「電子書籍は便利だけれど、読んだ内容が記憶に残りにくい……」。そんな悩みをお持ちの方へ。ネットで日々発信する達人に、電書やオーディオブックの使いこなし方を聞きました。第1回はジャーナリストの津田大介さんの「電子書籍のすすめ」です。(全3回)

※本稿は、雑誌「プレジデントウーマン」(2018年1月号)の記事「電子書籍+オーディオブックで『頭に残す』コツ」を再編集したものです。

ネットより効率良く体系的な知識を学べる

電子書籍を読むのは、専用端末のKindle、iPad、スマホが中心。忙しくて本を買いに行く時間がないとき、その場でダウンロードできる電子書籍は重宝します。

愛用ソフト●Kindleアプリ for PC
「パソコン用のKindleアプリ(Amazon.co.jpサイトからダウンロードが必要)は、本の内容を検索するのに便利。キーワードを入れれば、電子書籍の蔵書で合致するページが一覧できます」

最大のメリットはテキストの検索ができること。というのも近年、インターネットの検索エンジンが信用できなくなってきているからですね。検索しても結果の上位にスパムのようなサイトが出てきてしまうし、自分用にカスタマイズされ気持ちの良い情報しか表示されない。そして、フェイクニュースという言葉があるように、そもそもネットの信頼性は高くない。現在、無料で利用できるネットの情報が使いにくくなっている事実を認識することが大事です。

そのうえで電子書籍を利用するのは、本を買うというより“自分専用の検索エンジン”を買うと考えたほうがいい。たとえば私も『朝日キーワード』(朝日新聞出版)など、辞書のように何度も引くだろうなと思うものは、電子書籍で買っています。

本や電子書籍は、パッケージとしての情報の詰まり方がいい。たとえば何かを調べるとき、ネット検索では3時間かけても似たような情報ばかりで、得られる知識は少ないですが、それについての新書を読めば、同じ3時間で体系的な知識を学べます。ネットに比べて、情報の入手効率が圧倒的に良いと思います。

それでもネット検索はするでしょう。しかし、検索ワードをいくつか入れ情報を絞り込むとき、基本的な知識がないと、2つ目、3つ目のキーワードが思いつかないわけです。その知識を手に入れるため、まず本で学ぶことをおすすめしますね。


▼頭に残すコツ
紙の本に近いデバイスを使う

「紙の本は反射光であるのに対し、スマートフォンの液晶は透過光。脳科学の研究で、透過光を見るとき人間の脳はリラックスしてしまうというデータがあります(トッパン・フォームズとニューロ・テクニカが実施したダイレクトメール(DM)に関する脳科学実験による)。記憶に残したいならKindle Voyageのような反射光に近い端末を選ぶといいですね」

ジャーナリスト 津田大介
WEBマガジン「ポリタス」編集長。メディア・アクティビストであり、早稲田大学文学学術院で教壇に立つ。著書多数。共著に『決定版 原発の教科書』(新曜社)、『「ポスト真実」の時代』(祥伝社)などがある。