「自然災害でエビ養殖が困難に」弁護士からの手紙
54歳女性 会社経営
はじまりは、親友の勧めでした。それまで証券会社を通じて株式投資はしていましたが、新規事業や未公開株などへの投資にはまったく興味がありませんでした。ある日、友人が持ってきたのは「海外でのエビ養殖事業」への投資話。彼女はすでに投資しており、配当もしっかり出ているというのです。
「そんなうまい話があるはずがない」と、最初はまったく信じず、むしろ疑ってかかっていたほど。しかし、何度も勧める彼女の押しの強さと、配当金が振り込まれた通帳の数字をこの目で確かめたことで、次第に「本当だ」と思うようになったのです。自分の中で欲が湧いたのかもしれません。
1口10万円。10口、100万円を投資。すると10日もたたないうちに約5%の配当金が振り込まれてきました。その後も10日ごとに振り込まれる配当金。すっかり信じてしまった私は、どんどん投資額を増やし、とうとう3000万円もの大金を投入したのです。「1年で倍に」は嘘じゃないと、有頂天になっていました。友人も数千万円を投資しており、「よかったでしょ?」「ありがとう」などと笑い合っていたものです。
その投資会社は儲かっているようで、一流ホテルでの有名人が登場する豪華な新年会なども開催され、「もっと儲けるぞ~」などと、出資者同士、大いに盛り上がったほど。が、それもつかの間、次第に配当金が滞るようになり、そして突然、「自然災害により、養殖が困難に」と弁護士から1枚の手紙が届いたのです。「大丈夫、大丈夫……。配当金がなくなっても、元本は戻ってくる……」と、自分に都合のいいように言い聞かせながらも、不安は募るばかり。代表が所在不明になったというニュースを見たときにはわが目を疑いました。また、養殖場そのものが小さな池のようなものだったと報道番組で知ったときには、私の中で何かがガラガラと音を立ててくずれ落ちました。
結局1年間で3000万円が泡と消え、私を勧誘した友人とも関係が途絶えました。彼女は相当な人数に出資を持ちかけていたようです。私も親戚に投資を促したばかりに、もう針のむしろ状態……。今でも法事にさえ参加できずにいます。「儲かる」。その言葉は魔力のように人の心を変えてしまいます。けれど「儲かる」話には、必ず落とし穴があるのだと肝に銘じています。
教訓!:「儲かる」話には耳を貸さない、近づかない
夫にバレぬよう老後資金の穴埋めするつもりが、穴は巨大化
46歳女性 個人事業主
「とにかく老後資金の穴埋めをしなければ……」。60歳までに絶対に取り返す。焦りにも似た感情に支配され、「儲かる」という商品に次々と投資してしまいました。発端は、知人に騙され1000万円もの大金を失ったこと。子どもの学資保険の満期金も含め、「すぐに返すから」というお決まりの言葉を信じて貸してしまったのが運のつき……。裁判に勝訴しても、お金のない相手からは一銭も戻ってはきません。夫にバレないように、早く穴埋めをしなければと思ったのが失敗でした。
当時人気だった海外FXファンドへの投資セミナーに参加しました。10年で約3.5倍になるという高配当につられたものの「騙されてはいけない」と、まずは10万円を投資。金利が毎日積み立てられたことに安心し、追加出資を勧められるがまま、300万円を上乗せしました。さらに別のFXファンドにも投資。大手証券会社から独立したばかりだという30代半ばのファンドマネージャーに託しました。
「絶対に損はさせません」「特別な方だけにご案内している商品です」。笑顔がステキな好青年の熱意、「特別な方」という言葉にくすぐられ、200万円を投資しました。失った分を早く取り返したい、そんな思いだけで、投資の中身については全く判断できない状況だったと反省しています。当然のことながら、その好青年のファンドマネージャーとやらとはすぐに連絡が取れなくなりました。さらに、最初のFXファンドもドロン。「騙された」と知ったときにはもう後の祭り。穴埋めするどころか、逆に穴を大きくしてしまい、全部で2000万円ほどを失ってしまいました。
詐欺師の手口は巧妙化しているそう。夫からは「FXファンドなんてズブの素人が手を出すものではない」と、こっぴどく叱られ、高い勉強代だったと猛省。また、知人でも振り込め詐欺のようなことをする人がいることも学びました。「大丈夫」という気持ちが、大金を失うきっかけになるのです。
教訓!:「大丈夫」は、大丈夫じゃない。疑う気持ちを持とう
1.たとえ親友でも断る勇気を持とう
2.うまい話は、すぐに契約せず第三者に相談
3.仕組みが理解できないものには手を出さない
※体験者への取材をもとに、フィクションを交えて構成