日々の生活のなかで、理不尽だと感じることはありませんか。法律の知識があれば、解決できるケースもあります。雑誌「プレジデント ウーマン」(2017年9月号)の特集「1時間でわかる法律相談」では、9つの身近なトラブルについて4人の専門家に相談しました。今回は「病気告知」について――。(全9回)
▼婦人科系の病気で治療中なのを、会社に伝えるべき?
薬の副作用で免疫力が低下し、疲れやすく、ほてりやだるさも起こります。乳がんになった先輩が会社に伝えたところ、出世は望めない部署に異動になりました。男性同様に働いて役職にも就きたいけれど、突然体調が悪くなることもあって。会社には病気の話をしておいたほうがいいですか?

▼答えてくれたのは……一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会の方々
協会代表理事・FP 鬼塚眞子さん/弁護士 丸尾はるなさん/弁護士 山岸潤子さん/税理士 林 良子さん


本人のプライバシー保護が1番重要

【山岸】病気にかかっていることはプライバシーにあたりますので、会社への報告は本人の意思が尊重されます。ただ労働者の心身に配慮する義務が会社にもあるので、本来は相談できたほうが、辛いときに配慮してもらえるのでいいでしょう。

【丸尾】産業医がいる会社なら、産業医と相談することもできますね。本人の希望しない部署異動など、会社に相談したことが本人の不利益になること自体問題だと思います。

治療期間だけは融通のきく部署でがんばろうと、ご本人が納得できればいいんですけどね。

【山岸】なにかあったときに周囲に迷惑をかけると、会社でのご本人の信頼も失いますから、会社に相談しておいたほうが、会社も義務を尽くせるのでベターだと思います。

「病気告知」専門家4人の本音トーク

【鬼塚】病気で休んで有休を使い切っても、会社員の場合は健康保険で標準報酬日額の3分の2を受け取ることができる休業補償給付制度があるので、収入面は多少安心です。

【林】そうですよね。この休業補償給付には税金がかかりませんし。

ほかに会社員の方が意外とされていないのが、医療費控除です。年間でかかった医療費から保険金を引いた金額が、10万円以上だと医療費控除が受けられます。もしくは収入が少なかった場合、所得の5%を超えると医療費控除が受けられます。病院をはじめ、かかった費用はすべて領収書をとっておきましょう。

【鬼塚】薬局で買った薬代とか、病院までの交通費も医療費控除に入れられますよね。

【林】病気が見つかって治療したときの健康診断代やレーシックも医療費控除の対象になります。歯は容貌を美化するためのものはできませんが、矯正は対象です。

医療費控除に金額が届かなくても、定期健康診断などを受けている人が、薬局でセルフメディケーション税制対象医薬品を年間1万2000円以上購入すれば、確定申告の際、所得控除が受けられます。

一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会
弁護士、税理士、社会保険労務士、FP、金融関係者、医師、不動産関係者、介護福祉関係者、不用品回収業者、印刷業者など、それぞれに活躍する実務経験豊富な各分野の専門家で構成。契約企業に出向き、介護・事業承継・相続問題のほか、夫婦・家族の問題などに悩む社員の個別相談にワンストップ・ワンテーブルで対応。セミナー研修などを行っている。
鬼塚眞子
一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表理事・FP。大手雑誌社勤務後、出産のために退職・専業主婦に。その後大手生命保険会社の営業職として社会復帰。業界紙記者を経て、保険ジャーナリスト、FPとして独立。認知症の両親の遠距離介護を機に、同協会を設立した。
丸尾はるな
弁護士。弁護士登録7年目で独立し、「丸尾総合法律事務所」開設。弁護士歴約10年でありながら、個人の一般民事事件、家事事件、企業の法律相談、訴訟案件など、幅広い相談に対応し、時代にあわせたサポートを行う。
山岸潤子
弁護士。仕事と子育てを両立する、弁護士歴約20年のベテラン。非常勤裁判官経験もあり、現在は東京家庭裁判所調停委員も務める。子どもの権利委員会、少年法委員会、男女共同参画推進プロジェクトチームほか、多くの弁護士会の活動にも携わる。
林 良子
税理士。一般企業の経理などをしながら税理士試験に合格。現在は内山・渡邉税理士法人の社員税理士であり、租税教育の講師も行う。得意分野は資産税(相続税・譲渡所得税)を中心とした税務コンサルティング、法人税、所得税の節税対策。