情報盛り込みすぎのグラフはスルーされる

エクセルなどを使えば誰でも簡単につくれるグラフ。だからこそ、エクセルでつくったグラフをそのまま資料に貼り付けているだけか、メッセージが伝わりやすくなるようにひと手間加えたのかがすぐにわかります。

グラフの工夫は、たとえるなら料理の盛りつけと同じこと。同じ料理でも、お皿を変えただけで味すら変わったように感じてしまう、それが人間という生き物。ですからグラフも、単に事実を伝えるためだけではなく、「見せる」ものというよりは「魅せる」ものという認識を持ちたいですね。

たとえば業績好調であることを、グラフで説明する場面をイメージしてください。あなたの手元には過去3年間の日別データがあります。その日別データをそのまま棒グラフにしてしまうととても情報量が多く、かつ細い棒グラフが並んだ状態になることは容易に想像がつくでしょう。

しかし、あなたが伝えたいのは「業績好調」の部分だけ。それならば、月別あるいは年別の棒グラフにすれば、あなたが伝えたいメッセージは一目瞭然です。このように不要な情報をカットしていく行為をノイズカットといいます。雑音を排除し、クリアな音にすることで曲の美しさや本質を感じ取れることに似ています。

「とりあえずカラフルにして見栄えよく」はNG

ノイズをカットしたら、ひと手間を加えましょう。たとえば先ほどの例であれば、「業績好調」であることがメッセージですから、矢印などを表示すればより伝わりやすくなります。

ちなみにエクセルの場合、矢印は図形を挿入しなくても、簡単に表示させることができます。グラフのどこかで右クリックし、「近似曲線の追加」を選択、「線形近似」を選択し、線・影・ぼかしなどを調整し、矢印の終点スタイルを設定して「OK」を選択すれば図のようなグラフが完成します。誰でも簡単にできるひと手間ですので、ぜひ実践してみてください。

このように資料に使うグラフにはメッセージを込めることが鉄則です。ただし、グラフの基本は1グラフに必ず1つだけメッセージを込めて「魅せる」ということを強烈に意識することが重要になります。ひと手間を加える目的はあくまで「1グラフ1メッセージ」にするため。「とりあえずカラフルにする」「見栄えをよくする」といったことが目的にならないよう気をつけてください。

あなたも学生時代に就職活動を経験したかもしれません。各社の説明会では会社概要が記載された資料を渡されたと思いますが、その資料の印象が会社の印象につながることはなかったでしょうか。

資料の印象は、そのままその資料を作った人物の印象になります。そして、資料の印象を決めるのは細かい文章などではありません。写真やグラフなどパッと見て印象が決まるものです。繰り返しになりますが、グラフは「見せる」ものではなく、「魅せる」ものです。あなたの印象を決める髪形や服装、メイクなどとまったく同じものであると考えましょう。

▼ビジネス数学の専門家・深沢真太郎先生のアドバイス
資料の印象は、あなたの印象になる。「魅せる」グラフであなたらしさを!
深沢真太郎
ビジネス数学の専門家。BMコンサルティング株式会社代表取締役、多摩大学非常勤講師。『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日本実業出版社)など著書多数。人生のテーマは「数字が苦手な人を0(ゼロ)にする」。