはシミュレーションから始めてみるのがいいですよ。インターネットに各銘柄の情報が出ていますから、買ったつもりの日と、その価格をメモしておく。そして、その後に株価がどう動くのか一定期間見てみてください。
――株式投資をきっかけに、グローバルな経済の視点が自然に身につきそう!
会社の財務力は「自己資本比率」を見れば一目瞭然
▼ここをCheck
個別銘柄を選ぶときにも必要なのがグローバルな視点。3つのポイントをチェックしよう!
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 参与 投資情報部長 シニア投資ストラテジスト
早稲田大学卒。生命保険会社での資産運用、ファンドマネジャー、年金資金のポートフォリオマネジャーなどを経験。1999年国際証券入社、2010年から現職。